東横線渋谷~代官山間地下化工事(2013年・2014年春取材まとめ[1])

解体中の旧東横線渋谷駅

昨年3月より、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が開始され、東横線の渋谷~代官山間が地下化されました。地下化により不要となった地上の廃線跡では高架橋の取り壊しなどの再開発が進んでいます。1年ほど開いてしまいましたが、その間も調査は続けてまいりましたので2013年5月から2014年4月までの総決算ということで2回に分けてその結果をお届けしたいと思います。

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■東横線・副都心線の直通開始と渋谷~代官山間の地下化
廃止された地上の東横線渋谷駅。かまぼこ形の屋根が特徴的だった。 副都心線渋谷駅で並ぶ横浜高速鉄道Y500系と東京メトロ7000系。
左:廃止された地上の東横線渋谷駅。かまぼこ形の屋根が特徴的だった。2012年9月16日撮影
右:副都心線渋谷駅で並ぶ横浜高速鉄道Y500系と東京メトロ7000系。2013年3月16日撮影


 2013年3月16日(土)、東急東横線は渋谷駅から東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始しました。これにより、東横線はみなとみらい線・副都心線に加え、従来から副都心線と直通していた西武池袋線・東武東上線とも接続され、神奈川県・東京都・埼玉県の5社にまたがる新しい鉄道ルートが誕生しました。
 副都心線直通前の東横線渋谷駅は地上2階にホームがありました。副都心線直通に際しては、2008年に開業した地下5階の副都心線渋谷駅を東横線と兼用することとされており、副都心線渋谷駅は開業当初から東京メトロではなく東急電鉄が管理を行ってきました。そして、2013年3月の直通開始時に予定通り東横線の渋谷駅は地下に移転し、地上のホームは廃止となりました。この際新旧のホームは高低差が40m以上に及ぶため、東横線ホームのみならず隣の代官山駅までの駅間についてもほぼ全線が地下化されました。

東横線渋谷~代官山間の地下化前後の断面図
東横線渋谷~代官山間の地下化前後の断面図。
平面図は→こちら(別ウィンドウ)


 新しい地下線は開業済みの副都心線渋谷駅の終端側(当初は一部未完成)を延長する形で始まり、明治通りの下を進んで国道246号の反対側に出たところで4線から2線に収束します。そこから先はトンネル形状が変わり、地表を切り開かずに掘り進むシールドトンネルとなり、明治通りから外れて地上線の高架下に入ります。この区間は民有地を横切ることや、近接して下水管などがあったことから、先端に円錐形の回転式ドリルが付いた新開発の掘削機(アポロカッター工法)を用い、長方形を2つつなげたような特殊な断面のトンネルとすることによりトンネルのサイズを最小限に抑えています。地上の高架下を進みながら徐々に深度を浅くし、JR山手線の交差部分に達するとそこから代官山駅の手前までは再び箱型トンネルとなります。そして、代官山駅直前にある渋谷1号踏切(地下化と同時に廃止)の直後で地上に出て、代官山駅構内で既存の東横線の線路と接続します。この接続部分は予め線路を取り外し可能な構造に改造しておき、地下化前夜(2013年3月15日終電~16日初電の間)に一気に切替工事が行われました。

■渋谷~代官山間の地上廃線跡の状況

 渋谷~代官山間の地上廃線跡では、地下化から約2カ月後の2013年5月より施設の撤去が本格化しています。ここからは渋谷駅側から順に昨年5・9・11月と今年3・4月に断片的に調査した現地の様子をお届けします。

●渋谷駅(東横線ホーム・東急百貨店東館)
渋谷ヒカリエ11階展望スペースから見た渋谷駅。
渋谷ヒカリエ11階展望スペースから見た渋谷駅。2014年3月16日撮影
(同じ場所の2013年5月6日/2013年9月9日/2013年11月3日の様子)


 地上の東横線渋谷駅ホームは、昨年3月16日の廃止から5月のゴールデンウィークまでイベントスペース「SHIBUYA ekiato(エキアト)」として利用されました。5月のイベント終了後は順次施設の取り壊しが進められており、昨年末時点では特徴的だったかまぼこ型屋根がほぼ全て撤去されました。今年に入ってからは高架橋本体の取り壊しが開始され、東口ロータリーからJR渋谷駅南改札に入る通路がある部分以外は半分程度撤去が完了しています。3月1日以降は南改札へ入る通路を高架橋の取り壊しが完了した部分に迂回させた上で(写真中央左端の水色の屋根の部分が迂回通路)、残る通路上部の高架橋を取り壊す作業が行われています。
 また、東横線渋谷駅と隣接していた東急百貨店東横店東館も再開発に向けた準備のため、2013年3月末で閉館し、以後建物の取り壊しが進んでいます。渋谷駅本体に関してはこれ以外にも今後十数年かけて駅施設全体の再開発が予定されており、既に複数の工事着手を確認しています。再開発関連について別途カテゴリを設けておりますので、もう少し情報がまとまり次第改めてお届けする予定です。しばらくお待ちください。

