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品川駅・旧田町車両センター再開発(2014年5~8月取材/その1)
公開日:2014年08月19日20:55

JR東日本では来る2015年3月に開業予定の東北縦貫線(上野東京ライン)の建設と並行して品川駅と隣接する車両基地(旧田町車両センター)の再開発を進めています。5月から8月にかけて現地の様子を複数回再調査してまいりました。今回は先日発表された新駅設置や東京都が検討中の跡地利用の計画にも触れながら2回に分けて再開発地区の現在と今後を見てまいりたいと思います。
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東北縦貫線と品川駅・田町車両センター再開発の概要


左(1):完成した秋葉原駅付近の東北縦貫線の線路。
右(2):同じく完成した御徒町駅付近の線路。2014年5月2日撮影
現在、JR東日本では東海道線東京駅と東北本線上野駅の間を結ぶ新線「東北縦貫線」(愛称:「上野東京ライン」)の建設を進めており、来る2015年3月に開業予定となっています。この東北縦貫線の建設の主たる目的は国内最高レベルとなっている山手線・京浜東北線の混雑緩和ですが、副次的な効果として車両運用の効率化も期待されています。
現在、東海道線は品川駅、東北本線は尾久駅付近にそれぞれ車両基地を持っています。2001(平成13)年に山手線の西半分を経由する湘南新宿ラインの運行が開始され、双方の路線が接続されましたが、車両基地はこのルートからわずかに外れているため、車両運用を完全に一体化することができませんでした。東北縦貫線の建設により、双方の車両基地が直接結ばれることから、今後は東海道線側の車両基地を大幅に整理縮小し、東北本線側の車両基地に大半を統合する計画となっています。東海道線や宇都宮・高崎線は今年3月までに3ドア車両の211系の置き換えが完了しましたが、これも東北縦貫線開業後の車両運用の一体化を目論んだものと見ることができます。

品川駅付近の車両基地再開発エリアの位置
車両基地の統合により生み出される品川駅周辺の土地は約13ヘクタールに上ります。JR東日本ではこの土地を売却し、東北縦貫線の事業費などに充てる予定です。(このため、東北縦貫線は事業費を全額JR東日本が自己負担している。)売却にあたっては山手線・京浜東北線の線路を東側に移設し、同時に新駅を設ける計画となっています(詳細次記事)。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車し、京急線により国際空港である羽田空港まで15分で結ばれています。また、2027年の開通が予定されているリニア中央新幹線は品川駅を東京都心側のターミナルとする計画となっており、完成すれば東京~大阪間が1時間で結ばれ、全国各地へのアクセス性が飛躍的に高まる見込みです。
東京都ではこれに合わせる形で「東京サウスゲート計画」の名の下、車両基地を含めた品川地区全体の再開発計画を始動させています(詳細後述)。2011(平成23)年12月には、この再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に税率軽減や入国審査の簡素化などを図るもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。
品川駅7・8番線改築と旧車両基地更地化が進行中(5月2日・6月22日取材)

着工前の品川駅の配線概略図
再開発着工前の品川駅は、既に運行を終了した客車列車に最適化された設備となっており、機関車付け替えのための短い留置線や交差箇所全方向を結ぶ分岐器など極めて複雑な構内配線となっていました。また、東海道線の上下線の間には、「臨時ホーム」と称する2面4線の島式ホームがありました。この臨時ホームは新幹線や高速道路が未整備だった時代に、帰省シーズンなどに全国各地へ向かう臨時列車が発着していたもので、現在はほとんど使われていませんでした。このホームはその目的から東京方面からは直接進入できない配線となっており、そのままでは東北縦貫線の折り返しには使用できません。そこで、2009(平成21)年より東海道線ホーム・臨時ホームの形状を変更し、東京方面から進入可能にするための改良工事が開始されました。


左(1):改良工事が完成した東海道線下り11・12番線ホーム。2012年9月23日撮影
右(2):2013年11月23・24日の線路切替工事の様子。
改良工事は東海道線ホームの東京寄りを東海道線下り本線側にカーブさせるもので、合わせて東京寄りの車両基地の線路の再配置、横浜寄りの横須賀線との連絡線上にあった特殊分岐器の普通分岐器への交換などが実施されています。工事は順調に進んでおり、臨時ホーム10番線が2011(平成23)年秋、東海道線下りホーム(11・12番線)が2012年秋にそれぞれ完成しました。さらに、昨年11月23・24日には東海道線東京~横浜間を丸1日運休して線路切替工事が実施され、東京寄りで建設を進めていた新しい車両基地と品川駅臨時ホーム9番線の使用が開始されました。

現在の品川駅の配線概略図
以後品川駅では臨時ホーム7・8番線が使用停止となり、これまでと同様にホームの東京寄りを東海道線下り本線側に曲げる工事が進められています。また、使用を停止した旧車両基地は線路の取り外しや検修庫の取り壊しなど再開発に向けた更地化工事が進められています。以下、5月上旬、6月下旬、8月中旬に調査した7・8番線ホームと旧車両基地の様子です。
●品川駅臨時ホーム7・8番線



改築中の臨時ホーム7・8番線東京方の端。左上(1枚目)が5月2日、右上(2枚目)が6月22日、下(3枚目)が8月16日で、新しいホームの建設が着々と進む。
臨時ホーム7・8番線の取り壊し作業は昨年11月の使用停止直後から開始され、今年3月以降は新しいホーム本体の建設が急ピッチで進められています。東京寄りはは9・10番線と同様に東海道線下り線側に曲がった形状となっています。左は5月2日、右は6月22日に撮影した東京寄りのホームの様子で、この2カ月弱の間にホーム床面の設置がほぼ完了し、屋根の骨組みの設置が開始されています。
※この先画像が16枚(919KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。



