千葉駅改良工事(2012年11・12月取材)

解体がほぼ完了した駅ビルペリエ1。7月の記事の冒頭写真とほぼ同位置から撮影。

JR千葉駅では現在駅舎の全面改築を含む大規模改良工事が進められています。また、駅の周辺では千葉市が主体となり再開発事業も行われています。今年7月の調査から半年あまりが経過し、旧駅舎の解体の進行や駅前の再開発に伴う道路開通など進展がありましたので11月末から順次再調査を進めてまいりました。今回も駅構内の工事と再開発の双方について現状を見てまいりたいと思います。

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■千葉駅改良工事の概要



 JR千葉駅は戦後復興に伴う区画整理事業の一環で1963(昭和38)年に現在の東千葉駅の位置から移転してきたものです。移転に際しては二股に分かれている内房・外房線と総武・成田線の間に駅ビル「ペリエ」が建設され、以後ホーム増設や千葉都市モノレールの乗り入れなど千葉県の交通要衝として発展を続けてきました。しかし、建設から約半世紀が経過した駅ビルは老朽化が進み、耐震補強の必要に迫られています。

千葉駅の改良工事完成後の予想図 解体前の駅ビル「ペリエ1」
左:千葉駅の改良工事完成後の予想図。2010年5月22日撮影
右:解体前の駅ビル「ペリエ1」。2011年9月13日撮影

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 これを受け、JR東日本では2008(平成20)年から千葉駅の改良方法について具体的な検討を開始しました。千葉駅は東西南北の四方向全てが鉄道に囲まれた立地条件となっており、当初は工事に必要な資材をどこから搬入するかや駅ビル1階にある改札口を工事期間中どこに迂回させるかなどを巡って設計が非常に難航しました。こうした経緯もあり、検討開始から1年以上が経過した2009(平成21)年12月にようやく改良工事の具体的な方針が決定し、公式に発表がなされました。
 翌2010(平成22)年からは改良工事に向けた準備が開始され、2011(平成23)年1月には駅ビル「ペリエ1」が取り壊しのため閉店しました。そして、9月にはJR東日本から改良工事に関して、さらに詳しい発表がありました。それによると、千葉駅改良工事は以下のような内容となっています。

1、駅ビル「ペリエ」の全面改築
建設から約半世紀が経過し、老朽化が進んだ駅ビル「ペリエ1」を全面改築する。新しいビルは現在より1フロア多い地上7階、地下1階の構造となる。

2、東口改札口を橋上化
千葉駅は傾斜地に位置しており西口改札が3階、東口改札が1階にわかれている。東口改札口と各ホームは高架下の通路で接続しているが、建設が古いため通路内に柱が林立し、見通しが悪くなっている。このため、線路上空の3階(橋上駅舎)を新設して東口の改札口をそこに移動させ、東西両改札口を同一フロアで連絡することにより利便性を向上する。なお、完成後は利用者の流れが橋上駅舎側に大幅に移行することが予想されるため、橋上駅舎から駅の南北に直接抜けられる自由通路も完備される。

3、千葉都市モノレール駅舎との接続
東口駅前の4階相当の高さにある千葉都市モノレールの改札口と橋上化される駅舎は駅前広場上空にエスカレータ付きの空中回廊を新設し、ダイレクトに接続する。

4、「エキナカ」展開・環境対策・地域貢献など
橋上駅舎内には各種商業施設(「エキナカ」)を整備する。これらの店舗では地元の特産品を積極的に取り扱い、地産地消(千産千消)に貢献する。また、改築される駅ビル「ペリエ」には文化交流に利用できるホールを新設し、利用者へのサービス向上と地域活性化を図る。また、橋上駅舎はLED照明の導入や屋上緑化による環境負荷低減を図るほか、保育園など子育て支援施設を整備し地域社会へ貢献する。

千葉駅新旧施設概要(再掲)
新駅ビル旧駅ビル
延床面積約70,000m2約27,000m2
階数地上7階、地下1階地上6階、地下1階
用途と面積駅施設・コンコース:約16,000m2
エキナカ:約8,000m2
駅ビル:約46,000m2
駅施設:約10,000m2
構内店舗:約2,000m2
駅ビル:約15,000m2


なお、改良工事にあたっては駅を通常通り営業しながらその上空に橋上駅舎を建設する必要があるため、高架下の狭い空間で昼夜を問わず基礎杭の打ち込みを可能にする新しい建設機械の開発も行われています。
 この発表の翌月の2011年10月31日には熊谷俊人・千葉市長出席の下、起工式が執り行われ、いよいよ千葉駅の改良工事が本格的にスタートしました。工事は3段階に分けて完成させていくことになっており、第1段階として2016(平成28)年夏に新駅舎の一部が開業、第2段階として2017(平成29)年春に駅舎の全面開業と駅ビルの一部開業、第3段階として2018(平成30)年春に駅ビルの全面開業となり、全ての事業が完成する予定です。

