カテゴリ:鉄道:建設・工事
南武線稲城長沼駅高架化工事(2013年1月5日取材)
公開日:2013年01月27日17:00

南武線稲城長沼駅では現在高架化工事が進められてます。前回の中央線の高架化工事と合わせ、1月5日に調査をしてまいりましたので現在の状況をお伝えいたします。
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南武線稲城長沼駅高架化工事(2012年8月19日取材)(2012年8月31日作成)
■南武線連続立体交差事業の概要
南武線連続立体交差事業は南武線稲田堤~府中本町間(4.3km)を高架化するものです。この区間では鶴川街道(都道19号町田調布線)、府中街道(都道9号川崎府中線)という2本の幹線道路が交差しており、双方の踏切を原因として激しい交通渋滞が発生していました。連続立体交差化にあたっては高架化と地下化の2種類の案が検討されましたが、南多摩駅のすぐ北で多摩川と交差していること、矢野口~稲城長沼間で交差する稲城大橋有料道路が部分的に地下化されていること、南武線は貨物列車が走行するため急勾配が造れないことなどの各種制限を勘案し高架化を行う方針で決定されました。

4車線化された鶴川街道と南武線のアーチ橋。2011年1月15日撮影
工事は矢野口駅~稲城長沼駅東側(第1期区間)と稲城長沼駅東側~府中本町駅(第2期区間)の2つに分割して行われており、第1期区間は2005(平成17)年10月までに完成しました。これにより8箇所の踏切が廃止されたほか、直後に実施された鶴川街道の多摩川原橋の4車線化とバイパス新道(都道多摩3・1・6号線)への付け替えにより、懸案だった交通渋滞が解消されました。
続く第2期区間の工事は第1期区間完成直後の2006(平成18)年3月から開始され、2011(平成23)年12月に下り線の高架化が完了しました。上り線の高架化は2014(平成26)年春が予定されており、最終的な完成はその翌年の2015(平成27)年春の予定となっています。この事業が完成すると、第1期区間の8箇所に加え稲城長沼~府中本町間にある7箇所の踏切が廃止されます。
<南武線連続立体交差事業の歴史>
1989年4月 建設省(現・国土交通省)の事業採択
1992年1月 都市計画決定
1993年3月 事業認可
1997年1月 第1期区間(稲田堤~稲城長沼間)着工
2005年10月 第1期区間完成
2006年3月 第2期区間(稲城長沼~府中本町間)着工
2007年3月 稲城長沼駅仮駅舎使用開始
2008年6月 第2期区間上り線(川崎方面)を仮線に切り替え
2009年10月 第2期区間下り線(立川方面)を仮線に切り替え
2011年12月 第2期区間下り線高架化完成(詳細は後述)
2014年春 第2期区間上り線高架化完成予定
2015年春 稲城長沼駅2面4線化完成予定
この事業は道路整備の一環として東京都が事業主体となり進められています。第1期区間・第2期区間をあわせた総事業費は約598億円で、その負担の内訳は国が45%(ガソリン税・自動車税などの国庫補助)、東京都が31%、稲城市が13%、JR東日本が11%となっています。
■現在の状況(2013年1月15日取材)
下り線の高架化から約1年が経過し、第2期区間は全線にわたり地上の旧下り線跡地で上り線の高架橋の建設が進められています。以下、今回調査した各地点の状況を見ていきます。
●稲城長沼駅


左:稲城長沼駅地上ホーム。高架橋本体の建設が進む。(同じ場所の2011年1月15日の様子)
右:地上下り線ホーム跡地で建設が進む高架橋。
※クリックで拡大
高架化着工前の稲城長沼駅は島式ホーム1面2線+片面ホーム1面1線+留置線が2本(そのうち1本は6両編成を直列に2編成留置可能)の配線でした。高架完成後の稲城長沼駅は留置線をなくし、代わりに全ての線路で乗降が可能な島式ホーム2面4線の配線となる予定です。このうち、上り本線(新1番線)は現在使用中の地上上り線の跡地を利用して高架橋を建設するため、2014年春に予定されている上り線高架化時は上り副本線(新2番線)を上り本線として使用します。
現在は地上の旧下り線ホームの撤去が完了し、跡地で高架橋本体の建設が進められています。前記した理由により、現在建設しているのは上り線のホームが載る部分のみですが、本線側の高架橋の端は鉄筋が無数に埋め込まれており、将来の拡幅が可能となっています。


左:高架ホームから建設中の上り線用高架橋を見る。
右:ホーム中央付近では階段の開口部周辺の配筋作業中。
※クリックで拡大
上り線ホーム用の高架橋は柱の構築がおおむね完了し、梁や床面の構築に移っています。今回調査時はホーム中央付近の階段・エスカレータ・エレベータ周辺の鉄筋の組み立て作業が行われていました。なお、上り副本線(新2番線)の軌道は2011年の下り線高架化時にほとんどが敷設済みとなっており、現在は特に作業は行われていません。


