「上野東京ライン」試運転連日実施中!

秋葉原駅付近を行き来する上野東京ラインの試運転列車

今年7月29日未明に初の試運転が行われた「上野東京ライン」(東北縦貫線)ですが、その後8月より昼間の試運転が連日行われています。今回は東京~上野間の各所で見ることができるこの試運転の様子や、上野駅で引き続き行われている開業準備の工事の様子をお伝えします。

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■東北縦貫線(上野東京ライン)の概要とこれまで
東北縦貫線の位置
東北縦貫線の位置

 東北縦貫線は東海道線の東京駅と宇都宮・高崎・常磐線の上野駅を接続する新線で、2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会(現・通政策審議会)第18号答申で2015(平成27)年までに整備するべき路線として位置づけられています。この区間は現在京浜東北線と山手線により結ばれていますが、その混雑率は着工前の2006年の数字で218%と長年に渡り国内トップを誇っていました。東北縦貫線が完成すると、東京止まりとなっている東海道線と、上野止まりとなっている宇都宮線・高崎線・常磐線の列車を直通運転することが可能となり、山手線・京浜東北線への乗り換えが不要になるため混雑率は180%以下へ大幅に緩和される見込みです。

神田駅脇の東北新幹線の橋脚に準備されていた継ぎ足し用のボルト穴。 秋葉原駅から北は回送線の残存構造物を改良して東北縦貫線に流用した。
左(1):神田駅脇の東北新幹線の橋脚に準備されていた継ぎ足し用のボルト穴。2006年5月4日撮影
右(2):秋葉原駅から北は回送線の残存構造物を改良して東北縦貫線に流用した。2010年8月14日撮影


 東北縦貫線が建設される東京~上野間には、かつて「回送線」と呼ばれる線路が存在し、臨時の優等列車の運行にも使用されたことがありました。東北新幹線の東京駅延伸に伴い、回送線は1983(昭和58)年に廃止されましたが、跡地に建設された新幹線の高架橋は、将来回送線の高架橋を継ぎ足し可能な構造とするなどの準備がされていました。また、新幹線が地下を通る秋葉原以北については回送線の線路がそのまま残り,上野止まりの中距離電車の留置線として使用されてきました。東北縦貫線はこれらの設備を有効活用して建設されました。

神田駅付近で進む重層高架の建設工事 御徒町駅付近で進む旧回送線の東北縦貫線への転用工事。
左(1):神田駅付近で進む重層高架の建設工事。2012年3月3日撮影
右(2):御徒町駅付近で進む旧回送線の東北縦貫線への転用工事。2013年1月2日撮影


 工事は2008(平成20)年より開始され、新幹線の真上に自走式の大型機械を使って高架橋を継ぎ足すという難工事の末、今年6月4日にレール締結式を迎えました。そして7月29日未明、初となる電車列車を使用した試運転が行われ、軌道・信号などを含む全ての設備が設計通り完成していることが確認されました。完成を間近に控えた昨年12月には、路線愛称が「上野東京ライン」に決定し、当初計画より1年遅れの2015(平成27)年3月に開業することが発表されました。

■昼間の試運転は営業運転並の間隔で継続中
E233系3000番台 185系
上野東京ラインの試運転に主に使用されているのはE233系3000番台(左)と185系(右)

 上野東京ラインの運行系統は高崎・東北・常磐・東海道の4線区に跨ることから、関係する乗務員の数も非常に多くなっています。そのため、8月1日(金)から開始された乗務員訓練の試運転は、連日に渡り昼間におよそ10分間隔という本番の営業運転さながらの超高頻度で実施されています。
 試運転に主に使用されているのは、東海道線・宇都宮線・高崎線の最新車両であるE233系3000番台と東海道線の特急「踊り子」に使用されている185系です。通常はそれぞれ1編成ずつを東京駅と上野駅の間で往復させる運転方法が取られています。
 E233系は3月の上野東京ライン開業に向けて現在車両の増備が行われており、185系は高崎線の特急「草津」「あかぎ」(スワローあかぎ)に使用されていましたが、今年3月に651系1000番台にほとんどが置き換えられたことから、いずれも車両数に余裕があります。E231系1000番台も7月の深夜試運転に使用されたことからわかる通り、入線自体は可能ですが、試運転に使用されることは滅多にありません。これは、E231系は短時間の過負荷使用を前提とした編成出力となっており、急勾配を低速で何度も往復する運転がモーターの熱容量上好ましくないためと思われます。

