カテゴリ:鉄道:建設・工事
東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅改良工事(2014年2月1日取材)
公開日:2014年07月01日17:02

久しぶりの新規項目です。
東京メトロ丸ノ内分岐線の方南町駅では、バリアフリー化と丸ノ内線本線の6両編成の直通を可能にするための改良工事が現在行われています。今年2月にこの工事について現地を調査してまいりましたので、その様子をお伝えいたします。
丸ノ内分岐線と方南町駅の概要


左:御茶ノ水駅付近で神田川を渡る丸ノ内線。2007年4月1日撮影
右:中野検車区の入出庫を兼ねて設定されている丸ノ内線本線と分岐線の直通電車。2006年11月30日撮影
東京メトロ丸ノ内線は豊島区の池袋駅を起点に、東京都心部をU字型に結び、杉並区の荻窪駅に至る全長24.2kmの「本線」と中野坂上駅から分岐し、杉並区の方南町駅に至る全長3.2kmの「分岐線」により構成される地下鉄路線です。
本線区間の中央部は、大手町、銀座、霞が関など日本の行政・商業のまさに中心を貫いており、利用者が非常に多いことから朝夕のラッシュ時はJR中央線と並び最短で1分50秒間隔で電車が運行される日本で最大の過密ダイヤ路線となっています。一方、本線の新宿~荻窪間と分岐線中野坂上~方南町間は、1960年代初頭に「荻窪線」という名称で開業した新しい区間で、沿線は住宅地となっています。本線と分岐線の運行は基本的に分離されており、編成両数も本線は6両編成、利用者の少ない分岐線は3両編成というように異なっています。なお、分岐線の途中にある中野富士見町駅には車両基地(中野検車区)が併設されていることから、朝夕のラッシュ時には入出庫を兼ねた本線と分岐線の直通電車(6両)が多数運行されています。
丸ノ内分岐線の終点にある方南町(ほうなんちょう)駅は方南通り(東京都道14号新宿国立線)と環状7号線(東京都道318号線)が交差する方南町交差点の地下にあります。交差点は環状7号線の渋滞防止のため、環状7号線側が下を通るアンダーパス構造になっており、方南町駅のホームは地下2階にあります。ホームは島式1面2線となっており、中野坂上寄りの地下1階と終端側の車止めの先に改札口と地上出入口があります。
このホームの長さは現状でも110mほどありますが、停車時のオーバーランに対する余裕を考慮すると6両編成(108m)の乗り入れにはわずかに足りないため、方南町駅には終日3両編成の分岐線専用編成のみが乗り入れています。また、駅の両端にある地上出入口はいずれも階段しか無いため、体が不自由な利用者や車いすでの利用が極めて困難となっています。昨年6月にはベビーカーや大きな荷物を持っての階段の登り降りをサポートするボランティア「おろすんジャー」が登場したことで話題となりました。このような方南町駅のバリアフリー非対応は周辺自治体や住民の間でも問題視されており、ここ数年エレベータの設置を求める署名が杉並区や東京メトロに対し相次いで提出されています。
これを受け、東京メトロでは2012年度の事業計画において方南町駅の大規模改良に着手することを発表しました。改良工事の内容は以下の通りとなっています。

方南町駅改良工事の概要と新設される駅ビルの位置図
(C)国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの画像を元に作成
(1)ホームを6両編成対応に延伸
終端側に約18mトンネルを増築し、改札口・事務室・トイレなどを移設した上で、ホームを6両編成対応に延伸する。これにより中野坂上駅から先新宿方面への直通運転が可能となる。
(2)駅ビルと地上へのバリアフリー移動経路を新設
駅南西の環状7号線沿いで買収した土地に駅ビルを新設し、増築したトンネルと地下通路で接続する。駅ビル内にはエレベータとエスカレータを設置し、駅から地上へのバリアフリー移動経路を新設する。
工事は昨年11月より開始されており、2017(平成29)年3月の完成が予定されています。総工費は約50億円の予定です。
現在の状況(2014年2月1日取材)


左:方南町駅のホーム終端側は車止めまで1.5両分ほど余裕がある。
右:中野坂上駅側も1両分ほど余裕がある。
前記した通り、方南町駅のホームは現状でも110mほどの長さがあります。しかし、停車時のオーバーランによる車止めへの衝突に対する余裕(10m程度)を考慮すると、本線で運用されている18m車両6両編成(108m)の乗り入れにはわずかに足りず、今日に至るまで3両編成の分岐線専用編成のみが運行されています。このため、中野坂上駅から先の本線への直通運転も一切行われていません。
なお、分岐線は本線に先駆けて2004(平成16)年よりATO(自動列車運転装置)を用いたワンマン運転を行っています。列車の停止位置はホーム両端にある改札口双方への利便性を考慮してホーム中央付近に設定されており、停止位置の3両分のみにホームドア(可動式ホーム柵)が設置されています。これ以外の部分は乗降には使用しないため、固定式の金属製の柵が設置されています。

