東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2012年12月29日取材)

ホーム間通路が閉鎖され、折り返し線の新設が進む。

東京メトロ有楽町線豊洲駅は周辺の再開発の進展により混雑が激しくなっています。このため、2009年より階段増設や折り返し線の新設を含む大規模改良工事が進められています。12月29日(土)にこの工事について再度取材してまいりましたので現在の状況をお伝えいたします。

▼関連記事
東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2012年8月11日取材)(2012年8月17日作成)

■豊洲駅の激しい混雑と改良工事の概要
豊洲駅の1日あたりの乗降客数の推移。赤い点は2007年以降の実績値。
豊洲駅の1日あたりの乗降客数の推移。赤い点は2007年以降の実績値。
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 豊洲駅は1988(昭和63)年6月8日の有楽町線新富町~新木場間開業に伴い新設されました。豊洲駅は3層構造の地下駅で、地下1階が改札口、地下2階が改札内コンコース、地下3階がホームとなっています。地下3階のホームは将来の地下鉄8号線(豊洲~住吉)の分岐に備えて島式ホーム2面で建設されており、現在は外側2線のみを使用しています。開業当初の豊洲駅周辺はIHI(石川島播磨重工業)東京造船所の工場が広がっており、駅の利用者はこの工場の通勤者でほとんどが占められていたことから乗降客数は1日当たり5万人前後となっており、改札口は新木場寄りの1か所のみというコンパクトな設備となっていました。
 しかし、有楽町線開業から間もなくしてIHIの工場は閉鎖され、跡地の再開発が開始されました。2000年代に入ると工場跡地には高層のオフィスビルやマンションが次々と完成し、2006(平成18)年には新交通ゆりかもめが延伸開業したことも相まって1日の乗降客数は10万人以上に激増しました。この結果、1か所しかない改札口は昼夜を問わず激しく混雑するようになり、降車客がホームまで溢れるなど事故の危険性が指摘されています。駅周辺の再開発が現在も続いており、2006年の時点では10年後の2016(平成28)年には1日の乗降客数が19万3千人に達すると予測されました。実際に豊洲駅の1日乗降客数は2005年以降一貫して増加を続けており、昨年度は154,214人(前年比11%増)となっています。これは2006年当時の予測よりも早いペースでの増加で、最終的には20万人を超える可能性も高まっています。
 この現状を受け、東京メトロでは混雑緩和のため豊洲駅の大規模な改良工事を計画しました。豊洲駅の改良工事は単純に階段を増設するだけではなく、改札口や地上出入口の増設、それに伴うトンネル躯体の増築など非常に多岐にわたっています。具体的には以下のような内容になっています。

駅の断面図と改良箇所
駅の断面図と改良箇所
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●改札口の増設
現在ある新木場寄りの改札口に加えて駅中央と池袋寄りにも改札口を増設する。

●トンネル増築
池袋寄りの地下1階にトンネルを増築する。この増築部分は新設される地上出入口の通路と改札口の増設スペースとなる。

●階段・エスカレータ・エレベータの増設・移設
改良工事で新設する駅中央と池袋寄りの改札口と地下3階のホームはエスカレータを新設し、直接接続する。また、既存の階段・エスカレータ・エレベータも移設を行い、混雑を平準化する。

●地上出入口の新設・改良
既存の出入口の一部は拡幅したうえでエスカレータを新設する。また、周辺の再開発事業者より地上出入口増設の要望があったことから、池袋寄りに増築されるトンネルを利用して地上出入口を新設する。

階段・エスカレータ・エレベータの新設・移設にあたっては地下2階を経由する案と改札口・ホームを直結させる案の2つが検討され、コンピュータを用いたシミュレーションの結果、直結させる方が到達時間短縮の効果が高いと判断されたことからこちらの案が採用されました。これによりホームから改札口までの所要時間は現状の半分以下になると予測されています。
 また、改良工事着工前の豊洲駅は地下1階と地下2階を結ぶルートが新木場寄りの階段1か所しかなく、列車の到着・発車時はこの部分で10m/s近い強風が発生していました。改良後は地下1階と地下3階を結ぶルートが3か所に増えるため、風速が5m/s以下に低減するという副次的な効果も得られると予想されています。
 工事は当初昨年春の完成を予定していましたが、東日本大震災などの影響で工事が遅れており、完成時期が1年半遅れの今年9月に延期されています。

■上下ホームが分離・まもなく折り返し線完成

●地上
豊洲駅地上のバスターミナルと晴海通り。晴海通りは地下の掘削のため作業帯が設けられている。 移設・拡張が完了した2番出入口。
左:豊洲駅地上のバスターミナルと晴海通り。晴海通りは地下の掘削のため作業帯が設けられている。
右:移設・拡張が完了した2番出入口。