●東京駅
重層高架から35パーミルの急勾配を下り… 営業線用に改修された東海道線用引上線に進入し…
左(1):重層高架から35パーミルの急勾配を下り…
右(2):営業線用に改修された東海道線用引上線に進入し…


引上線の終端に到達し… 東京駅構内に進入…
左(3):引上線の終端に到達し…
右(4):東京駅構内に進入…


東京駅に到着するE233系上野東京ライン試運転列車 到着後は10分ほどで再度折り返していく。(出発信号機の進行現示に注目)
左(5):東京駅に到着するE233系上野東京ライン試運転列車
右(6):到着後は10分ほどで再度折り返していく。(出発信号機の進行現示に注目)


 東京駅では9番線もしくは10番線で試運転列車が折り返すことが多くなっています。東京駅の東海道線ホーム北側は上野東京ラインの本線と東海道線の折り返し用引上線を兼用していますが、試運転が開始されて以降通常ダイヤで引上線を使うことはなくなっており、試運転用に常時線路を開けてあります。

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●神田駅付近(重層高架)
靖国通りを跨ぐ高架橋上を行く185系試運転列車
靖国通りを跨ぐ高架橋上を行く185系試運転列車(同じ場所の2013年4月14日の様子

 高架橋の新設区間である神田駅付近は、最高で90km/h程の速度で走行しますが、電車の窓の高さに相当する厳重な防音壁が張り巡らされていることもあって高架下でもほとんど騒音は感じられません。むしろ、並行する山手線や京浜東北線の方が道路の交差部分を中心に無道床軌道が多数存在するため、圧倒的に騒音が大きいほどです。

●秋葉原駅付近
重層高架を下って秋葉原駅脇を通過する185系試運転列車 秋葉原駅上野寄りは急なS字カーブのため速度を落として通過する
左(1):重層高架を下って秋葉原駅脇を通過する185系試運転列車
(同じ場所の2010年8月14日/2011年10月30日/2012年9月15日の様子)
右(2):秋葉原駅上野寄りは急なS字カーブのため速度を落として通過する。
(同じ場所の2012年6月15日/2013年4月14日の様子)


 秋葉原駅構内で重層高架区間は終了し、上野駅までは回送線の名残である留置線を転用した区間になります。秋葉原駅の上野方の端は半径400m前後の急なS字カーブとなっており、65km/hまで減速して通過します。東京駅と上野駅を同時に発車した試運転列車は、この付近ですれ違うのが通例となっています。

●御徒町駅付近
旧回送線の残存部分を改修した御徒町駅付近を行く185系試運転列車
旧回送線の残存部分を改修した御徒町駅付近を行く185系試運転列車
(同じ場所の2010年2月6日/2011年10月30日/2013年4月14日の様子)


 御徒町駅の脇も3本なった留置線のうち2本を上野東京ラインの本線に転用しています。秋葉原~御徒町間にある留置線も信号システム上は上野駅の構内扱いであるため、御徒町駅の脇の線路も既に上野駅構内に入っていることになります。御徒町駅の東京寄りには上野駅の第二場内信号機が設置されており、東京方面から来た列車は5番線に入る場合直進、6~9番線に入る場合ポイントを右に曲がって上り線を逆走する形になります。後述する通り試運転列車は上野駅6番線で折り返すため、ここで上り線に転線します。

