小田急線地下化完成(その2:下北沢駅)

下北沢駅地下ホーム

去る2013年3月23日(土)に地下化された小田急線代々木上原~下北沢間の各駅に関するレポートの続きです。2回目の今回は下北沢駅付近の様子を見てまいります。

「その1:概要・代々木上原駅~東北沢駅」はこちら

(続き)地下化された各区間の状況(2013年3月31日取材)

●代々木上原駅~東北沢駅
●東北沢駅

前回の記事を参照


●下北沢駅
下北沢駅の地下化前後の断面図
下北沢駅の地下化前後の断面図

 地下化工事着工前の下北沢駅は下り線が島式ホーム(片側のみ使用)、上り線が片面ホームという変則的な配置となっていました。ホーム中央では京王井の頭線が上を交差しており、上下それぞれのホームからL字・T字型の連絡通路が設置されていました。小田急の駅舎は井の頭線交差部分の北側の線路上に設置されていましたが、ホームが狭いことから駅舎からホームに下りるルートには階段しかなく、下北沢駅は小田急電鉄で唯一バリアフリー化が未完了の駅となっていました。
 地下化後の小田急線下北沢駅は緩行線が地下2階、急行線が地下3階の2層構造になります。双方のホームへ下りる階段・エスカレータを分離するため、急行線ホームは地上ホームよりも小田原寄りにずれて設置され、地上フロアは全体が改札口や小田急・京王の乗り換えコンコースとして使用されます。また、地上ホーム跡地を利用して小田原寄りにも改札口が増設されるほか、駅の上部には商業施設が建設される予定です。

2013年3月23日地下化時の下北沢駅の断面図
2013年3月23日地下化時の下北沢駅の断面図

 3月23日の地下化時は地下3階の急行線ホームのみが完成します。地上は旧線路やホームなどの施設が残っているため、地下2階の緩行線ホームは線路部分に蓋をしてコンコースとして使用し、駅北側に地上~地下2階を繋ぐ階段やエスカレータを配置することによりホームと地上の移動ルートを確保しています。

京王井の頭線高架下にある北口改札口 南口改札口
左:京王井の頭線高架下にある北口改札口(同じ場所の2013年1月27日の様子
右:南口改札口

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 地下化にあわせて下北沢駅は橋上駅舎の使用を停止し、駅の南北の地上に新しい改札口が設置されました。北口は京王井の頭線の高架下にあり、昨年12月に閉鎖された井の頭線ホーム~小田急線上りホームの連絡階段跡地を通じて京王井の頭線の反対側にあるコンコースに通じています。この連絡通路内には井の頭線ホームに通じるエレベータも設置されており、ようやく乗り換え通路の完全バリアフリー化が実現しました。南口は小田急線の旧地上ホームを挟んだ反対側の井の頭線高架橋沿いにあり、旧地上ホーム跡を横断して北側のコンコースに接続しています。

使用停止となった地上ホームは照明器具などの撤去が開始されていた。 新宿寄りの踏切跡から東北沢駅方向を見る。踏切は全て線路側にバリケードが設置された。
左:使用停止となった地上ホームは照明器具などの撤去が開始されていた。
右:新宿寄りの踏切跡から東北沢駅方向を見る。踏切は全て線路側にバリケードが設置された。(同じ場所の2010年1月10日の様子

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 旧地上ホームは使用停止から1週間しか経っていませんでしたが、ホームは照明設備などが取り外され、線路は架線や信号設備のほとんどが撤去されていました。また、東北沢駅方面の廃線跡は数十メートル間隔で踏切が連続していましたが、これらの踏切は全て線路側に水色のバリケードが設置され封鎖されていました。下北沢駅構内は今後未着工だった京王井の頭線の橋梁改築と地下1・2階のトンネル建設に速やかに着手する必要があるため、これらの残存施設は早期に取り壊されるものと思われます。

駅北側の改札内コンコース。地下へ降りる階段やエスカレータが連続して設置されている。 左の階段を上ると井の頭線ホーム。右へ進むと南口改札口。正面の暗闇は旧上りホームの一部。
左:駅北側の改札内コンコース。地下へ降りる階段やエスカレータが連続して設置されている。
右:左の階段を上ると井の頭線ホーム。右へ進むと南口改札口。正面の暗闇は旧上りホームの一部。(同じ場所の2012年6月23日の様子

