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西武池袋線石神井公園駅高架化工事(2014年6月7日取材)
公開日:2014年09月05日23:35

西武池袋線石神井公園駅周辺では今年度中の完成を目指して高架化工事が進められています。石神井公園駅の高架化は完了しましたが、引き続き大泉学園駅手前までの高架化工事が行われています。今回は昨年11月に高架化された石神井公園~大泉学園間の下り線を中心に6月に調査しましたので、現地の様子をお届けいたします。
※なお、今回の調査時は大雨だったため一部見づらい写真があります。また、駅の外についても調査が困難だったため、画像の枚数が少なくなっております。ご了承ください。
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西武池袋線高架・複々線化の概要


左(1):2001年に高架化・複々線化が完了した富士見台駅付近。2007年5月4日撮影
右(2):地上時代の石神井公園駅。上下線兼用の中線を持つ島式ホーム2面3線の構内配線だった。2010年2月6日撮影
西武池袋線桜台~石神井公園間の高架化・複々線化工事は地下鉄8号線(現在の東京メトロ有楽町線)の相互乗り入れ計画を原型として開始されたもので、桜台~練馬高野台間5.2kmの工事は2003(平成15)年までに全て完了しています。残る練馬高野台~大泉学園間2.4kmは交差する東京外かく環状道路(東京外環自動車道)の計画との調整に手間取り着工が遅れましたが、同道路が地下式で建設される方針が固まったため、2005(平成17)年に都市計画変更の手続きを行い、2007(平成19)年から本格的な工事が開始されました。総事業費は約474億円(連続立体交差事業:約360億円、複々線化事業(全額を西武鉄道が拠出):約114億円)で国と東京都・練馬区が約285億円、西武鉄道が約189億円をそれぞれ負担します。
<西武池袋線連続立体交差事業の歴史>
1971年1月 都市計画決定(桜台~石神井公園間高架・複々線化)
1994年12月 富士見台~練馬高野台間高架・複々線化完成(踏切3か所廃止)
2000年3月 桜台~練馬間高架化完成(踏切7か所廃止)
2003年3月 練馬~富士見台間高架・複々線化完成(踏切9か所廃止)
2005年6月 都市計画決定(石神井公園~大泉学園間高架化)
2007年5月 都市計画事業認可取得
2010年2月 練馬高野台~石神井公園間上り線高架化
2011年4月 練馬高野台~石神井公園間下り線高架化
2012年11月 練馬高野台~石神井公園間複々線化完了
2013年11月 石神井公園~大泉学園間下り線高架化


上:着工前の桜台~大泉学園間の配線図
下:現在の桜台~大泉学園間の配線図
練馬高野台~大泉学園間の高架化工事は東側1.2kmと西側1.2kmの2期に分けて工事が行われています。東側の第1期区間は2005年の都市計画変更決定の時点で複々線化に必要な拡幅用地が既に確保されており、2007年からの工事ではまずこの拡幅用地に2線分の高架橋を建設して上り線を移設し、空いた用地に1線分ずつ下り線の高架橋を建設するという手法がとられました。上り線の高架線切替は2010(平成22)年2月、下り線の高架線切替は2011(平成23)年4月に行われ、渋滞が深刻だった富士街道(都道8号千代田練馬田無線)をはじめとする6箇所の踏切が廃止され交通渋滞の低減と都市分断の解消が実現しました。高架化の完了後は引き続き練馬高野台駅~石神井公園駅の複々線化が行われ、2012(平成24)年6月に完了しました。
第2期区間である石神井公園~大泉学園間は2007年5月に着工し、2012年8月に上り線、10月に下り線がそれぞれ仮線切替が完了しました。仮線切替後は下り線の高架化に向けて高架橋を建設する工事が進められ、2013年11月に下り線が高架線へ切り替えられました。現在は上り線の高架橋の建設が進められており、2014年度中の完成が予定されています。
第2期区間下り線の高架化が完成

大泉学園までの下り線高架化後の石神井公園駅大泉学園方の配線
第2期区間の工事は2007年の着手後順調に進んでおり、昨年11月24日(日)に下り線の高架化が完了しました。高架化に伴い、石神井公園駅西側の下り線の線路は従来急なS字カーブを経て地上に降りていたものが直線的な線形に変化しました。これに合わせて、駅西側(大泉学園方)にある留置線もレイアウトが変化しました。