■ペリエ1の解体工事が進行・線路上空の人工地盤の建設開始
解体がほぼ完了した駅ビル「ペリエ1」。以前は建物に隠れていたモノレールの軌道が見えるようになった。
西口跨線橋から東口方向を見る。 東口駅前広場から駅舎を見る。上層階が取り壊され、外光が差し込むようになった。
上:解体がほぼ完了した駅ビル「ペリエ1」。以前は建物に隠れていたモノレールの軌道が見えるようになった。2012年11月25日撮影
下左:西口跨線橋から東口方向を見る。2012年11月25日撮影(同じ場所の2010年5月22日/2012年6月10日の様子)
下右:東口駅前広場から駅舎を見る。上層階が取り壊され、外光が差し込むようになった。2012年12月8日撮影(同じ場所の2011年9月13日の様子

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 6~7番線の間に建つ駅ビル「ペリエ1」は2011(平成23)年1月の閉鎖後、約1年間をかけて内装類の撤去が行われ、今年初めからは建物本体の解体工事が本格化しました。ペリエ1の1階部分は改札内通路となっていたため、解体に先立つ2010(平成22)年11月に7・8番線の高架下に通路が仮移転しています。また、解体工事の進捗に伴い、今年7月には同じく1階部分にある東口改札口も駅前広場側に移転し、通路の形状が大幅に変化しました。
 11・12月時点ではペリエ1の建物は東口改札口がある1~2階部分の一部を残してほぼ解体が完了しています。駅ホーム上からはこれまで建物に隠れていて見えなかった千葉モノレールの軌道が見えるようになっています。解体後の瓦礫が置かれている1階部分には、かつて改札内通路として使用されていた頃の壁面がわずかながら残存しているのが確認できます。




1~6番線の軌道は一部か工事桁による仮設構造となっている。 工事桁周囲の軌道も沈下の計測機器が取り付けられている。
左:1~6番線の軌道は一部か工事桁による仮設構造となっている。
右:工事桁周囲の軌道も沈下の計測機器が取り付けられている。2枚とも2012年11月25日撮影

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 解体された「ペリエ1」の瓦礫は1~6番線の高架下を通って駅の南側にある作業基地に搬出されています。1~6番線の高架橋はこの作業用の通路部分のみ元の高架橋を取り壊し、工事桁を渡した仮設構造に変更されています。また、仮設構造の周囲の軌道にも計測機器が装着されており、万一変形が生じた場合に即座にその状況を把握できるシステムとなっています。なお、ペリエ1に近接する6・7番線の軌道上には2010年頃より自動車や重機が乗り入れられるよう木材が敷き詰められていましたが、解体工事の完了に伴い一部を残して撤去されています。

0・1番線上部で建設が始まった新駅舎の人工地盤。 1・2番線のホーム上には人工地盤の柱が建ち始めた。
左:0・1番線上部で建設が始まった新駅舎の人工地盤。
右:1・2番線のホーム上には人工地盤の柱が建ち始めた。2枚とも2012年11月25日撮影

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 一方、1・2番線ホームの上空では駅南側の作業基地から通じる工事用の人工地盤の建設が開始されました。この人工地盤は現状では工事作業用の台として使われていますが、鉄製の梁には随所に延長を可能にするための突起が見られることから、そのまま新しい橋上駅舎の躯体として使われる模様です。
 また、1・2番線以外のホームでも人工地盤の柱や基礎を打ち込む工事が開始されており、ホームの各所に仮囲いが新設されています。これらの工事に伴い、高架下の通路へ降りる階段・エスカレータの一部が12月1日(土)より閉鎖されており、利用者の動線確保のためエスカレータの運転方向が変更されています。

■建設が進む「WESTRIO」と千葉港黒砂台線開通

 JR千葉駅西口では駅本体の改良工事とは別に、千葉市が主導となり再開発事業(事業名:千葉都市計画事業千葉駅西口地区第二種市街地再開発事業、施行面積1.9ha)が進められています。この再開発事業は1989(平成元)年より開始されていましたが、バブル崩壊後の景気長期低迷や用地買収の難航によりこれまでほとんど進んでいませんでした。2008(平成20)年には民間事業者がビルを建設し、テナントが入らなかったスペースを市が買い取る「特定建築者制度」を活用してようやく事業主体が決定しましたが、直後にリーマンショックが到したため、翌年には事業主体となる企業が辞退を表明し、再度計画が宙に浮くこととなりました。その後千葉市では要件を緩和して再度事業主体となる企業を募集し、2010(平成22)年に大成建設(株)・ロイヤルリース(株)の共同企業体がビル3棟を建設することが決定しました。ビルの施設概要は以下のとおりとなっています。

