常磐線日暮里駅ホーム拡幅工事(2013年8・11月・2014年5月取材)

日暮里駅常磐線ホーム。左側が拡幅された上り線(3番線)。

昨年10月に日暮里駅の常磐線ホーム3・4番線で混雑緩和のためのホーム拡幅工事が実施されました。当ブログでは工事前の昨年4月に調査した現地の様子をお伝えしましたが、この度拡幅工事後の様子についても再調査を完了しましたので、改めて現地の様子をお伝えいたします。

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日暮里駅常磐線ホーム拡幅工事(2013年4月29日取材)(2013年7月2日作成)

日暮里駅常磐線ホーム拡幅の概要


 日暮里駅はJR山手線・京浜東北線・常磐線・京成本線・日暮里舎人ライナーの5路線が乗り入れる荒川区最大の交通の要衝です。乗降客数はJR東日本と京成が約10万人、日暮里舎人ライナーが約4万人となっていますが、JRに関しては路線間の乗り継ぎが改札口を経由せずカウントされないため、実際の利用者数はさらに多くなっています。また、常磐線と京成線のターミナル駅である上野駅は乗り換えでの移動距離が長く利便性に難があるため、日暮里駅で乗り換える利用者も多く、東京都心側の実質的なターミナル駅として機能しています。
 日暮里駅のホームはいずれの路線も全体的に幅が狭く、常磐線ホーム(3・4番線)も最大幅が6.4mとなっていました。日暮里駅は前述の乗り換え客の多さに対応するため、各ホーム間に4本の跨線橋が掛けられており、ホーム上にも階段やエスカレータが多数用意されていますが、常磐線に関しては最大15両編成の乗降客数にホームの容量が全く追い付いておらず、階段やエスカレータが却って混雑に拍車をかける状態と化していました。

3階に移設後の京成線下りホーム。一般列車とスカイライナーでホームが分離されている。 日暮里駅常磐線・京成線ホームの断面図。常磐線上り線を京成旧下り線跡地に移設し、ホームを拡幅する。
左:3階に移設後の京成線下りホーム。一般列車とスカイライナーでホームが分離されている。2010年10月10日撮影
右:日暮里駅常磐線・京成線ホームの断面図。常磐線上り線を京成旧下り線跡地に移設し、ホームを拡幅する。


 一方、常磐線ホームに隣接している京成線ホームも以前から混雑が激しかったため、2010年の成田スカイアクセス線開業に合わせて、下り線ホームが3階に移設されました。これにより、以前からある1階ホームは上り線専用となりました。1階ホームの旧京成下り線跡地は、その後特に施設の建設などは行われず数年間空き地のままとなっていましたが、その後この空地を利用して常磐線上り線(3番線)を移設し、ホームを拡幅することが発表されました。常磐線のホーム拡幅により、同ホームの混雑緩和、安全性の向上が図られるほか、来年予定されている「上野東京ライン」(東北縦貫線)の開業による上り列車の利用者の増加にも対応可能となります。

線路移設・ホーム拡幅部分の位置
線路移設・ホーム拡幅部分の位置

 線路が移設される区間は全長が約423mで、上野方はホーム端からわずかに駅中心側に入った地点から始まり、取手方はホーム先端から100mほど進んだ地点で終了します。上野方がホーム端まで拡幅されないのは京成線の上り線と旧下り線が一体構造の高架橋となっており、旧下り線側のみを撤去することが困難だったためです。一方、ホーム中央から取手方は京成旧下り線跡地のほぼ全てを常磐線の線路用地に転用可能となっており、最大で2.4mホームが拡幅されることとされました。

ホーム拡幅直前~現在の様子

 常磐線日暮里駅のホーム拡幅工事は2012年より開始され、最初に下の上り線の線路下に拡幅後のホームを支える支柱の基礎を埋め込む工事が行われました。この際、工事の度にレールやまくらぎを撤去・再設置するという作業を避けるため、基礎を埋め込む部分を避けた井桁型の特殊なPCまくらぎが一時的に使用されました。基礎の埋め込み完了後は常磐線上り線の線路を取り囲むように設置されていた古レール製の屋根をホーム内に支柱を持つ新しい屋根に改築する工事や、新しい上り線の予定地に建っていた跨線橋の支柱を撤去する工事(後述)が行われ、昨年10月20日に実際に上り線の線路緒を移設してホームを拡幅する工事が実施されました。
 ここから先は昨年8月に調査したホーム拡幅直前の様子、11月に調査した拡幅直後の様子、今年5月に調査した拡幅から半年後の様子を順に見てまいりたいと思います。

