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東横線10両化工事(2013・2014年取材・妙蓮寺~横浜)
公開日:2014年05月02日00:03

東急東横線10両化工事の記事はまだまだ続きます。4回目の今回は妙蓮寺駅・白楽駅・東白楽駅・反町駅・横浜駅のホームの工事について見てまいります。
※写真は特に記載のない限り2013年8月29日撮影
東横線・副都心線直通に伴う東横線の10両編成対応化(概要)
各駅の状況
●中目黒駅・学芸大学駅・都立大学駅・自由が丘駅
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●田園調布駅・多摩川駅・新丸子駅・武蔵小杉駅
→2回目の記事へ
●元住吉駅・日吉駅・綱島駅・大倉山駅・菊名駅
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●妙蓮寺駅

今後優等列車対応通路が設置される妙蓮寺駅渋谷方のホーム端
妙蓮寺駅は地上にある対向式ホーム2面2線の駅で、横浜方のホーム端に駅舎があります。昨年夏の調査時は何も変化はありませんでしたが、先月5日に再度通過した際ホーム渋谷方の端に優等列車対応通路(10両編成用非常ホーム)の工事が開始されることを告知する掲示物が貼られているのを確認しました。上り線側・下り線側とも線路脇は駐車場になっていますが、線路と駐車場の用地の境界を示す柵は線路からやや離れた位置に設置されており、通路を設置するスペースは確保されています。
●白楽駅

白楽駅の優等列車は最初期に設置されたもので、他の駅より粗雑な構造となっている。
白楽駅は妙蓮寺駅と同じく対向式ホーム2面2線で、駅舎はホーム中央付近の線路上部にあります。白楽駅のホーム渋谷方の端には副都心線直通開始とほぼ同時に優等列車対応通路が2両分設置されました。この通路は副都心線直通開始に間に合わせるため、鋼材や木板を用いた非常に簡素な構造となっています。元々設置スペースが全く無い下り線側は全長に渡り幅が50cm~1mほどしかなく、上り線側も信号機器の移設をせずに通路を設置したため同様に幅が50cmほどしかない箇所や大きく段差が生じている箇所があるなど、他の駅と比べると明らかに粗雑な仕上げとなっています。
●東白楽駅


左(1):東白楽駅渋谷方のホーム端。東横線下り列車の撮影地として鉄道ファンの間では有名な場所。
右(2):ホームの先では優等列車対応通路の台座を設置するためボルトの打ち込みが始まっていた。
東白楽駅も対向式ホーム2面2線で、線路・ホームは高架橋上にあり、駅舎はその下に収容されています。駅の横浜寄りで神奈川県道12号横浜上麻生線と斜めに交差しているため、線路は駅中心付近を頂点とした山型の勾配を描いており、さらに線路部分は全長に渡りプレートガーター橋となった特異な構造となっています。東白楽駅では昨年夏頃より渋谷方に2両分優等列車対応通路を設置する工事が開始されています。昨年8月末の調査時は高架橋床のコンクリートに支柱を固定するためのボルトが打ち込まれており、それから半年余りが経った先月5日時点では支柱がほぼ全て設置され、床面の一部もできあがっていました。通路の設置位置には信号機器のボックスが多数設置されていますが、先月の調査時もそれらはまだ移設されていませんでした。
なお、東白楽駅の渋谷方のホーム端は東横線下り列車のの撮影地として鉄道ファンの間では有名な場所ですが、今回の通路設置により、駅に近い部分は通路の床がアングル内に入ってしまう確率が高くなっています。望遠レンズを使えば回避できる可能性もありますが、ホームが狭いため無理は禁物です。(なお、東急電鉄では駅ホームでの脚立・三脚を使用した撮影や列車に向かってのストロボの発光は禁止する声明を発表しています。)

東白楽駅優等列車対応通路の2014年4月5日の状況。
●反町駅


反町駅横浜方の優等列車対応通路。左(1)が下り線、右(2)が上り線。
反町駅は2004(平成16)年のみなとみらい線直通開始に伴い地下化された駅で、ホームは島式1面2線となっています。トンネルは大都市の地下鉄としては比較的珍しいNATM工法(新オーストリアトンネル工法)を採用しており、線路部分は卵型断面のになっているのが特徴です。渋谷方のホームの先は上下線が独立したトンネル、横浜方は上下線のトンネルの間を切り広げて柱を設置した構造となっています。
副都心線直通開始直後に、この横浜方のホーム端に優等列車対応通路が2両分設置されました。白楽駅と工事時期がほぼ同じでありながら、通路の構造は他の駅と同等の強固なものとなっています。通路の幅は一般のホームと同等の幅が確保されており、線路の勾配も緩いことから、安全設備を整備すれば通常の乗降にも使用できそうですが、隣の横浜駅まで900mしか離れていないため、将来そのような整備がなされる可能性は低いと思われます。
●横浜駅

横浜駅に停車中の東京メトロ10000系(10両)と7000系(8両)
※クリックで拡大(2枚合成)
横浜駅は反町駅と同様にみなとみらい線直通開始に伴い地下化された駅で、島式ホーム1面2線となっています。横浜駅では2008年頃からホーム両端を1両分ずつ延長する工事が行われ、完成後はしばらく線路側に固定式の柵を設置してホームの一部として一般に開放していました。副都心線直通開始直前になるとこの部分は再度封鎖され、固定式の柵を撤去した後、10両編成の運行が開始され使用が再開されています。10両編成の最後尾付近に設置されている車掌用のホーム監視モニターはみなとみらい線内で新規に設置されたものと同じく液晶ディスプレイを用いた薄型となっています。