左上:上り線のみが高架化された段階の石神井公園駅大泉学園方。2011年1月9日撮影
右上:下り線も高架化され、留置線が整備された段階。2012年11月25日撮影
下:下り線が大泉学園まで高架区間が延長された現在の状況。留置線が下り線側に曲げられた。
2012年6月の石神井公園駅高架化・2面4線化の完成に合わせて、以前練馬高野台駅にあった留置線を移転する形で石神井公園駅大泉学園方(西側)に留置線が新設されました。留置線は当初1線でしたが、その後旧下り線の一部を流用して2線に増強され、東京メトロ副都心線からの直通列車の折り返しなどに使用されています。この段階では留置線は石神井公園駅のホームから見てほぼ直線で敷設されており、さらに留置線の終端数十メートルは上り線側に向かってわずかに折れた線形となっていました。これは、石神井公園駅の先が高架橋の建設のため、上下線とも北側に敷設した仮線を走行しており、石神井公園駅の先は下り線が半径400mの急なS字カーブで曲がりながら地上に降りつつ北側の仮線に向かうという線形になっていたため、その線路を避けたことによるものです。
昨年11月に大泉学園までの下り線が高架化されたことにより、下り線は石神井公園駅の先でカーブせずに直線的に高架橋上を進む線形になりました。この結果、留置線を本来の位置である南(下り線)側に寄せることが可能となっため、留置線入口のシーサスクロッシングの直後から下り線に側に折れるよう移設されました。

3番線の大泉学園方の端に設置されている入換信号機。進路表示器は左から「5」「6」「保」と書かれている。
また、2本ある留置線と上り線の間には2012年に新たに3番線からしか進入できない作りかけの留置線が追加されていました。この留置線は使用中の線路に阻まれる形で150mほどのところでレールが途切れており、長らく使用されてきませんでした。今回他の留置線が下り線側に移設されたことにより、車止めが設置され使用可能な状態となりました。この留置線は使用開始となりましたが、引き続き架線は設置されておらず、電車列車の進入は不可能となっています。また、3番線のホーム端にある入換信号機に併設されている進入番線の表示器は、左から順に「5」「6」「保」という文字が書かれたランプがはめ込まれています。このことから、この短い留置線は主に保守用機材が使用することを意図して設置されたものとみられます。


左(1):石神井公園→大泉学園の前面展望。新しい高架橋上を進む。
右(2):コンクリートの型枠設置が行われている。
石神井公園~大泉学園間の高架線は、途中に存在するカーブの半径を大きくして通過速度を向上するため、場所によって建設位置が異なっています。前半(石神井公園駅側の半分)は着工時点で複線分の高架橋建設スペースが確保されており、高架化された下り線は従来よりも若干南側を走行しています。後半(大泉学園駅側半分)は仮線切替前の下り線があった場所に高架橋が建設されており、大泉学園駅の直前で地上に降りて直線で駅に進入するという線形になっています。勾配は石神井公園駅の先から200mほどは緩い下り勾配で、その後は大泉学園駅手前で地上に降り始めるまでほぼ水平となっています。
下り線の高架化後は地上の下り線の跡地で上り線の高架橋を建設する工事が進められています。6月の訪問時は高架橋の床に相当するコンクリートを打設する作業が進められており、木製の型枠や鉄筋の設置が行われていました。

大泉学園駅ホーム端から高架橋の終端を見る。
下り線の高架化により、石神井公園~大泉学園間では踏切の遮断時間が以前と比べて4割減り、交通渋滞の緩和などが実現しました。上り線の高架橋の建設工事はその後も順調に進んでおり、高架橋の建設が完了した部分から軌道敷設も開始されています。計画では今年度中の完成が予定されていますが、現地の様子を見る限りでは今後特にトラブルが無ければ予定通り完成を迎えることができるものとみられます。
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▼参考
池袋線連続立体交差事業・複々線化事業のご案内:西武鉄道Webサイト
西武池袋線(練馬高野台駅~大泉学園駅間)連続立体交差事業について:練馬区公式ホームページ
西武池袋線の下り線高架化による効果|東京都
おまけ:有楽町線に初入線した東急5050系“Shibuya Hikarie号”

有楽町飯田橋駅に停車中の東急5050系4110F“Shibuya Hikarie号”
今回はスペースに余裕がありますのでちょっと余談…
今回石神井公園駅を調査した6月7日(土)は先の写真の通りかなりの大雨となっており、午後に入ると西武線内でも一部の雨量計が運転規制値に達し、運転を見合わせる区間が発生しました。運休の結果、車両の運用変更も多数発生し、普段は副都心線のみを走行している東急5050系(10両編成の4000番台)が有楽町線に乗り入れるという珍事が発生しました。東急車の有楽町線乗り入れは2013年の副都心線と東横線の直通開始に向けた試運転開始時より時折見られていましたが、今回はその車両5050系の特別編成である4110F“Shibuya Hikarie号”が使用されたことがイレギュラー中のイレギュラーと言えます。“Shibuya Hikarie号”は東横線と副都心線の直通運転開始後に完成した編成で、これまで有楽町線に乗り入れたことは試運転を含め無く、予定外の初入線を果たしたことになります。ATOや車内放送のプログラムなどは4000番台の他の編成と同様有楽町線の乗り入れに対応しているようで、運転取り扱い上の差は特に無かった模様です。
なお、“Shibuya Hikarie号”は翌日西武池袋線東飯能~高麗間にある武蔵丘車両検修場で開催された「西武・電車フェスタ2014」において展示される予定になっていましたが、この運用変更の余波を受けて展示が中止になり、通常の5050系4000番台(4101F)が展示されたとのことです。
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