●渋谷駅入口
東横線渋谷駅入口付近の変化。2013年5月6日(イベント最終日)
東横線渋谷駅入口付近の変化。2013年11月3日 東横線渋谷駅入口付近の変化。2014年3月16日
東横線渋谷駅入口付近の変化。
上段:2013年5月6日(イベント最終日)、下段左:2013年11月3日、下段右:2014年3月16日。


 東横線渋谷駅入口付近(国道246号南側)は、「渋谷駅南街区(渋谷三丁目21地区)プロジェクト」として地上33階・地下5階建ての超高層ビルが建設されることになっており、渋谷駅本体の再開発では最速となる2017年度の竣工が予定されています。そのため、この付近の高架橋の取り壊しは5月のイベントスペース利用終了直後に着手されており、年末にはほぼ更地化が完了しました。
 上の3枚組写真はほぼ同じ場所から撮影した写真で、上段が2015月6日のイベントスペース最終日の線路散策企画、下段左(スマホでご覧の場合は2枚目)が11月3日、右(同3枚目)が2014年3月16日の様子です。11月時点では奥にわずかに残っていた高架橋も3月には全て姿を消し、新しい建物の工事に向けて作業員用のプレハブ事務所が置かれています。

渋谷駅入口から代官山駅方向を見たところ。2013年5月6日
渋谷駅入口から代官山駅方向を見たところ。2013年9月9日 渋谷駅入口から代官山駅方向を見たところ。2014年3月16日
渋谷駅入口から代官山駅方向を見たところ。
上段:2013年5月6日、下段左:2013年9月9日(高架橋解体中)、下段右:2014年3月16日。


 駅入口から先の廃線跡は、高架橋を取り壊し、並行する渋谷川と一体化された遊歩道として整備される予定となっています。高架橋の取り壊し作業は夏頃より始まり、9月の訪問時はネットに囲まれた中からコンクリートを砕く音が響き渡っていました。取り壊し作業は年末までにはほぼ完了した模様で、今年3月の訪問時は更地になった状態で何も作業は行われていませんでした。

●渋谷~代官山
※この先画像が15枚(約920KB)あります。スクロールに従って自動で読み込まれます。(Javascriptが有効の場合のみ)容量にご注意ください。



並木橋から渋谷駅方向を見たところ。高架橋上を9000系が走行中。 同じ場所の高架橋解体中の様子。
左:並木橋から渋谷駅方向を見たところ。高架橋上を9000系が走行中。2010年3月20日撮影
右:同じ場所の高架橋解体中の様子。2014年3月16日撮影


 渋谷駅入口から並木橋までの高架橋もやや遅れて取り壊し作業が行われており、今年3月訪問時点では高架橋の原型はほぼなくなり、ショベルカーでガレキの搬出作業が行われていました。なお、並木橋付近の高架橋には1927(昭和2)年に現在の東横線の元となった東京横浜電鉄の丸子多摩川(現・多摩川)~渋谷間開業から終戦まで「並木橋駅」という駅があり、高架橋の高欄にホームの痕跡を見ることができました。高架橋の解体により、この廃駅の跡も同時に消滅しました。

並木橋から代官山駅方向を見る。道路を跨ぐ部分の橋桁は取り外されている。 同じ場所の2014年3月16日の様子。高架橋の解体はあまり進んでいない。
左:並木橋から代官山駅方向を見る。道路を跨ぐ部分の橋桁は取り外されている。2013年9月9日撮影
右:同じ場所の2014年3月16日の様子。高架橋の解体はあまり進んでいない。


 並木橋の道路(八幡通り)を跨ぐ部分の橋桁は昨年9月に取り外されているのを確認しました。並木橋交差点から見て右側(渋谷駅方向)の高架橋は前記した通り取り壊されましたが、左側(代官山駅方向)の高架橋は今年3月の訪問時も架線柱が無くなった以外はほぼ手つかずの状態でした。この付近は高架橋の真下に新しい線路のトンネルが通っていることに加え、並行している道路が無いことから、重機を直接乗り入れての解体作業ができないため時間がかかっているようです。

渋谷清掃工場を回り込む高架橋。ようやく一部の取り壊しが始まった。
渋谷清掃工場を回り込む高架橋。ようやく一部の取り壊しが始まった。2014年3月16日撮影

 さらに先に進み、渋谷清掃工場の端を急カーブで回り込んでいる途中の高架橋はようやく一部取り壊し作業が開始されています。この付近は地下のトンネルの埋設深度も浅いことから、トンネルに無用な衝撃を与えないよう慎重に解体作業が進められているものと思われます。

