カテゴリ:鉄道:建設・工事
新京成新鎌ヶ谷駅周辺の高架化(2014年7月6日取材)
公開日:2014年09月30日22:41

新京成電鉄の新鎌ヶ谷駅周辺では現在高架化工事が進められています。今年2月には北初富駅付近で、5月には初富駅付近で仮線切替が実施されるなど進展がありましたので、7月に再調査をしてまいりました。今回はこの2駅を中心に現在の様子をお伝えします。
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新京成新鎌ヶ谷駅周辺の高架化(2012年10月20日取材)(2012年11月19日作成)
新京成線連続立体交差事業の概要
新京成線の路線のほぼ中央に位置する新鎌ヶ谷駅は北総線・東武野田線と接続する交通の要衝となっています。1999(平成11)年の東武野田線の新鎌ヶ谷駅開設以降は、駅周辺では鎌ヶ谷市・独立行政法人都市再生機構(UR)が中心となった大規模な区画整理が進められており、2004(平成16)年には駅前にイオンのショッピングモールが完成するなど鎌ヶ谷市の拠点としての整備が急速に完成しつつあります。また、2010(平成22)年には北総線を経由して成田空港に至る成田スカイアクセス線(成田新高速鉄道)が開業し、成田空港・東京都心双方への所要時間短縮が実現するなど、引き続き交通網の整備も進んでいます。
新鎌ヶ谷駅付近の新京成線は地上を走っており、急なS字カーブを描きながら千葉ニュータウンと松戸市を結ぶ国道464号と2度にわたり踏切で交差しています。この2か所の踏切と初富駅南側で交差する県道57号鎌ヶ谷松戸線の踏切は、いずれも1日当たりの自動車交通遮断量が5~7万台時に達する「ボトルネック踏切」となっており、渋滞の原因となっています。現在、千葉ニュータウンの東端から成田市の間では成田スカイアクセス線に並行する形で「北千葉道路」の建設が進められており、これと接続する国道464号の交通量は今後増大することが予想されています。このため、新京成線鎌ヶ谷大仏~くぬぎ山間3.3kmのを高架化し、上記3か所を含む10か所の踏切を解消することになり、1999(平成11)年に都市計画決定がなされ、2002(平成14)年より工事が開始されています。総工費は約350億円で、国・千葉県・鎌ヶ谷市が約309億円、新京成電鉄が約41億円を負担することになっています。完成は当初、2010年とされていましたが、後述する通り北初富駅付近で用地買収が非常に難航したため、2017(平成29)年に大幅に延期されています。(このため、総工費も変更される可能性が高い。)
なお、新鎌ヶ谷以南で新京成線と一部並行している東武野田線についても同様の理由から高架化が行われており、こちらは2005(平成17)年までに側道整備を含めすべての事業が完了しています。東武野田線は線路が単線だったことから複線化も同時に行われており、車両の高性能化とあわせてスピードアップが実現しました。
初富駅の下り線・北初富駅の上下線が仮線化
2002年に着工した新京成線の高架化工事ですが、順調に工事が進んだのは周辺の区画整理と同時並行で行われた新鎌ヶ谷駅付近のみで、それ以外の区間については用地買収の難航などにより着工が大幅に遅れました。今回は仮線切り替えが完了した初富駅と北初富駅付近を中心に7月6日(日)に調査しましたので、その様子をお届けします。
●初富駅

下り線も仮ホームに切り替えられた初富駅
高架化工事着工前の初富駅は島式ホーム1面2線で、駅舎は京成津田沼寄りの線路東側にあり、構内踏切を経由してホーム端と接続されていました。初富駅付近は2013年2月3日に上り線(2番線:松戸方面行き)、今年5月18日に下り線(1番線:京成津田沼方面行き)がそれぞれ西側の仮線に切り替えられ、高架橋の本体工事に向けた準備が進んでいます。

現在の初富駅の施設配置
初富駅の仮設ホームは対向式ホーム2面2線となっています。先に使用を開始した仮上り線ホームと駅舎を結ぶ通路は、線路東側(図では下側)を通り、ホーム中央付近でS字に曲がった後、地下に降りて線路の下をくぐり、ホームにつながるというやや複雑なルートとなっています。一方、今年5月に使用を開始した仮下り線ホームは旧ホームの一部を駅舎へつながる通路として使用していますが、今週末に新たに線路東側に仮設駅舎が設けられるため、この部分は使用停止になる予定です。(後述)

A:初富1号踏切
踏切内から京成津田沼方面を見る。左側が旧下り線跡地。右側ではイトーヨーカドーが再建された。
京成津田沼側の工事区間終了地点は初富駅から鎌ヶ谷大仏駅方面に3分の1程度進んだところ(初富3号踏切付近)にあるため、初富駅の先もしばらく仮線化された区間が続きます。また、工事区間の終点付近では線路沿いに大規模な作業基地が設けられています。仮線化により使用を終了した旧下り線は今回訪問時点ですべて撤去されており、跡地では高架橋の本体工事着工に向けた整地作業などが進んでいました。初富駅を出てすぐのところで線路が南から東へ大きくカーブしますが、この部分は内側に大きく土地が確保されており、将来的にカーブを延長して半径を大きくし、通過速度を向上することが企図されている模様です。
なお、2012年の調査時にカーブ外側にあったイトーヨーカドー系列の商業施設が老朽化のため取り壊されたのを確認しました。その後ほぼ同じ形状で新しい建物が建設され、「食品館イトーヨーカドー鎌ヶ谷店」をキーテナントとする「ショッピングプラザ鎌ヶ谷」が2013年11月にオープンしています。新しい建物の3階には鎌ヶ谷市が運営する540席の多目的ホール「きらり鎌ヶ谷市民会館(きらりホール)」も併設されています。


