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西武池袋線石神井公園駅高架化工事(2012年11月25日取材)
公開日:2012年12月12日23:17

西武池袋線石神井公園駅では現在高架化工事が行われています。6月の調査から半年が経過し、練馬高野台~石神井公園間の複々線化が完了するなど変化がありましたので、先月末に再度取材を行いました。今回も練馬高野台駅付近・石神井公園駅付近・大泉学園駅付近の3か所すべてについてお伝えします。
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■西武池袋線高架・複々線化の概要


左:2001年に高架化・複々線化が完了した富士見台駅付近。
右:高架化着工前の石神井公園駅。地上時代は2面3線のホームと留置線数本が併設される構内配線だった。
2枚とも2007年5月4日撮影 ※クリックで拡大
西武池袋線桜台~石神井公園間の高架化・複々線化工事は地下鉄8号線(東京メトロ有楽町線)の相互乗り入れ計画を原型として開始されたもので、桜台~練馬高野台間5.2kmの工事は2003(平成15)年までに全て完了しています。残る練馬高野台~大泉学園間2.4kmは交差する東京外かく環状道路(東京外環自動車道)の計画との調整に手間取り着工が遅れましたが、同道路が地下式で建設される方針が固まったため、2005(平成17)年に都市計画変更の手続きを行い、2007(平成19)年から本格的な工事が開始されました。総工費は約474億円(連続立体交差事業:約360億円、複々線化事業(全額を西武鉄道が拠出):約114億円)で国と東京都・練馬区が約285億円、西武鉄道が約189億円をそれぞれ負担します。
<西武池袋線連続立体交差事業の歴史>
1971年1月 都市計画決定(桜台~石神井公園間高架・複々線化)
1994年12月 富士見台~練馬高野台間高架・複々線化完成(踏切3か所廃止)
2000年3月 桜台~練馬間高架化完成(踏切7か所廃止)
2003年3月 練馬~富士見台間高架・複々線化完成(踏切9か所廃止)
2005年6月 都市計画決定(石神井公園~大泉学園間高架化)
2007年5月 都市計画事業認可取得
2010年2月 練馬高野台~石神井公園間上り線高架化
2011年4月 練馬高野台~石神井公園間下り線高架化
2012年11月 練馬高野台~石神井公園間複々線化完了

着工前の桜台~大泉学園間の配線図 ※クリックで拡大
練馬高野台~大泉学園間の高架化工事は東側1.2kmと西側1.2kmの2期に分けて工事が行われています。東側の第1期区間は2005年の都市計画変更決定の時点で複々線化に必要な拡幅用地が既に確保されており、2007年からの工事ではまずこの拡幅用地に2線分の高架橋を建設して上り線を移設し、空いた用地に1線分ずつ下り線の高架橋を建設するという手法がとられました。上り線の高架線切替は2010(平成22)年2月7日、下り線の高架線切替は2011(平成23)年4月17日に行われ、渋滞が深刻だった富士街道(都道8号千代田練馬田無線)をはじめとする6箇所の踏切が廃止され交通渋滞の低減と都市分断の解消が実現しました。
■第1期区間完成・第2期区間の工事が本格化

現在の石神井公園駅付近の配線図 ※クリックで拡大
第1期区間である練馬高野台~石神井公園間はまず第1段階として今年6月23日(土)に石神井公園駅下り急行線(1番線)の使用が開始され、練馬高野台駅の引上線が使用が停止されました。続いて6月29日(金)には第2段階として練馬高野台~石神井公園間の上り緩行線の使用が開始され、合わせてダイヤ改正が実施されました。以降は練馬高野台~石神井公園間の下り急行線の使用開始に向けた準備が進められ、11月18日(日)より使用を開始しました。これにより第1期の複々線化が完成しました。
第2期区間である石神井公園~大泉学園間は8月26日(日)より上り線、10月28日(日)より下り線がそれぞれ仮線切替が完了しました。
以下、各地点の様子を見てまいります。
●練馬高野台駅

複々線化が完了した練馬高野台駅の石神井公園方。引上げ線の痕跡は完全に消え去った。(同じ場所の2012年6月23日の様子)
※クリックで拡大
練馬高野台~石神井公園間の複々線化完了に伴い、練馬高野台駅の石神井公園方は従来あった引上げ線が全て撤去され、緩行線・急行線を接続するポイントが無くなりました。この部分は半径800m前後のカーブになっていますが、今回はまだ切り替えから時間が経っておらずカントの付け方が不十分であるため、75km/hの速度制限が残されています。また、ポイントがあった場所のレールはロングレール化されていません。