東横線地下化直前の様子。下を走る埼京線205系も現在は残り1編成。
同じ場所の2014年3月16日の様子。トラス橋左側の高架橋は解体された。 トラス橋左側の高架橋跡地。トンネルの天井部分が土が被せられ、埋め戻された。
東横線とJR山手線の交差部分。
上段:東横線地下化直前の様子。下を走る埼京線205系も現在は残り1編成。2013年2月9日撮影
下段左:同じ場所の2014年3月16日の様子。トラス橋左側の高架橋は解体された。
下段右:トラス橋左側の高架橋跡地。トンネルの天井部分が土が被せられ、埋め戻された。


 渋谷清掃工場の周囲を90度に回り込んだ後、東横線はJR山手線と交差します。地上時代は山手線の上をトラス橋でオーバークロスしていました。トラス橋の部分は地下から1年経った今年3月の時点でも架線が取り外された以外は大きな変化はありません。JR山手線は終電が1時近くと遅く、初電は4時半頃と早いため、線路内で作業ができる時間は極めて限られており、このトラス橋が東横線地上廃線跡の中で最も撤去が困難な部分であると思われます。

JR山手線西側の台地への移行部分も埋め戻しが完了している。
JR山手線西側の台地への移行部分も埋め戻しが完了している。2014年3月16日撮影

 JR山手線の先(代官山駅寄り)は代官山駅に向けて高くなる地形になっており、地上の線路は代官山駅に向けて高架橋、盛土、地平というように構造が変化していました。この区間は高架下や盛土の下の地面を直接切り開いて地下線のトンネルを建設しています。また、盛土・地平を走る区間では掘削に先立って線路全体を鉄製桁に作り替えています。トンネル上部の埋め戻しや高架橋の取り壊しは昨年夏頃から本格的に行われ、今年3月訪問時は更地化がほぼ完了しました。
 この部分の跡地利用に関しては現在のところ具体的な計画が明らかになっていません。ただ、浅い部分にトンネルが通っていることから、大型の建物を建てるには不向きであり、これまでの慣例から推測すると遊歩道や低層住宅になるものと思われます。

地下化2カ月後の渋谷1号踏切跡。 同じ場所の2014年3月16日の様子。布に覆われていた警報機は撤去された。
左:地下化2カ月後の渋谷1号踏切跡。2013年5月6日撮影
右:同じ場所の2014年3月16日の様子。布に覆われていた警報機は撤去された。


 地下線は代官山駅の手前ある渋谷1号踏切の直後に地上に出ます。渋谷1号踏切までの線路は地下に移ったため、地下化と同時に踏切は廃止となりました。地下化2カ月後の時点では、地下線切り替えの際に架線が取り外され、踏切の警報機に布製のカバーが掛けられた以外は大きな変化はありませんでした。その後踏切周辺の線路施設の撤去と並行して踏切の残存物も撤去が進められており、現在は警報機は無くなり、路面も平らに整形されています。

渋谷方面を見たところ。切替工事の際架線が撤去された以外は手つかず。 同じ場所の地下化1年後の様子。軌道桁が撤去され、トンネル上部が埋め戻された。
代官山駅方面を見たところ。奥の軌道桁が無い部分は3月15日夜の切替工事で撤去された。 同じ場所の地下化1年後の様子。白い布で覆われ、内部の様子は確認できない。
渋谷1号踏切からの風景。左:2013年5月6日、右:2014年3月16日
左上:渋谷方面を見たところ。切替工事の際架線が撤去された以外は手つかず。
右上:同じ場所の地下化1年後の様子。軌道桁が撤去され、トンネル上部が埋め戻された。
左下:代官山駅方面を見たところ。奥の軌道桁が無い部分は3月15日夜の切替工事で撤去された。
右下:同じ場所の地下化1年後の様子。白い布で覆われ、内部の様子は確認できない。


 渋谷1号踏切付近も地上を直接掘り下げてトンネルを建設したため、線路は鉄製桁となっていました。地下化直後は5月以降徐々に軌道桁の撤去とトンネル上部の埋め戻しが行われ、今年3月時点では渋谷駅方向は軌道桁はほぼ完全に無くなり、土が盛られている部分が露わになっています。一方、代官山駅方向は白い布で覆われており、内部の様子が見えなくなっています。
 なお、この踏切跡を通る「渋谷区画街路第1号線」は、恵比寿駅前と代官山地区を結ぶ主要道路となっていることから、今後幅12mに拡幅し一方通行も解消される予定です。数々のドラマや音楽作品のプロモーションビデオ等でロケ地となったことで有名な渋谷1号踏切ですが、今後は大きく風景が変化するものと思われます。

 次回は代官山駅構内の変化と地下線の様子(列車内からの前面展望)、副都心線渋谷駅の小変化についてお伝えします。

■代官山駅構内の変化
■地下線内の様子(前面展望動画より)
■副都心線渋谷駅の小変化


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