上野駅6~9番線到着列車は御徒町駅脇のポイントで転線する。 秋葉原駅付近にある留置線に出入りする列車は引き続き一番東側の線路を通る。
左(1):上野駅6~9番線到着列車は御徒町駅脇のポイントで転線する。
右(2):秋葉原駅付近にある留置線に出入りする列車は引き続き一番東側の線路を通る。


上野駅を発車してカーブしながら御徒町駅脇を通過する185系試運転列車。
上野駅を発車してカーブしながら御徒町駅脇を通過する185系試運転列車。

●上野駅
上野駅6番線に到着するE233系試運転列車。留置線から出てきたホーム据え付け列車と見分けるポイントは行先表示と列車番号。
上野駅6番線に到着するE233系試運転列車。留置線から出てきたホーム据え付け列車と見分けるポイントは行先表示と列車番号。

 上野駅に到着した試運転列車は6番線で折り返しを行います。上野駅高架ホームは東京駅と異なり、秋葉原付近の留置線に出入りする列車が高頻度で運転されているため、試運転列車は複数のホームを使うことができず、発着番線は常に6番線に固定されています。こちらでも到着後10分ほどで再度東京方面へ折り返し発車していきます。

■上野駅構内は重軌条化工事が継続中
上野駅6~9番線東京寄りではTC型省力化軌道への更新・レールの60kg化などが継続中 上野駅6~9番線東京寄りではTC型省力化軌道への更新・レールの60kg化などが継続中
上野駅6~9番線東京寄りではTC型省力化軌道への更新・レールの60kg化などが継続中

 東北縦貫線本体の工事は全て完了していますが、上野駅構内では列車の通過本数が増加する高架ホーム6~9番線の軌道を改良する工事が続けられています。工事の内容はバラスト軌道のTC型省力化軌道への更新、橋梁部分の木製まくらぎの合成まくらぎへの交換、レールの重量化(50kgN定尺レール→60kgロングレール)などとなっています。昼間は留置線への出入りや試運転の列車が高頻度で通過するため、工事は深夜に行われており、終電・初電の一部列車の発着番線変更が頻繁に実施されています。

上野駅大宮寄りではDSSの改良が行われている 5番線の脇に置かれていたDSS用と思われる転轍機
左(1):上野駅大宮寄りではDSSの改良が行われている
右(2):5番線の脇に置かれていたDSS用と思われる転轍機


 一方、これまで一部信号機の増設以外動きが無かった大宮寄りについても、新たな変化がみられました。東北本線系統と常磐線系統の進路が交差する部分には、交差機能と分岐機能を兼ね備えた「ダブルスリップスイッチ(DSS)」と呼ばれる特殊なポイントが2箇所あります。このうち、6番線の先にあるDSSについて、現在レールや転轍機などの部品を交換する工事が行われており、このポイントを通過する列車について35km/hの徐行制限が設けられています。5番線脇に準備されている新しい転轍機は、最近主流の小型の白い箱状のものとなっており、いわゆる「次世代分岐器」に交換される模様です。DSSは保守に非常に手間がかかることから、品川駅や新宿駅などでは大規模な配線変更を行った上で全廃されていますが、上野駅は用地などの兼ね合いから廃止することは難しく、上野東京ラインの開業後もこの配線が維持されるものとみられます。

重層高架区間入口に新設された強風規制区間の標識。写真の「S」標は規制区間入口を示す。(出口は同じサイズの板に黒い丸が描かれている。)
重層高架区間入口に新設された強風規制区間の標識。写真の「S」標は規制区間入口を示す。(出口は同じサイズの板に黒い丸が描かれている。)

 この他、神田駅付近の重層高架区間では、試運転開始後に新たに強風時の速度規制区間を示す標識が新設されました。重層高架区間は両側が高い防音壁で囲まれており、元々あまり風の影響を受けない構造になっていますが、それでもビルの5~6階分の高さがあるため、より厳しく基準を適用している模様です。

次回は品川駅構内の配線変更工事の状況についてお伝えします。

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