●2013年8月4日(拡幅直前)
ホーム中央付近。新しい線路の予定地は古い屋根の基礎が撤去され大量のバラストが散布された。
ホーム中央付近。新しい線路の予定地は古い屋根の基礎が撤去され大量のバラストが散布された。

 昨年4月の調査時(前回の記事の調査時)は、新上り線の予定地に残存していた古レール製の屋根の基礎を取り壊す工事が行われていましたが、この作業は夏前には完了しました。8月に入ると新上り線の予定地に大量のバラスト(砂利)が搬入され、新上り線の線形に合わせて積み上げられました。上の写真は取手方の橋上駅舎の真下で、袋詰めされたバラストがいくつも並べられています。画面中央付近に数本地面から白い杭のようなものが生えていますが、これが移設後の新上り線の位置を表しているようです。

紅葉坂跨線人道橋の改修の概要
紅葉坂跨線人道橋の改修の概要

 ホーム中央付近では荒川区が管理している紅葉坂跨線人道橋(歩道)が交差しています。この跨線橋は線路間に細い鉄柱でできた橋脚が何本も立つ構造になっており、常磐線上り線と京成線ホームの間にも1箇所設置されていました。(P9橋脚)常磐線上り線の移設にあたっては予定地と重なるこのP9橋脚を撤去する必要がありましたが、常磐線ホームにも京成線ホームともに代わりの橋脚を立てるスペースがありませんでした。そこで、常磐線ホーム上にある門型のP8橋脚の基礎に両側の柱同士をつなぐコンクリートを追加し、跨線橋の長さ方向に対する強度を確保することとしました。また、常磐線上り線の真下には現在は使用していない荷物運搬用のトンネルがあったことから、P8橋脚の基礎をこのトンネルと連結し、さらに強度アップを図ることとしました。

紅葉坂跨線人道橋は新しい線路と重なる支柱が撤去された。 同じ場所から上野方面を見る。線路移設後に使用する新しい架線も設置済。
左:紅葉坂跨線人道橋は新しい線路と重なる支柱が撤去された。(同じ場所の2013年4月29日の様子
右:同じ場所から上野方面を見る。線路移設後に使用する新しい架線も設置済。


 P9橋脚の撤去に当たっては、その真上で分割されていた主桁(床面を支える鉄骨)を完全に連結する必要があり、昨年春はその連結作業が行われていました。8月の調査時には主桁の連結作業は完了し、P9橋脚は撤去されました。橋脚があった場所は主桁が一部交換されており、ボルトでつないだ痕が確認できます。交換後の主桁には新上り線の架線支持金具が設置されており、8月の調査時には新上り線用の架線が設置済みとなっていました。
 紅葉橋から上野方は昨年4月の調査時に屋根の改築がおおむね完了しており、8月の調査時はバラスト散布と河川が設置された以外は大きな変化はありませんでした。

取手方のホーム端付近もケーブルトラフが京成線側に移設され、線路の移設スペースができ上がった。
取手方のホーム端付近もケーブルトラフが京成線側に移設され、線路の移設スペースができ上がった。

 ホームの取手方の端付近は線路の移設量がわずかであるため、見た目ではあまり変化はありませんが、線路脇のケーブルトラフが新上り線に重ならない位置に移設されるなどの変化があります。

 この約2ヵ月後の10月20日(日)に、実際に線路を移設してホームを拡幅する工事が実施されました。当日は始発から17:40頃まで常磐線上野~北千住間が運休となり、特急列車を含め北千住駅での折り返し運転が実施されました。この際、北千住駅は折り返しができる線路が中線の1本しかなく、全ての列車が折り返すことはできないため、一部の列車は普段貨物列車が使用している田端信号場まで回送し、折り返し運転が実施されました。運休区間の中にある三河島・南千住の両駅については近隣を並行するつくばエクスプレス、京成、東京メトロ(千代田線)による振替輸送が実施されたほか、早朝についてはバスによる代行輸送が実施されました。



●2013年11月24日(拡幅直後)
拡幅された日暮里駅常磐線ホーム。上り線側は階段からホーム端まで十分な滞留スペースが生み出された。
拡幅された日暮里駅常磐線ホーム。上り線側は階段からホーム端まで十分な滞留スペースが生み出された。 ※クリックで拡大(1000×750px/101KB)