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 地上の晴海通りは引き続き中央分離帯や歩道の一部に作業帯が設けられていますが、地下への搬入口などは姿を消しており、大規模な工事は終了した模様です。晴海通りとバスターミナルの間にある2番出入口は、昨年4月にわずかに位置をずらしたうえで上下エスカレータ付きに全面改築されており、旧2番出入口の構造物は取り壊しがほぼ完了しています。

●地下1階(改札口)
地下1階新木場寄りの改札口。床面など内装の改修が進んでいる。
改札口左側に移設された券売機 閉鎖された改札口正面の券売機
上:地下1階新木場寄りの改札口。床面など内装の改修が進んでいる。
下左:改札口左側に移設された券売機
下右:閉鎖された改札口正面の券売機

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 地下1階新木場方にある既存の改札口は自動改札機の移設・増設などが一通り完了したため、床面のタイルの張り替えや天井の機器類の移設など内装の仕上げ作業に入っています。また、改札口正面に仮移転していた自動券売機は昨年12月下旬に(改札外側から見て)左側の有人改札口裏手に移設されました。移設後の券売機周辺は内装が完成済みとなっており、既存の部分と明るさの違いが際立っています。今後は改札口周辺を含め、このような明るい内装に順次交換されていくものと思われます。

▼参考
豊洲駅 12月下旬に切符売り場リニューアルオープン - 豊洲空間?toyosukukan.com

移設が完了した改札口~ホームのエレベータ。天井は照明や空調のルーバーが未完成。



移設が完了した改札口~ホームのエレベータ。天井は照明や空調のルーバーが未完成。
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新木場側の改札口を入ってすぐのところでは、昨年4月取材時に完成していた2番線(池袋方面行き)ホームへ通じるエレベータに加え、1番線(新木場方面行き)ホームに通じるエレベータも完成し、両ホームともエレベータの移設が完了しました。これにより、両ホームへのバリアフリー移動経路が確保されたため、地下3階のホーム階では両ホームを接続していた仮設の床面が撤去されています。(詳細は後述)エレベータの周囲では床のタイル張り替えや天井パネルの取り付けなど内装の仕上げがおおむね完了しており、残る作業は照明器具の固定や空調のルーバーの取り付け程度となっています。

使用が開始されたホーム中央の改札口。1番線側のエスカレータが未完成であるため、改札外通路にフェンスを置いて新木場側の改札口と接続している。
使用が開始されたホーム中央の改札口。1番線側のエスカレータが未完成であるため、改札外通路にフェンスを置いて新木場側の改札口と接続している。
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 一方、駅中央では新しい改札口の使用が開始されました。この改札口は地下3階のホームと地下1階を直結するエスカレータの乗降口前に位置していますが、現状ではこのエスカレータは2番線側しか完成していません。このため、この改札口と1番線ホームの間の移動経路を確保するため、改札外通路の一部を仮設のフェンスで仕切り、新木場側の改札口と接続しています。1番線側のエスカレータは2月末に完成する予定となっており、完成後はこのエスカレータ単独の改札口となるる模様です。

●地下2階(改札内コンコース)
完成部分が拡大した地下2階改札内コンコース
完成部分が拡大した地下2階改札内コンコース

 地下2階の改札内コンコースは引き続き工事用の仮囲いでほとんどが埋め尽くされた状態ですが、池袋方の一部は昨年8月取材時よりも囲いの面積が縮小し、完成に近い形状となりました。

●地下3階(ホーム)
地下3階のホームは両ホームをつないでいた床面が撤去され、ホームが分離された。
地下3階のホームは両ホームをつないでいた床面が撤去され、ホームが分離された。
(同じ場所の2010年3月31日/2012年4月21日の様子)


 地下3階のホームは工事に伴う面積の減少分をカバーするため、2009年末頃より内側2線(地下鉄8号線敷設予定スペース)の上に仮設の床を設置し、大きな1面の島式ホームとして運用していました。前記した通り、両ホームと地下1階を直接接続するエレベータが完成しバリアフリー移動経路が確保されたことや、階段・エスカレータの移設がおおむね完了したことから、昨年9月12日(水)に仮設の床の部分が閉鎖され、両ホームが完全に分離されました。

内側2線側の囲いには折り返し線新設についてのお知らせが掲出されている。
内側2線側の囲いには折り返し線新設についてのお知らせが掲出されている。
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 内側2線側は軌道を敷設し折り返し線として使用されることになっており、現在はすべて工事用の柵で覆われています。柵には内側2線の完成予想図と来る3月16日(土)のダイヤ改正より使用を開始するという内容のお知らせが掲出されています。完成予想図では内側2線はともにホームドアが設置されていることから、昨年8月の記事で予想した通り新木場方面ホーム側(2番線)は降車専用ホーム、池袋方面ホーム側(3番線)は豊洲始発列車用ホームとして使用されることが確定しました。