上り列車は「急行・特急は左側」「各停は右側」として乗車待機列を分けている。
横浜駅は乗り換え路線が多く、混雑が特に激しいことから、副都心線直通開始後は上り列車の乗車待機列を列車種別毎に分離しており、電車のドアに向かって左側が急行・特急列車、右側が各駅停車となっています。
なお、この横浜駅東横線ホームでは武蔵小杉駅と同様に近いうちにホームドアを設置する計画があります。
▼参考
神奈川県 武蔵小杉駅など3駅ホームドアに補助|建通新聞
データから見る東横線・副都心線直通開始の効果
今回はページのスペースに少し余裕がありますので、ここからはおまけとして雑誌記事、鉄道事業者の決算資料、行政機関の発表している統計資料などから拾える範囲で東横線・副都心線直通開始による効果について考察してみたいと思います。
目次 (ダイヤモンド社公式Web) 週刊 ダイヤモンド 2013年 7/20号 [雑誌] (amazon.co.jpへのリンク) |
東横線・副都心線直通に関する経済効果について最も簡潔にまとまっているのは昨年7月20日に発売された週間ダイヤモン「特集・鉄道新発見」の冒頭にある記事「つながる首都圏の鉄道網」です。雑誌をお持ちでない方は、ダイヤモンド社のページでほぼ同等の内容が無料で読めますので以下のリンクよりどうぞ。
▼参考
東横・副都心線乗り入れで 沿線経済に起きた大異変|今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ|ダイヤモンド・オンライン
内容を要約すると
●直通各路線の2013年ゴールデンウィークの乗降客数は副都心線新宿三丁目駅の63%、みなとみらい線元町・中華街駅は31%、東武東上線川越駅は17%それぞれ増加(いずれも前年同期比)
●新宿三丁目駅直結の百貨店伊勢丹新宿店は2013年3月の売上高が20%増、その後も10%増をキープ
●渋谷駅の乗降客数は10%減少
というものになっています。これとは別に日経リサーチによる調査によると、渋谷駅に加えて新宿駅でも利用者が減少したという結果が出ています。このことから、従来は東横線で渋谷駅に到着し下車・乗り換えていた利用者がそのまま副都心線まで乗り通して新宿三丁目駅へ向かうようになったことがわかります。また、遠く離れた複数の路線が直結された結果、直通区間の両端まで達するこれまでにない新しい流動が生まれている模様です。

武蔵小杉駅に停車中の湘南新宿ラインE231系。東横線・副都心線と湘南新宿ラインは横浜~池袋間で競合関係にある。2010年4月3日撮影
続いて、東横線と並行し競合関係にあるJR湘南新宿ラインへの影響を東急電鉄・JR東日本の決算資料から見てまいりたいと思います。なお、本記事作成時点では東急電鉄の2013年度通期(1年間)の決算がまだ発表されていませんので(あと数日で発表されると思われる)、昨年秋に発表済みの第2四半期の資料を基にした内容となります。
東急電鉄の2013年度第2四半期(4~9月)の輸送人員は、東横線と副都心線の直通効果により前年比1.7%増の約5億6千万人となり、過去最高記録を更新する快挙となりました。これにより運賃収入も前年比10億円増の約668億円を記録しましたが、直通運転や10両編成への増車による経費増加により、営業利益は19億円の減益となっています。これを穴埋めしたのが渋谷ヒカリエや武蔵小杉東急スクエアをはじめとする沿線での不動産事業で、グループ全体の営業利益は約33億円の増益となっています。2013年度通期の実績については現時点では未発表であるため不明ですが、同様の傾向になるものと思われます。(第2四半期時点での業績予想でもそう謳われている。)
一方、競合相手であるJR東日本は2013年度第2四半期の決算でも東横線・副都心線直通により在来線の運賃収入が前年比10億円の減収となり、その傾向が通年続いたことから通期では20億円の減収と大きな影響が出ています。数字上はこの減少分がほとんどそのまま東横線に逸走したと見ることができます、JR東日本全体では東北新幹線の320km/h運転開始などの効果によりグループ全体では増益を確保しています。

みなとみらい線の終点茂呂町・中華街駅から徒歩数分のところにある山下公園。2013年1月12日撮影
このほか、財務省横浜財務事務所が元町・中華街駅の利用者の動向から試算したところ、同駅周辺への東横線・副都心線直通による経済効果はおよそ65億円に上るという結果も出ています。現時点では埼玉県方面の観光に与えた効果に関するデータが不足しており、これ以上の考察ができませんが、直通運転開始から1年が経過しましたのでそのあたりのデータもそろそろ充実してくるのではないかと思われます。今後発表されるであろうこれらのデータについても注目したいところです。
▼参考
東急電鉄 2014年3月期 第2四半期決算(投資家様向け説明会)資料(PDF/1.68MB)
東日本旅客鉄道株式会社 2014年3月期決算説明会資料(PDF/1.55MB)
東横線・副都心線直通運転の影響は | コラム | お知らせ | マーケティングリサーチ、コンサルティングの日経リサーチ
経済調査レポート(相互直通運転開始に伴う横浜中華街・元町エリアの動向~鉄道アクセスの向上が及ぼす影響~):財務省関東財務局
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