 拡幅工事から1ヵ月後の11月24日に再度現地を調査しました。ホームの拡幅幅は最も大きい取手方の橋上駅舎下(エレベータ付近)で約2.4mとなっています。上り線側は従来と比べて階段やエレベータからホーム端までの距離が大幅に長くなり、乗降客の十分な滞留スペースができたことがわかります。拡幅工事後間もないため、この時点では上り線側のホームの床面は全て仮設となっており、全体がゴムマットで覆われていました。また、照明についても拡幅前の位置(ホーム内側に寄った場所)のままになっていましたが、拡幅後のホーム先端に沿う形で新しいケーブルラックの取り付けが開始されていました。

ホーム中央付近の拡幅後 ホーム中央付近の拡幅前
ホーム中央付近の拡幅後(左)と拡幅前(右・2013年4月29日撮影)。

 上の写真は先ほどのエレベータの場所からやや取手方に進んだ部分の拡幅前後の比較です。11月の調査は午前中だったため、下り列車の乗車待ちの列がなく混雑した状態が見られませんでしたが、4月調査時に撮影したホーム端まで列が達している写真と並べると、どの程度混雑が緩和されるかがイメージできるのではないかと思います。

上野方から3番線に到着する上り列車を見る。新上り線は跨線橋の支柱の跡に敷設された。 ホーム上野方の屋根支柱と新上り線の位置関係。
左:上野方から3番線に到着する上り列車を見る。新上り線は跨線橋の支柱の跡に敷設された。
右:ホーム上野方の屋根支柱と新上り線の位置関係。


 こちらは上野方の拡幅区間終了地点付近の様子です。やはりこちらも上り線側でホームが広くなり、エスカレータからホーム先端の間のの距離が十分に確保されたことが確認できます。左の写真でE531系電車の2両目付近の上に架かっているのが紅葉橋で、撤去されたP9橋脚の跡地に上り線の線路が移設されたことがわかります。右の写真は同じ場所で振り返って上野方面を見たところで、上り線が京成線側に移設されたことにより、新設された屋根の支柱に近づいたことがわかります。

下御隠殿橋の下から取手方面を見る。この付近のホーム拡幅量は小さい。 同じ場所からホーム中心方向を見る。新たに85km/hの速度制限が設けられた。
左:下御隠殿橋の下から取手方面を見る。この付近のホーム拡幅量は小さい。
右:同じ場所からホーム中心方向を見る。新たに85km/hの速度制限が設けられた。


 取手方のホーム端は既存の線路に合流するため拡幅幅は小さくなっていますが、それでも従来と比べ50cmほどは広くなっています。ホーム中央付近で可能な限り拡幅幅を確保するため、この付近の上り線はやや急なS字カーブを挿入しており、新たに85km/hの速度制限が設けられています。ただし、日暮里~三河島間は全線に渡り半径300~400m前後の急カーブとなっており、元々高速では走行できない線形であるため、この速度制限による所要時間の増大は無いと思われます。

●2014年5月6日(拡幅半年後)
ホーム先端部分のゴムマットが滑り止めのタイルに置き換えられた。 京成線上り0番線ホームから見た常磐線ホーム。
左:ホーム先端部分のゴムマットが滑り止めのタイルに置き換えられた。
右:京成線上り0番線ホームから見た常磐線ホーム。


 拡幅から2ヶ月が経った今年ゴールデンウィーク最終日5月6日の様子です。仮設だったホームの本設化が進んでおり、京成線上り0番線ホームから見ると拡幅区間全体に渡り桁式ホームの構築が完了していることが確認できます。取手方の半分程度はホーム先端の滑り止め付きタイルと内方線付き点状ブロックの取り付けが行われており、天井の照明器具も拡幅後のホーム形状に合わせて移設が完了していました。

 前記したとおり、今回の常磐線日暮里駅のホーム拡幅は来る2015年3月に予定されている「上野東京ライン」の開通による東京・品川方面への直通運転をにらんだものとなっています。具体的な直通本数に関しては現在もまだ発表されていませんが、特急列車のほとんどが通過している日暮里駅のホーム拡幅の理由として上野東京ラインが名指しで取り上げられていることから、普通列車を含めある程度の本数が直通することが予想されます。新線区間を挟んだ反対側の東海道線新橋駅でも同様にホーム拡幅が実施されており、今後どのような運行形態となるのか大いに注目されます。

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日暮里駅常磐線ホーム拡幅工事(2013年4月29日取材)(2013年7月2日作成)

▼参考
日暮里駅常磐線ホーム拡幅工事 - 日本鉄道施設協会誌 2012年9月号
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