駅の空調整備により貴重な存在になりつつある天井扇風機。
方南町駅は最近まで駅構内に一切空調設備が設置されておらず、トンネル天井に設置された撹拌用の扇風機と地上に通じる縦穴のみを用いた自然換気となっていました。現在は火災対策として天井に排煙装置が埋め込まれましたが、空調に関してはホーム上に申し訳程度の床置きエアコンが設置されたのみで、現在も本格的な空調設備はありません。
新しく建設される駅ビルに通じる地下通路は、通路の床下にも空間が設けられる計画となっています。このことから、駅ビルに空調の室外機を置き、地下通路下のダクトを経由で駅本体と接続して、本格的な空調設備を設置することも考えられます。今や骨董品となった天井の扇風機が見られるのもあとわずかとなりそうです。



上:方南町駅終端側の改札口。売店などは無く、簡素な設備となっている。
左下:通路をさらに後ろに下がったところ。左側には電気室、右側には駅事務室がある。
右下:同じ場所で振り返って1番出入口方向を見る。新しい改札口はこの付近に設置される。
ホーム終端側は同一平面上が改札口になっており、その先はトンネル中央が通路で、その両側に駅事務室、トイレ、電気室などが並ぶ配置となっています。通路部分は真上に環状7号線のアンダーパスがあるため天井が低く、拡張の余地も無いためやむを得ず剥き出しの状態で電気配線のパイプが張り巡らされており、かなり古めかしい印象を受けます。突き当たりを右に曲がると方南町交差点の北西に通じる1番出入口の階段があります。
計画では突き当たりのさらに先にトンネルを増築した上で、駅事務室やトイレをそこに移設し、改札口を1番出入口の階段の直前まで前進させます。そして車止めを新しい改札口の直前まで移設し、ホームを6両編成の乗り入れが可能な長さに延長することになっています。従って、改良工事の完成後は現在の改札口の場所はホームの一部、両側の事務室や電気室がある場所は線路になります。


左:地上にある方南町交差点。新しい駅ビルは左奥の白い矢印を付けた空地に建設される。
右:駅ビル予定地に掲出されている建築計画のお知らせ。
※クリックで拡大(1200×900px/108KB)
新しい駅ビルは方南町交差点北西の環状7号線沿い(交差点から2つ目の区画)に建設されます。今年2月の調査時にはすでに空き地の状態で土地は確保されており、道路側には建築計画のお知らせが掲出されていました。建物の名称は「方南町駅ビル(仮称)」で、地上3階・地下2階建て、建築主は東京地下鉄株式会社、設計主はメトロ開発株式会社となっています。駅ビル内に設けられる方南町駅の出入口にはエレベータとエスカレータが設置され、幅2mの地下通路で駅と接続されます。
方南町駅の改良工事は2月の訪問時点でトンネルの掘削に向けた杭打ちや路面覆工などの工事が開始されており、現在は本格的な掘削に移っているものと思われます。丸ノ内分岐線では、2つ隣の中野新橋駅でも避難通路の増設とエレベータの新設によるバリアフリー化の工事が進行しており、まもなく完成を迎える予定です。2017(平成29)年の方南町駅改良工事完成後は現在新宿止まりとなっている本線の列車が分岐線への直通運転を開始する予定となっており、駅のバリアフリー化と合わせて丸ノ内分岐線の利便性は現在より大幅に向上することが期待されます。
なお、東京メトロではこの他に千代田線北綾瀬駅についてもホームを10両対応に延長し、本線との直通運転を拡大する計画を発表しています。さらに、日比谷線の20m車両化、東西線の混雑緩和に向けた木場駅の大規模改良など、新線建設に匹敵する大型の設備投資を次々と開始しています。これらについても追って調査する予定ですのでしばらくお待ちください。
▼参考
事業計画|東京メトロ
→平成24年度(第9期)分より方南町駅改良工事について言及あり
東京メトログループ中期経営計画「東京メトロプラン2015~さらなる安心・成長・挑戦~」(PDF/6.68MB)
→17ページに方南町駅改良工事について言及あり
東京メトロ方南町駅改良に伴う土木工事の説明会が行われました(資料掲載) | 富田たく公式WEBサイト
→杉並区議会議員のブログ。2013年10月に実施された方南町駅改良工事の住民説明会の資料など。
方南町を愛する戦士。「ベビーカーおろすんジャー」を直撃! | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
Twitter ベビーカーおろすんジャー (babycarorosunja)
→ベビーカー出の登り降りのサポートボランティア「おろすんジャー」ご本人のTwitterアカウント
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