左:立川方の高架橋。上り線側の拡幅が進む。(同じ場所の2012年1月28日の様子)
右:川崎方の高架橋は下り線高架化時に完成形となっており変化はない。
※クリックで拡大
立川方は地上の仮線にあった引上げ線を撤去した分土地に余裕があるため、上り線の高架橋を2線分まとめて建設中です。一方、川崎方は2011年の下り線高架化時に4線分まとめてで高架橋が建設されており、大きな変化はありません。
なお、2015年春の2面4線化完成時には内側2線は待避線のほかに当駅での折り返しにも使用可能な配線となる予定です。現時点で稲城市などから発表されている資料では川崎方は内側2線にシーサスクロッシング(両渡り)が入るのに対し、立川方は上り線→下り線の片渡りであることから、川崎方は2線とも折り返し可能、立川方は下り副本線(3番線)のみ折り返し可能となる模様です。
●南多摩駅

南多摩駅の地上ホーム。ネットの裏で高架橋本体の建設が進む。(同じ場所の2012年1月28日の様子)
高架化工事着工前の南多摩駅は対向式ホーム2面2線で、高架化後は島式ホーム1面2線の配線となる予定です。現在は地上の旧下り線の跡地に上り線のホーム・高架橋を建設する工事が進められており、現在は高架橋の床面までおおむね完成した状態となっています。


左:高架下り線ホームと上り線ホームをつなぐ跨線橋から川崎方面を見る。
右:同じ跨線橋から立川方面を見る。上り線の高架橋の建設が進んでいる。
※クリックで拡大
建設が完了した高架橋の上では未完成だった上り線側半分のホーム床面・屋根・防音壁などの取り付けが進められています。高架橋の床面にはまくらぎを固定するための無数の突起が見られることから、ホーム本体の工事が完了次第軌道敷設が開始されるものと思われます。
なお、南多摩駅の改札口は高架化前から引き続き下り線外側に設置されており、上り線ホームへ向かうには一旦下り線ホームへ上がった後ホーム中央付近にある跨線橋を通って上り線ホームに降りるという複雑なルートを通る必要があります。上り線高架化完成までそれほど時間がかからないため、この跨線橋にはエスカレータ・エレベータなどのバリアフリー設備は無く、車いすでの利用は困難となっています。(稲城長沼駅も同様。)

高架ホームの川崎方。府中街道の交差部分は上り線側も桁の架設が完了した。(同じ場所の2012年1月28日の様子)
南多摩駅の川崎方では府中街道(都道9号川崎府中線)と交差しています。この道路は是政橋(これまさばし)を経由して多摩川の対岸を結んでいることから交通量が多く、矢野口駅付近で交差する鶴川街道とともに踏切による渋滞が多発しており、南武線の高架化を急がせる要因となっていました。現在は上り線側のけたの架設も完了し、防音壁の取り付けが行われています。



上:高架ホームの立川方。新設道路と交差するアーチ橋の架設中。(同じ場所の2012年8月19日の様子)
下左:架設中のアーチ橋を地上ホームから見る。(同じ場所の2012年8月19日の様子)
下右:ホーム脇の作業用地に置かれていた大型クレーン車。高架橋の建設に使用したものと思われる。
※クリックで拡大
一方、立川方では是政橋と南多摩駅の南側を通る川崎街道をショートカットする新設道路(都市計画道路多摩3・3・7号線)が交差しています。この道路は是政橋の4車線拡幅と並行して建設が進められているもので、2011年4月に車道2車線+歩道が暫定開放されています。この道路の交差部分の高架橋は上下線とも矢野口駅付近に似たコンクリート製のアーチ橋となっています。
現在は交差部分に仮設の橋脚を設置したうえで上り線のアーチ橋を設置する工事が進められています。今回調査時は正規の位置よりやや高い場所にアーチ橋が置かれており、今後は位置を微調整しながら正規の位置まで降下させ固定するものと思われます。上り線ホーム脇の作業用地にはこのアーチ橋の工事で使用したと思われる大型クレーン車が置かれていました。
2006年に着手した南武線高架化工事の第2期区間は高架橋本体の建設が順調に進んでおり、今年春~夏以降は上り線高架に向けて軌道敷設やホームの建設などの仕上げ作業に移るものと思われます。次回は今年夏~秋頃に調査を行う予定です。
▼参考
進めています JR南武線連続立体交差事業_稲城市ホームページ
是政橋と川崎街道を結ぶ多摩3・3・7号線が交通開放|東京都
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