北通路の階段は完全に撤去され、新しい階段の基礎を建設中。左が5月2日、右が6月22日、下が8月16日。
北改札につながる階段は9・10番線とは異なり取り付け位置は大幅な変化はありませんが、ホームがカーブするのに合わせて向きを変更する必要があるため、一旦全て取り壊されています。階段を撤去した跡地は盛土でできたホームの台座を取り壊し、新しい位置にコンクリートの台座を設置した後階段本体を再設置する工事が進められています。


左(1):臨時ホーム9・10番線の端から東京方面を見る。左の7・8番線のホーム端はやや先にある。
右(2):同じ場所の8月16日の様子。8番線の新しい軌道が作りかけの分岐器と接続されたのがわかる。
7・8番線東京寄りのホーム端は、完成済みの9・10番線よりもやや東京寄りに進んだ地点にできる模様です。9番線と新車両基地の間には作りかけの分岐器が2箇所ありましたが、8番線では7月以降軌道敷設が行われ、このうち1箇所と接続されました。


左(1):ホームが取り壊されて露わになった旧地下通路の階段。
右(2):9番線と8番線の接近部分。8番線はホームが削られており、地下通路と交差する部分は床面が補強されている。
現在の品川駅は駅の中央に東西自由通路が通り、その両側に北改札・南改札2本の改札内通路(いずれも橋上駅舎)が付く形状になっています。
港南口にあった東海道新幹線車両基地(東京第一車両所)・貨物駅の再開発の一環で、1998(平成10)年に東西自由通路ができる以前は北改札口側の橋上駅舎は存在せず、代わりにその真下にあった地下通路で港南口の駅舎に出るというレイアウトになっていました。元々埋立地で標高が低い土地柄故にこの地下通路は大雨になるとすぐに冠水し、これが原因となって列車の運行が停止することが台風シーズンの風物詩となっていました。
この地下通路は旅客用としては使命を終えましたが、現在も通路本体や各ホームに通じる開口部の一部は残されており、電力・通信・水道などの配管の敷設スペースやエキュート品川など駅構内の商業施設で販売する商品の搬入ルートとして使用されています。臨時ホーム9・10番線ホーム上には商品の搬入に使用する荷物用エレベータ(写真)があり、ここから段ボール箱を満載した台車が出入りしているのがしばしば見受けられます。
今回、9番線と接近するため8番線のホーム中央付近の幅が縮小されることになり、ホームが一旦取り壊された結果、この地下通路に通じていた階段が露わになりました。8番線はホーム先端が削られて線路がホーム内側に移動することになりますが、この部分の地下通路の天井は上に線路を敷設して列車を走行させることを想定しておらず、強度が不足してしまいます。このため、地下通路の天井の一部を補強しており、その部分は路盤の色が異なっているのがわかります。(補強箇所の説明入りの画像)

7・8番線ホーム中央の階段は幅が狭くなり、エスカレータピットが設置されている。
臨時ホームは7・8番線、9・10番線ともにこれまでエスカレータやエレベータなどが設置されておらず、車椅子などでの利用が困難でした。9・10番線については昨年までに行われた工事でエスカレータ・エレベータが新設されており、現在改修が進められている7・8番線についても同様の工事が進められています。ホーム中央付近にあった階段は7番線側の半分が解体されており、ホーム床面が掘り込まれてエスカレータ用のコンクリートピットが新設されています。



7・8番線横浜寄りのホーム端も改築が進行中。左上が5月2日、右上が6月22日、下が8月16日で、ホーム台座はほぼ完成し、屋根の設置が進む。
横浜寄りも9・10番線と同様に桁式ホームへの改築が行われていますが、9・10番線とは異なり東京寄りのホーム端の位置がほとんど変わらないため、従来とほぼ同じ寸法となっています。9・10・11・12番線と同様、こちら側のホーム端に橋上駅舎に通じるエレベータと階段が新設されることになっており、橋上駅舎の下には取り付けに必要なコンクリート製のピットが新設されています。また、6月より橋上駅舎側はエレベータ・階段の予定地にあったコインロッカーが撤去され、開口部を作る工事が行われています。


同じ部分を別角度から。エレベータのピットが設置されている。

7・8番線横浜寄りのホーム端真上の通路はコインロッカーが一部撤去され、エスカレータ・エレベータの開口部を作る工事が行われている。


左(1):臨時ホーム9・10番線の横浜寄りの端から改築中の7・8番線のホーム端を見る。
右(2):ホームの先は7・8番線が1本に合流したあと設置済みのシーサスに接続される。
横浜方のホームの先は7・8番線が1本に合流した後、昨年11月に設置された9番線と東海道線上下線を接続している量渡り分岐器(シーサスクロッシング)に接続されます。以前はシーサスの一部を両渡り交差分岐器(ダブルスリップスイッチ=DSS)とすることで7~10番線の分岐を1箇所にまとめていましたが、DSSはメンテナンスに非常に手間がかかることから、新しい分岐器では排除されています。
続く「その2」の記事では旧車両基地の様子と今後の品川駅構内の配線の変化について、そして旧車両基地を含めた今後の品川地区全体の再開発の計画について見てまいります。
「その2」の記事へ→
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