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 地上から地下2階へ下りる階段やエスカレータは旧上りホームの跡地に設置されています。階段は2箇所、エスカレータは3機、エレベータは1機それぞれ設置されており、コンコース奥に2機併設されているエスカレータは上り専用とし、上下方向の動線を分離しています。地上~地下2階の階段・エスカレータ・エレベータはいずれも仮のもので、緩行線ホーム完成時に旧下りホーム跡地に移動する予定です。



地下2階コンコース、地上へ向かう上りエスカレータの乗り口。 地下2階から地下3階ホームへ下りる階段。
左:地下2階コンコース、地上へ向かう上りエスカレータの乗り口。
右:地下2階から地下3階ホームへ下りる階段。

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 地下2階は将来緩行線ホームと上り線の線路敷になる部分の一部のトンネルのみが完成しており、地下3階の急行線ホームへ向かうコンコースとして使用しています。上り緩行線の線路敷予定部分は現状ではコンクリートの床となっていますが、各所に継目が見られることから緩行線完成時に簡単に取り外しが可能な構造になっている模様です。また、コンコース内の壁の一部は金属製のブロックを組み立てたものや木製の仮設のパーティションとなっていることから、緩行線完成時にレイアウトが大幅に変更される模様です。

コンコース奥に設置されている地下化工事の情報コーナー。床には将来の線路位置を示すステッカー。
地下トンネルの断面模型。通勤電車の模型は小田急5000形のBトレインショーティー? 下北沢~世田谷代田間の急行線トンネルを建設したシールドマシンの1/20模型。
上:コンコース奥に設置されている地下化工事の情報コーナー。床には将来の線路位置を示すステッカー。
下左:地下トンネルの断面模型。通勤電車の模型は小田急5000形のBトレインショーティー?
下右:下北沢~世田谷代田間の急行線トンネルを建設したシールドマシンの1/20模型。

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 コンコースの最奥部(小田原寄り)には代々木上原~梅ヶ丘間の地下化・複々線化事業に関する解説コーナーが設けられています。解説コーナーは地下化区間の断面模型、シールドマシンの模型、工事手順を示したパネルなどにより構成されており、解説コーナーが置かれている場所は将来の緩行線の線路敷になることから、床には線路の位置を示す巨大なステッカーが貼られています。ちなみに、地下区間の断面模型に使用されている通勤電車の模型は2004(平成16)年に小田急電鉄・バンダイから発売された小田急5000形のBトレインショーティーを使用しているようです。(現在も下記の小田急電鉄のオフィシャルグッズショップにて購入できます。)

▼参考
【楽天市場】Bトレインショーティー5000形通勤車:小田急グッズショップTRAINS

地下3階急行線ホーム
地下3階急行線ホーム

 地下3階の急行線ホームは島式1面2線で、地下2階のコンコースとの間は階段2箇所、エスカレータ3機、エレベータ1機により接続されています。エレベータは最終的に地上~地下2階~地下3階の3フロアを接続するものが2機設置される計画ですが、現状では地下2~3階間に1機のみ完成しており、隣に増設用のスペースが確保されています。
 ホームの内装は東北沢駅と同じく床はグレーのタイル、柱や天井はベージュのパネルとなっており、ホーム中央の天井は機材を吊るすための枠を兼ねた細いアーチ状の骨組みが多数設置されています。ホーム小田原寄りの端にはトイレ、ホーム中央には売店が設置されています。

線路部分はシールド工法で建設されている。 世田谷代田駅方面へ続くトンネル。右のフィンは火災発生時に煙を世田谷代田駅へ排出する送風口。
左:線路部分はシールド工法で建設されている。
右:世田谷代田駅方面へ続くトンネル。右のフィンは火災発生時に煙を世田谷代田駅へ排出する送風口。

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 下北沢駅の急行線ホームは線路部分がシールド工法で建設されており、ホーム部分は単線サイズのシールドトンネルの間を切り広げた形となっています。シールドトンネルは世田谷代田駅端の立坑(次回解説予定)から掘進を開始し、上り線のトンネルを建設して下北沢駅新宿寄りにある立坑に到達した後、Uターンして下り線のトンネルを建設して世田谷代田駅に戻るという工程が採られました。シールドトンネルは駅部分に合わせて直径が約8.1mと在来線用としてはやや大きめとなっており、下北沢~世田谷代田の駅間ではその大きな空間を利用して線路脇に照明・滑り止め付きの床を備えた避難用通路が完備されています。
 また、小田原寄りのホーム先にはトンネル側面に斜めのフィンが付いた巨大な送風口が開いています。トンネル内で火災が発生した際は、この送風口から大量の空気を送り込んで煙を世田谷代田駅方向に排出します。(この送風口は通常時のトンネル換気口も兼用している。)