左:絶縁継目は全てインピーダンスボンドを経由せず両側のレールが直接接続されている。
右:使われずに放置されているインピーダンスボンド。
※クリックで拡大
ポイントの廃止により、信号関係の設備も大幅に変更されています。
練馬高野台駅ホームの石神井公園方の端付近のレールにはこれまでポイントの通過完了を検知するための絶縁継目やインピーダンスボンドが多数設置されていました。ポイント廃止でこの設備は不要となったため、インピーダンスボンドを経由しない形でケーブルが新設され、絶縁継目の機能が廃止されました。また、下り線側は緩行線の信号機が以前ポイントがあった付近に移設されました。また、急行線の信号機や移設後の緩行線の信号機直下のレールには絶縁継目やインピーダンスボンドが見当たらないことから、無絶縁軌道回路に変更されたものと思われます。
●石神井公園駅

全方向の仕様が開始された石神井公園駅池袋方のポイント。
石神井公園駅の池袋方は6月の1番線使用開始時に軌道や架線の敷設が全て完了しており、今回は線路の使用が開始されただけとなっています。下り急行線の使用開始により池袋方にあるシーサスクロッシングは全方向が使われるようになっています。



上段:引上げ線が2本とも使用開始となった石神井公園駅の大泉学園方。
下段左:東京メトロ7000系は旧下り線を流用した引上げ線(5番線)に停車中。
下段右:上り緩行線(3番線)の入換信号機。未完成の引上げ線(7番線)の表示灯は黒いビニールで隠蔽されている。
※クリックで拡大
石神井公園駅の大泉学園方は旧下り線を引上げ線に転用する工事が完了し、使用が開始されました。6月のダイヤ改正から設定されている石神井公園折り返し列車はこの引上げ線を使用して折り返しを行います。引上げ線の番号はホーム(1~4番線)からの続きで下り線側から順に5~7番線となっており、入換信号機には進入番線を表示するランプが併設されています。引上げ線は5・6番線が下り2番線・上り3番線双方から進出入可能、7番線は上り3番線のみ進出入可能となっています。7番線は6月の記事でもお伝えした通り未完成となっており、入換信号機のランプは黒いビニールで隠蔽されています。7番線は後述する大泉学園までの高架化完成後に使用を開始するものと思われます。



上段:北口から見た石神井公園駅の駅舎。今後は高架下に駅前広場が拡張される予定。
下段左:仮設駅舎の跡地では遊歩道の建設が開始された。
下段右:仮設壁になっている高架下の大泉学園方は西口改札が新設される予定。
※クリックで拡大
高架橋本体の工事が完了したことから、高架下では仮設駅舎や線路跡地の利用に向けた準備が開始されています。10月22日に西武鉄道から発表された計画によると、高架下に入居する施設は池袋方が保育所や駐輪場・駐車場など沿線住民の利便性向上や生活支援のための施設、大泉学園方はスーパーなどの商業施設となっています。これに合わせて大泉学園方には南北自由通路と西口改札が新設される予定です。また、駅中央付近は建物は建設せず、狭隘な南口駅前広場の拡張スペースに充てられます。
現在は高架下の空間に残っていた建設資材の撤去や整地と北側の仮設駅舎跡地への遊歩道の新設が行われています。
●石神井公園~大泉学園間(第2期区間)


左:石神井公園~大泉学園間の仮設高架橋取り付け部分付近。第2期区間に向けて高架橋の延長が開始された。
右:大泉学園駅ホームから池袋方面を見る。上下線とも仮線切替が完了した。
※クリックで拡大
第2期区間である石神井公園~大泉学園間は場所により進捗状況が異なっています。石神井公園駅側の半分は現在線の南側に用地が確保されており、現在はこの部分に高架橋本体が建設中となっています。石神井公園~大泉学園の駅間の中央付近にあるカーブから先は北側に用地が確保されており、ここに仮線を建設し、現在線の跡地に高架橋を建設する手法が採られています。仮線の位置を途中で入れ替えているのは将来カーブ半径を大きくし、通過速度を向上するためと思われます。(航空写真で見ると、カーブ付近の仮線用地はかなり大きくとられていることが分かる。→Googleマップの航空写真)
仮線切替は8月26日(日)に上り線、10月28日(日)に下り線の順で行われました。下り仮線は旧上り線の線路のほとんどを流用しています。また、大泉学園駅に進入する部分は急なS字カーブで既設の線路に接続しており、70km/hの速度制限があるほか、仮線区間全体でも軌道構造が不安定なため75km/hの速度制限があります。
以上のとおり、西武池袋線石神井公園駅付近の高架化は第1期区間がほぼ完成し、第2期区間の工事にウェイトが移りました。最終的な完成は2年後の2014(平成26)年度の予定となっています。練馬区では9月5日に東京外環自動車道(大泉JCT以南)が着工しており、今後も交通網の大きな変化が続きます。
▼参考
池袋線連続立体交差事業・複々線化事業のご案内:西武鉄道Webサイト
石神井公園駅周辺開発計画 | 開発 | 西武プロパティーズについて | 株式会社西武プロパティーズ
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