品川駅・田町車両センター再開発(2013年7・8月取材)



現在東京~上野間で進められている東北縦貫線の建設に合わせて、東海道線品川駅では車両基地の大規模な再開発事業が進められています。7月から8月にかけてその状況を調査しました。今回は数日前に発表された11月に行われる線路切替工事の内容などを合わせてお伝えします。

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品川駅・田町車両センター再開発(2013年5月取材)(2013年05月19日作成)

品川駅・田町車両センターの縮小・再開発の概要

 現在、東海道線東京駅と宇都宮・高崎・常磐線上野駅の間では2014年度の開業を目指して「東北縦貫線」の建設が進められています。この新線の建設の主たる目的は混雑率が全国で最高レベルとなっている山手線・京浜東北線の混雑緩和ですが、副次的な効果として車両運用の効率化も期待されています。
 東海道線と宇都宮・高崎線は現在は品川駅と上野駅の近傍に車両基地(田町車両センター・尾久車両センター)があります。2001(平成13)年に湘南新宿ラインの運行が開始され、両路線間を恒常的に車両が行き来するようになりました。これに合わせて、車両形式もE231系1種類にほぼ統一されていますが、車両基地がこの系統からは外れた位置にあるため、引き続き別々の車両基地を置くことを余儀なくされています。東北縦貫線が開業するとこの両車両基地が直接結ばれるため両車両基地を一体的に運用することが可能となります。このため、品川駅側の車両基地を大幅に縮小し、上野駅側に機能を統合する計画となっています。現在宇都宮・高崎線系統に少数残る211系のE233系への置き換えが進められていますが、これも今後の車両基地統合や一体運用を考慮したものと言えます。

再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋


 車両基地統合により品川駅付近に生まれる用地は10~15ヘクタールに及ぶとみられています。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車し、京急線により国際空港である羽田空港まで15分で結ばれています。また、去る9月18日にJR東海より発表されたリニア中央新幹線の環境アセスメント手続資料において、品川駅が東京都心側のターミナル駅となることが正式に発表されました。リニア中央新幹線は今から14年後の2027年の開通が予定されており、東京都ではこれに合わせる形で「東京サウスゲート計画」の名の下再開発計画を始動させています。この計画では車両基地跡地のみならず品川地区全体を開発対象としており、東側に豊富に存在する運河などの水辺を生かした街づくりやヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルの建築制限(海からの風の通り道を作る)などを設けることとされています。さらに、2011(平成23)年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に税率軽減や入国審査の簡素化などを図るもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。
 なお、車両基地跡地の利用に当たってはより多くの土地を対象エリアに含めるため、山手線・京浜東北線の線路を現在よりも東側に移設することが計画されています。これに合わせて、移設される区間の途中に新駅を設けることが検討されています。山手線への新駅設置は1971(昭和46)年の西日暮里駅以来40年ぶりのことで、開業すれば品川駅との間は2分で結ばれ、再開発地区の国際競争力強化に大いに貢献します。新駅を含めた再開発は2014年の東北縦貫線開業後にスタートし、2020年頃の完成が見込まれています。



9・10番線の改修が間もなく完成

着工前の品川駅構内の配線図
着工前の品川駅構内の配線図
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 再開発着工前の品川駅は、現在は運行されていない客車列車に最適化された構内配線となっており、各所に機関車付け替え用の短い引上線や、交差箇所全方向を連絡するポイントなど、旧態依然とした極めて複雑な配線となっていました。また、東海道線の上下線間には、「臨時ホーム」と称する2面の島式ホームがありました。このホームは、新幹線や高速道路が未整備だった時代に、帰省シーズンなどの臨時列車を発着させるために使用されていたもので、現在はほぼ遊休化しています。この臨時ホームはその役割故に東海道線東京方面からは進入できない配線となっており、そのままでは東北縦貫線の折り返しには使用できません。
 このため、東京方にある車両基地を含めて大規模な配線変更を行い、東京方面からも臨時ホームに進入できるよう改めることになり、2009(平成21)年から工事が開始されました。工事ブルートレインの廃止により使用停止となっていた車両基地東側の旧東京機関区と、東京寄り車両基地のみに通じていた品川駅10番線から開始されました。10番線の配線変更は2011 (平成23)年秋に完成し、ホーム北側が東海道線下り線側に曲げられ、東京方面から進入が可能となりました。続いて、東海道線下り本線を11番線から12番線に入れ替える工事が行われ、2012(平成24)秋に完成しました。

東海道線下り11番線ホームから完成間近の新車両基地を見る。 新車両基地では架線・信号設備の整備が進められている。
左:東海道線下り11番線ホームから完成間近の新車両基地を見る。
右:新車両基地では架線・信号設備の整備が進められている。2枚とも2013年7月6日撮影

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 車両基地東側では現行の田町車両センターに代わる新しい車両基地の建設が大詰めを迎えています。新車両基地は留置線が南北2群あり、北側は車体洗浄・整備に使用する作業台が設けられています。また、現在の東海道線の長編成・電車での運行形態にあわせて、留置線のほとんどは15両対応の行き止まり式となっています。
 現在は軌道敷設やホーム本体の工事は概ね完了し、架線や信号設備の取り付けが進められています。8月訪問時は北通路側の階段撤去跡で屋根の設置が進められていました。