B:初富駅の現在の駅舎
左(1):初富1号踏切から見た仮ホームと現在の駅舎(同じ場所の2012年10月20日の様子)
右(2):現在の駅舎と仮下り線ホームをつなぐ通路は旧ホームの一部を流用して設置している。
初富駅構内についても旧下り線の軌道はすべて撤去済みとなっており、旧ホームについても仮下り線ホームの入口通路となっている京成津田沼寄りの50mほどを除き取り壊しが完了しています。跡地には地面に鉄板が敷き詰められており、初富1号踏切側から大型重機を乗り入れて作業を行っている模様です。


C:現在の駅舎と仮上りホームをつなぐ通路
左(1):現駅舎と仮上りホームをつなぐ通路の地上部分。幅は1.5m程と狭い。
右(2):線路下をくぐる部分。右側の壁には仮下りホームに通じる開口部が準備されている(後述)。
2013年2月に使用を開始した仮上り線ホームと駅舎を結ぶ通路は線路東側に設けられています。地上を通る部分は旧下り線と住宅に挟まれたわずかな空間に設置されたため、幅は1.5mほどしかなく通行人同士が辛うじてすれ違えるといった状況です。駅の中央付近まで進むと、通路は3回折れ曲がり線路の下をくぐる地下通路に接続しています。通路の屈曲部分は反対側から人が来ているのを確認できるよう壁の一部が透明になっています。線路の下をくぐる地下通路は幅2mほどのコンクリート製のトンネルになっており、高架化完成までの数年しか使用しないことから内装類は最低限の整備となっています。地下へ降りる部分は駅舎側・ホーム側ともに階段とエレベータが設置されています。


D:仮駅舎と地下通路から下り線ホームを結ぶ階段の工事
左(1):仮下り線ホーム裏では地下通路に通じる新しい階段を設置する工事が行われている。
右(2):仮下り線ホーム上から地下通路へ下りる階段は10月5日より使用開始となる。
7月訪問時には取り壊しが完了した旧ホーム跡地で仮下り線ホームと地下通路を結ぶ階段を設置する工事が行われていました。仮下り線ホーム上には地下通路につながる階段とエレベータが設置できるようあらかじめ開口部が準備されています。また、線路東側では仮設通路の屈曲部に隣接して仮設駅舎を建設する工事が行われており、今週末10月5日(日)よりともに使用を開始することが発表されました。仮設駅舎の使用開始に伴い、京成津田沼寄りの駅端にある現在の駅舎は使用を終了し取り壊される予定です。これにより旧下り線の跡地は支障物がすべて無くなることから、今後は高架橋の本体工事が本格化するものと見られます。
※この先画像が14枚(688KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。
●新鎌ヶ谷駅


左(1):高架橋の本体工事が概ね完了した新鎌ヶ谷駅。
右(2):ホーム端から松戸方面を見る。2012年訪問時に未設置だった道路上部の桁も完成している。(同じ場所の2012年10月20日の様子)
新鎌ヶ谷駅付近は駅周辺の土地区画整理事業と並行して仮線用地が確保されていたことに加え、新京成線と東武野田線(東武アーバンパークライン)が交差する桁が短く、下を通る野田線の複線化の支障となっていたことから工事が急がれ、2004年に上下線同時に仮線化が実施されました。このため、他の区間と比較して大幅に早く工事が進捗しており、現在は高架橋の本体工事がほぼ完了した状態となっています。初富駅・北初富駅の工事が遅れていることから、現時点ではホームなどの設備の工事は行われておらず、ほぼ休止状態となっています。
●北初富駅

上下線とも仮ホームになった北初富駅
高架化工事着工前の北初富駅は対向式ホーム2面2線で、駅舎は京成津田沼寄りの線路上部にありました。北初富駅付近は南側の仮線予定地に建つ個人商店が断固として立ち退きを拒否したため、仮線敷設に着手できずこれまで工事がストップした状態となっていました。そのため、2012年には土地収用法(強制買収)の適用に向けた手続きが開始され、2013年11月に立ち退きが完了しました。立ち退き完了後は急ピッチで仮線の敷設が行われ、今年2月23日に上下線同時で仮線への切り替え工事が実施されました。