再開発ビルの施設概要(再掲)
建物名A1棟A3棟A2棟
階数RC造 地上11階・地下1階SRC造一部S造 地上11階RC造 地上13階・地下1階
延床面積約10,560m2約6,030m2約8,990m2
用途店舗(1~2F)
事務所(3~11F)
駐車場(63台)
店舗・駅コンコース(1~5F)
事務所(6~11F)
店舗(1~3F)
ホテル(4~13F、客室数224)
備考事務所部分は富国生命が自社ビルとして使用。事務所部分は千葉市と地権者が取得。ホテル部分はロイヤルリースが取得し、ホテルサンルートに賃貸。


この再開発ビルは昨年10月5日に起工式が行われ、今年3月にはビルの名称が「WESTRIO(ウエストリオ)」に決定しました。WESTRIOの名称はビルが建っている場所(西口=WESTと3棟(3つ=TRIOをあわせた実に単純明快なものです。

建設中の「WESTRIO」
JR千葉駅西口改札口への通路は建設中のビルの中を貫通する 北口側からも建設中のビルを用意に確認できるサイズに「成長」した。
上:建設中の「WESTRIO」(同じ場所の2011年11月3日の様子
下左:JR千葉駅西口改札口への通路は建設中のビルの中を貫通する
下右:北口側からも建設中のビルを用意に確認できるサイズに「成長」した。3枚とも2012年12月8日撮影

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 「WESTRIO」の工事は今年に入り建物本体の建設に入っており、11・12月時点では3棟とも10階付近まで構築が進んでいます。建物のサイズはかなり大きく、駅ホーム上や北口ロータリーからでも壁のように立ちはだかる様子が容易に確認できます。

開通した千葉港黒砂台線
JR千葉駅側のスロープとエレベータ 西口歩道橋から完成した千葉港黒砂台線を見る
上:開通した千葉港黒砂台線(同じ場所の2011年11月3日の様子
下左:JR千葉駅側のスロープとエレベータ
下右:西口歩道橋から完成した千葉港黒砂台線を見る。(同じ場所の2011年11月3日の様子
3枚とも2012年12月8日撮影
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 千葉駅西口再開発では再開発区域中央を貫通し、京成千葉線とアンダーパスして千葉みなと駅方面へ抜ける都市計画道路「3・6・88号千葉港黒砂台線」の建設も同時に行われています。この道路も再開発事業と同じ1989年より建設が開始されていましたが、予定地上の地権者の猛烈な反対により10年ほど前に京成千葉線のアンダーパス部分が完成して以降ほとんど進展が見られませんでした。このため千葉市では最後の手段として予定地の強制収用(土地収用法の適用)に踏み切り、計画から23年が経った2011(平成23)年よりようやく工事が再開されました。
 千葉港黒砂台線は2車線の車道の両側に歩道が付く構造で、京成千葉線のアンダーパス部分にはバリアフリー対策としてエレベータも併設されています。また、アンダーパスの掘割のよう壁は工期・コスト削減のため工事に先立ち打ち込んだ土留壁をそのまま本体の一部として流用しています。
 この千葉港黒砂台線は去る10月10日(水)より車道・歩道とも一般供用が開始されました。これによりこの道路は名実ともに千葉港地区と黒砂台地区(稲毛区)を結ぶようになり、臨海部と内陸部を結ぶルートとして機能しています。

工事中の建物に施されたクリスマスイルミネーション
工事中の建物に施されたクリスマスイルミネーション。2012年12月8日撮影

 この12月は西口で工事中の建物壁面を利用してクリスマスイルミネーションが実施されました。千葉駅改良工事は非常に規模が大きく、完成にはまだ5年以上かかる見込みです。地域住民の理解を得る観点からも、このようなPR活動は重要であると思われます。

▼参考
千葉駅 駅舎・駅ビルが生まれ変わります!(PDF) JR東日本プレスリリース(2009年12月8日発表)
千葉駅 駅舎・駅ビル建替え 本体工事の着手について(PDF) JR東日本プレスリリース(2011年9月6日発表)
千葉市:西口再開発事務所 トップページ

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千葉駅改良工事(2012年7月取材)(2012年7月31日作成)
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