9番線ホーム中央付近。階段を撤去した跡地で屋根の設置が進む。 さらに奥は線路が8番線側に大きく張り出している。
左:9番線ホーム中央付近。階段を撤去した跡地で屋根の設置が進む。2013年8月29日撮影
右:さらに奥は線路が8番線側に大きく張り出している。

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 9番線の中央は階段や機器室などホーム上に構造物が多数存在するため、ホームの幅を確保するため線路が8番線側に大きく張り出しています。このため、今後は8番線も9・10番線と同様にホームを使用停止にして線路の移設が行われるものと思われます。

9番線も東京寄りは出発信号機が設置されており、折り返しが可能となっている。 9番線ホームと新車両基地の間には7・8番線に通じると思われるポイントが設置されている。
左:9番線も東京寄りは出発信号機が設置されており、折り返しが可能となっている。2013年8月29日撮影
右:9番線ホームと新車両基地の間には7・8番線に通じると思われるポイントが設置されている。2013年7月6日撮影

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 9番線も10番線と同様に東京方面は東海道線下り本線から進入可能となっています。また、東京方面のホーム先端には出発信号機が設置されており、新車両基地西端をを通る東海道線新上り本線(詳細は5月の記事参照)を通じて東京方面に進出可能となっています。このため、東北縦貫線開通後は折り返し運転に使用されるものと思われます。

9・10番線の横浜寄りも整備がおおむね完了した。 9・10番線横浜寄りの先端は10番線側が若干手前に停止位置がある。
左:9・10番線の横浜寄りも整備がおおむね完了した。
右:9・10番線横浜寄りの先端は10番線側が若干手前に停止位置がある。2013年7月6日撮影

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 9・10番線の横浜寄りは2011年の使用再開時点ではホームの一部が仮設構造となっており、2012年の使用停止後にそれらを撤去して本格的なホームを建設中です。東北縦貫線開業後はホームの利用者数が大幅に増加することが見込まれるため、この改築部分には新たに橋上駅舎に通じる階段とエレベーターが設置されています。この改築部分のホームの長さ(列車の停止位置)は9・10番線で異なり、10番線側が若干東京寄りにずれています。このため、列車が停車しない横浜寄りの5mほどは作り付けの柵が設置されています。
 なお、10番線のホームの先は従来と異なり、7~9番線とは合流せず、東海道線下り副本線の11番線と合流して東海道線下り線に直接進出する配線となっています。このため、今後10番線は横浜方面からは進入できなくなります。また、10番線と11番線の出発信号機には進路表示器(2進路対応)が準備されており、完成後は横須賀線にも進出可能となる模様です。

八ツ山橋付近にある横須賀線・東海道線の連絡線は変化なし
八ツ山橋付近にある横須賀線・東海道線の連絡線は変化なし。2013年7月6日撮影

以前から確認している横浜方の八ツ山橋付近にある東海道線と横須賀線を繋ぐ連絡線は今回大きな変化はありませんでした。この部分はポイントの大規模な撤去・ 新設が必要であるため、後述する11月の線路切替で工事が行われるものと思われます。

11/23(土)・24(日)に34時間の大規模切替工事

品川駅の2013年8月時点の配線図
品川駅の2013年8月時点の配線図
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 このように、品川駅の配線変更の工事は順調に進んでいることから、去る9月17日にJR東日本より11月23・24日の2日間、合計34時間に渡る線路切替工事を実施することが発表されました。この工事により、現在建設中の新車両基地(留置線26線)が使用開始となり、代わりに現行の車両基地(田町車両センターと札の辻群線)は全て廃止となります。
 この工事に伴い、東海道線と横須賀線は11月23・24日に大幅に列車が運休となる予定です。詳しい運転計画は以下の通りです。

●東海道線
23日(土・祝)の終日と24日(日)の初電~10:20頃の間、東京~横浜間で運休となり横浜駅で折り返し運転。この2日間東京駅を発着する寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」は全区間運休、特急「スーパービュー踊り子」は新宿・横浜発着に変更。

●横須賀線
24日(日)の初電~10:20頃の間、東京~西大井間で運休し、大崎駅・新宿駅に迂回運転。総武快速線は全列車千葉方面に折り返し運転。特急「成田エクスプレス」は大船・横浜・大宮・池袋・新宿・高尾~東京間が運休。

なお、荒天で工事が実施できない場合は2014年1月24・25日に順延されることになっています。(超大規模切替工事であることから、一般的な「翌週に順延」にはできなかった模様です。)


去る、9月8日(日)には2020年夏季オリンピックの開催地が東京に正式決定しました。品川駅の再開発はちょうどこのオリンピック開催と同時期の完成が見込まれています。オリンピックの競技は主に臨海部で開催される計画となっており、品川駅の再開発エリアはこれらの会場から至近であることから、様々な施設の誘致が期待されます。建設が決まったリニア中央新幹線とともに今後の変化が注目されます。

▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
品川駅改良工事(第1回・第2回切換)について - 鉄道と電気技術2012年5月号33~38ページ

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東北縦貫線建設工事(2010年8月14日取材)(2010年10月23日作成)
東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)(2011年6月9日作成)
品川駅・田町車両センター再開発(2011年10・11月取材まとめ)(2012年1月9日作成)
東北縦貫線工事&品川駅構内の工事(2012年3月3日取材)(2012年03月21日作成)
東北縦貫線建設&品川駅構内の工事(2012年6月15日取材)(2012年6月21日作成)
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