階段前に設置されている発車案内板 線路側の壁面に埋め込まれている広告用ディスプレイ
左:階段前に設置されている発車案内板
右:線路側の壁面に埋め込まれている広告用ディスプレイ

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 下北沢駅は有料特急以外の優等列車が全列車停車するため、発車案内板も使用を開始しています。地下化に伴い設置された発車案内板はフルカラーのプラズマディスプレイとなっており、4段に別れている表示欄は1段目が先発列車の種別・行先・発車時刻・両数、2段目が停車駅(スクロール表示)、3・4段目が次発・次々発の列車種別・行先・発車時刻・両数を表示します。
 また、線路側の壁面にはトンネルが円形になっていることを利用して、広告用の大型ディスプレイが設置されています。広告用ディスプレイは上段が自社広告などの固定表示、下段がリアルタイムで更新されるスクロール式の文字ニュースとなっています。(表示内容は今後変更される可能性もあります。)

新宿寄りの地上階直結エスカレータ予定地は非常階段になっている。 非常階段は地下2階につながっている。
左:新宿寄りの地上階直結エスカレータ予定地は非常階段になっている。
右:非常階段は地下2階につながっている。

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 地下化直後、インターネット上のSNSなどで地下の新しいホームの新宿寄りが非常に狭いことが話題となっていました。新宿寄りのホームが狭いのは地上の京王井の頭線の高架橋の改築が済んでおらず、その直下の施設も一部が未完成となっているためです。一例として挙げられるのがホーム新宿寄りのエスカレータです。ホームの新宿寄りには本来地上と地下3階急行線ホームを直結するエスカレータが設置される計画ですが、地上の線路跡の整理が済んでいないため、現状ではエスカレータを設置することができず、その場所には暫定的に地下2階に通じる非常階段が設置されています。そして極めつけは上り線ホーム端です。

上り線新宿寄りのホーム途中に設置されているトンネル換気送風口
上り線新宿寄りのホーム途中に設置されているトンネル換気送風口 ※クリックで拡大

 上り線ホームの新宿寄りの途中には何とトンネル換気用の送風口が設置されています。送風口は壁からかなり出っ張っており、送風口前のホームは幅が1メートルほどしかありません。送風口からは常時5~10m/sほどの風が出ており、ホーム床面にはそれに関する注意が書かれたステッカーが貼られています。この送風口は小田原寄りと同様ホームの外に設置されるはずのものですが、前記したとおり地上の施設の撤去が終わるまでは本来の位置に設置することができず、エスカレータ用の空間を利用してホームの途中に設置されたものと推測されます。ホーム床面や天井などは仮設ではなくほかの部分と同じ内装が施されていることから、この送風口は仮のもので、緩行線の完成までにはホームの外に移設されるものと思われます。
 下北沢駅は地上から地下3階にホームが移動したことにより、これまで30秒ほどで済んでいた小田急線と井の頭線の乗り換えにかかる時間が5分近くに延び、未完成ゆえの複雑な駅構内の構造ともあいまって地下化直後は利用者から不満の声も聞かれたようです。緩行線が完成するのは4年後の2017(平成29)年の予定となっており、それまでの間は不便な状況が強いられることになりそうです。


次回は世田谷代田駅と世田谷代田~梅ヶ丘間のトンネル出口付近の様子、そして今後の緩行線建設(複々線化工事)の計画について解説してまいります。世田谷代田駅の急行線ホームは緩行線開通までの4年間限定で設置される仮のものですので、記録の意味も込めて詳しくお伝えする予定です。

▼参考
複々線化事業|鉄道事業|事業案内|会社案内|企業・IR・採用情報|小田急電鉄
シモチカ ナビ(2020年5月31日サイト閉鎖)
2013年3月23日初電から東北沢、下北沢、世田谷代田3駅を地下化します - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF)
『小田急小田原線(代々木上原~梅ヶ丘駅間)複々線化事業』の事業期間に関するお知らせ-複々線化は2017年度、事業完了は2018年度を目指します - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF)

▼関連記事
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小田急線複々線・連続立体交差化工事(2・工事中区間)(2010年2月1日作成)
小田急線複々線・地下化工事(2011年・2012年取材まとめ)(2012年2月1日作成)
小田急線地下化&ホーム延長工事(2012年6月23日取材)(2012年7月3日作成)
小田急線地下化工事(2013年1月27日取材)(2013年3月8日作成)
小田急線地下化完成(その1:概要・代々木上原駅~東北沢駅)(2013年4月29日作成)
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