現在の北初富駅の施設配置
北初富駅も仮設ホームは対向式2面2線となっています。仮設ホームは旧駅よりも約250m京成津田沼寄り(東側)に設けられています。これは旧駅の直前で新京成線の上を北総線(成田スカイアクセス線)の高架橋が跨いでいるため、新京成線側を高架化する場合地上から高架へ登るスペースを確保する必要があるためです。高架化後も現在の仮駅付近にホームができる予定です。仮設ホームの設備は初富駅とほぼ同様の配置となっており、仮上り線ホーム松戸寄りの端に仮設駅舎があり、仮下り線ホームとは地下通路で連絡しています。なお、仮設駅舎前を通る市道は2013年7月に南側へ迂回する新しい道路に付替えられています。


A:北初富駅仮駅舎・ホーム
左(1):北初富駅の仮駅舎
右(2):仮駅舎の脇にある北初富2号踏切から仮ホームを見る。
仮設ホーム本体は個人商店の立ち退き完了後直ちに使用できるよう2012年訪問時点で既に建設済みとなっていました。下り線側のホーム裏には少しでも工事を速く進めるため、高架橋の橋脚の一部が建設済みとなっています。上り線側に建設された仮設駅舎は数年間しか使用しないため、駅として必要な最小限の機能に留められており、駅前広場などは無く申し訳程度に自動販売機が置かれているだけとなっています。仮上り線ホームは駅舎と接しているため、初富駅と異なりエレベータではなくスロープでバリアフリールートが確保されています。




B:北初富1号踏切と旧駅跡地
左上(1):北初富1号踏切。立ち退きを拒否していた個人商店はこの踏切の左側にあった。
右上(2):踏切内から移転後の北初富駅を見る。
左下(3):同じ踏切から個人商店跡地に敷設された仮線と旧駅跡地を見る。
右下(4):参考までに2012年10月20日に撮影した移転前の北初富駅旧駅舎。
立ち退きを拒否していた個人商店は旧駅脇(北初富1号踏切)付近にありました。立ち退き完了後は直ちに建物の取り壊しが行われ、跡地に仮線の線路が敷設されています。この付近の仮線は用地幅を最小限に抑えるため緩やかにカーブを繰り返しています。また、仮線は使用期間が短いことからコスト削減のため、初富駅・北初富駅付近ともに中古のPCまくらぎが多用されています。

C:付替えられた市道
市道の付替え部分を見る。旧道の一部は周辺の住宅への出入りのため残されている。
北初富駅の仮設駅舎前を通り国道464号と交差している市道は、仮線の敷設開始に先立つ2013年7月30日に南側へ迂回する新しい道路に付替えられました。これは従来の交差点が仮線の踏切と近づきすぎてしまうため、交差点から溢れた自動車が踏み切りの中に取り残され、重大事故につながる恐れがあったためです。高架化工事完了後は元の位置に戻される予定となっており、付替え前の道路は沿道の住宅の出入り用などに残されています。


D:旧線跡地で進む高架橋の本体工事
左(1):北初富1号踏切と北初富2号踏切の間で進む高架橋の基礎工事
右(2):仮下り線ホーム端から見た高架橋の基礎工事。コンクリートの地中梁と杭頭が見える。
旧線跡地は軌道の撤去が完了し、高架橋の本体工事が本格化しています。現在は地面を大きく掘削して高架橋の基礎杭や地中梁を構築する工事が行われています。
新シンボルマーク制定の一方で進む経営規模縮小

車両側面に貼られた新京成電鉄の新しいシンボルマーク
新京成電鉄では企業イメージ向上のため、今年6月に新しいシンボルマークとスローガンを制定しました。新しいシンボルマークは親しみやすさや暖かさを感じさせるジェントルピンクを用い、会社名の頭文字であるアルファベットの「S」の字を横に寝かせてカーブが連続する路線を図案化しています。7月からはこのジェントルピンクを車両下半分に使用した新しい塗装の車両も登場しています。
このように新京成電鉄では新しい取り組みが多くなされる一方、利用者数は沿線の少子高齢化の進行により減少傾向が続いており、9月末をもって全列車が6両編成に減車されることになりました。この他にもコスト削減を目的にラッシュ時の減便(4分間隔→4分30秒間隔)や主要駅と比べて利用者の少ない駅を中心に夜間の遠隔監視化(無人化)などを強力に推し進めています。利用者や沿線の自治体ではこれらの合理化に対して批判も出ており、減便については一部撤回、駅の無人化についても市から中止が要請されるなど問題視されています。
過疎地では今や当然のこととして行われているこのような合理化ですが、少ないとはいえ利用者が千人単位である首都圏の鉄道では導入に際して反発が予想されます。サービスレベルを落とさずにどこまで“身の丈に合う”経営規模の実現ができるか、今後各事業者とも難しい舵取りが要求されそうです。
▼参考
新京成電鉄(公式Web)
新京成線連続立体交差事業 - 鎌ヶ谷市(PDF/1099KB)
鎌ケ谷市役所【関連リンク「新京成線連立事業ニュース」】
新京成線(鎌ヶ谷市)連続立体交差事業再評価(第18回千葉県県土整備部所管国庫補助事業評価監視委員会)(PDF/1638KB)
朝日新聞デジタル:多機能トイレは開放 千葉、新京成高根木戸駅夜間無人化 - 航空ニュース
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