▼脚注
※有楽町線と接続する副都心線が東急東横線と直通運転を開始するのに伴い実施される。

内側2線は軌道敷設がほぼ完了し、架線や信号設備の整備が進められている。 3番線和光市方。手前に軌道が延伸された。
2番線新木場方。こちらはホームの半面を使用して資材が置かれている。 内側2線の終端部分は壁が撤去され、奥まで軌道が敷設されている。
左上:内側2線は軌道敷設がほぼ完了し、架線や信号設備の整備が進められている。
右上:3番線和光市方。手前に軌道が延伸された。(同じ場所の2012年8月11日の様子
左下:2番線新木場方。こちらはホームの半面を使用して資材が置かれている。
右下:内側2線の終端部分は壁が撤去され、奥まで軌道が敷設されている。(同じ場所の2006年7月12日の様子

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 内側2線は3月の使用開始に向けて軌道敷設や架線・信号設備の整備が進められています。有楽町線では現在ホームドアの新設が進められていることから、ホーム先端にはホームドア取り付け用の突起も見られます。また、新木場側の終端部は以前はホームの終了と同地点に壁が設置されトンネルが途切れていましたが、このままでは10両編成の列車が停車できないため、壁が撤去され奥まで軌道が敷設されています。(この部分のトンネルは有楽町線開業当初から準備されていた部分で、今回新規に建設したものではない模様。)

使用開始となった1番線ホームのエレベータ コンクリートの添え柱が設置された部分は鋼管柱が切断・撤去された。
左:使用開始となった1番線ホームのエレベータ
右:コンクリートの添え柱が設置された部分は鋼管柱が切断・撤去された。(撤去前の様子

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 ホーム上は階段・エスカレータの新設・移設に伴い一部の柱や壁が移設・撤去されています。また、ホーム中央は既設の鋼管柱の両側にコンクリートの壁が新設され、鋼管柱が切断・撤去されました。これは上層階にエスカレータを貫通させる開口部を設けたため、その開口部に合うように柱を移設したことによります。(上下階で柱の位置が合わないと上の階を支えられないため。)切断した鋼管柱の跡は円形の鉄板を溶接して塞いでいますが、この部分は今後内装材のパネルで覆われてしまうため見えなくなります。

 2009年以来3年半続いてきた豊洲駅の大規模改良工事ですが、この春をもって区切りを迎えます。工期は今年9月までの予定となっていることから、春以降は構造物以外の改修や原状復旧などが中心になるものと思われます。昨年夏以降は新改札口の供用開始などにより、駅構内の混雑緩和は着実に進んでおり、折り返し線の使用開始による増発も行われれば更にその効果が高まることが期待されます。

<2013年3月9日追記>
3月16日のダイヤ改正より平日朝ラッシュに時西武池袋線・東武東上線から直通で1本ずつ豊洲行き列車が設定されることが発表されました。今回のダイヤ改正では逆方向(池袋方面)の始発列車は通常ダイヤでは設定されていません。片方向2本のみの設定ですが、利用状況次第では増発等も期待されることから、今後の動向が注目されます。

▼参考
「東京メトロ有楽町線豊洲駅における駅改良計画について」地下空間シンポジウム論文・報告書第14巻67~74ページ - 土木学会
「現場から 副都心線開業後の取り組みについて」 - Subway(日本地下鉄協会報) - 43~46ページ
第2回鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル改訂に関する調査検討委員会 資料2:重点課題に関する検討 - 国土交通省(PDF)
→16ページに豊洲駅折り返し線整備に関する記述あり

▼関連記事
半蔵門線と有楽町線の微妙な関係(2006年7月11日作成)
東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2010年3月31日取材)(2010年5月5日作成)
東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2012年4月21日取材)(2012年4月24日作成)
東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2012年8月11日取材)(2012年8月17日作成)

■おまけ:有楽町線で8両編成運用開始?
8号車付近の線路上に設置された停車目標と思しき物体
8号車付近の線路上に設置された停車目標と思しき物体

 豊洲駅の改良工事とは直接関係はありませんが、今回1番線の8号車の停車位置付近の線路上に8両編成用の停車目標と思しき物体が新設されているのを確認しました。同様の物体は豊洲駅以外の有楽町線の一部駅でも確認しています。現在8両編成の電車は副都心線(有楽町線と線路を共有する和光市~小竹向原間を含む)のみで運用されています。東京メトロ側から公式な発表はないため詳細は不明ですが、今後8両編成の運用範囲が有楽町線内にも拡大されるのか気になるところです。
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