南武支線小田栄駅新設工事(2016年1月3日取材)

建設中の小田栄駅脇を走行する南武支線205計1000番台

来る2016年3月26日、JR南武線浜川崎支線の川崎新町~浜川崎間に新駅「小田栄駅」が開業します。1月3日にこの新駅の工事について現地の様子を見てまいりましたので、その状況をお伝えします。

南武支線と沿線の概要

南武線(本線)E233系8000番台。現在の南武線の主力車両。 浜川崎支線は総武線などで使用されていた車両を短縮改造した205系1000番台が使用されている。
左(1):南武線(本線)E233系8000番台。現在の南武線の主力車両。2015年3月15日、川崎駅で撮影
右(2):浜川崎支線は総武線などで使用されていた車両を短縮改造した205系1000番台が使用されている。2016年1月3日、浜川崎駅で撮影


 JR南武線は、神奈川県川崎市の川崎駅と東京都立川市の立川駅を結ぶ35.5㎞の「本線」と途中の尻手駅から分岐して臨海部の工業地帯にある浜川崎駅へ向かう4.1㎞の「支線」の2線で構成されています。「本線」は6両編成の電車が数分間隔で運行する通勤路線となっています。2011年からは停車駅を利用者数の多い駅に絞った速達列車である「快速」の運行が開始され、2014年以降は新型車両E233系8000番台が導入されるなど、「東京メガループ」プロジェクトの一環として急速にサービス改善が進められています。一方、「支線」は東京都の大井埠頭にある東京貨物ターミナル駅や川崎市の臨海部にある川崎貨物駅と東海道線を結ぶ貨物線の一部になっており、ダイヤも貨物列車の運行を優先する構成となっています。このため、2両編成ワンマン運転の電車で運行されており、特に日中の運行本数は40分に1本と少なくなっています。

2010年3月に開業した横須賀線武蔵小杉駅。武蔵小杉地区では、2013年の東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転開始の効果もあり、人口増加が続いている。川崎市は2010年の国勢調査で人口増加率が国内の大都市でトップになった。
2010年3月に開業した横須賀線武蔵小杉駅。武蔵小杉地区では、2013年の東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転開始の効果もあり、人口増加が続いている。川崎市は2010年の国勢調査で人口増加率が国内の大都市でトップになった。

 川崎市内の南武線は京浜工業地帯の中を走っているため、1990年代まで沿線はほとんどが工場となっており、利用者もそこへの通勤客が主体となっていました。しかし、2000年代以降産業構造の変化などにより一部の地域で工場の統廃合などが行われ、跡地が住宅・商業施設に転用されるようになりました。2010年に横須賀線の新駅が設置された武蔵小杉駅周辺や、今回新駅が設けられる小田栄地区もその1つです。



小田栄駅の概要と現在の建設進捗状況(2016年1月3日取材)

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小田栄地区の航空写真の比較。左は1989年、右は現在で工場跡地がマンションに変化したことがわかる。
※左の航空写真は国土地理院地図・空中写真閲覧サービスを使用


 小田栄地区には昭和電線の工場がありましたが、1990年代末に閉鎖され、跡地には1500戸のマンション、特別養護老人ホーム、イトーヨーカ堂川崎店、ホームセンターコーナン川崎小田栄店などの商業施設が建設されました。この結果、2005年はわずか5世帯10人だった小田栄地区の人口は2014年に1686世帯4706人と実に470倍へ飛躍的に増加しました。現在小田栄地区を通る公共交通機関は、JR南武支線と路線バス(川崎鶴見臨港バス・川崎鶴見臨港バス)がありますが、JR南武支線は川崎新町駅、浜川崎駅ともに数百メートル離れており不便、路線バスに関してはラッシュ時に2~3分間隔での運行になるなど増発が限界を迎えており、かねてから住民より交通機関の充実を求める要望が出ていました。これを受けて川崎市では2015年1月29日にJR東日本との間で南武線のブランド向上に向けた包括連携協定を締結し、その中に南武支線川崎新町~浜川崎間への新駅設置が盛り込まれました。

小田栄駅の設置位置
小田栄駅の設置位置

 新駅は川崎新町駅から700m浜川崎駅方向に進んだ小田踏切付近に設置されます。新駅は2両編成分の屋根付きホームが踏切を挟む形で設置されます。利用者数は1日当たり3500人と予想されており、「短工期」「低コスト」で整備することを目的に、無人駅となる予定です。また、コストがかかる運賃精算システムの改修を避ける目的から、システム上は当面の間川崎新町駅と同じ駅として扱われる予定です。(そのため、当駅から川崎新町駅の間のみを利用する場合有人改札での精算処理が必要。)新駅の名称は、昨年8月に川崎市が実施した投票の結果、地名と同一の小田栄おださかえ(得票数889票)に決定されました。この駅の整備により、一例として小田栄地区から新宿へ向かう場合の所要時間は現在の57分(川崎・品川経由※1)から48分(尻手・武蔵小杉経由※2)へ短縮されるなど、東京都心への利便性が向上します。

▼脚注
※1:川崎駅までバスで出た後、東海道線・山手線を利用して新宿駅へ向かう場合
※2:南武支線・南武線・湘南新宿ラインを利用して新宿駅へ向かう場合


南武支線川崎新町~浜川崎間にある小田踏切。変則四差路の中に踏切がある。小田栄駅はこの踏切を挟んで設置される。
南武支線川崎新町~浜川崎間にある小田踏切。変則四差路の中に踏切がある。小田栄駅はこの踏切を挟んで設置される。

 小田栄駅の建設工事は、昨年11月19日から開始されています。新駅が設置される小田踏切は、北・西・南・北東の4方向から来た道路が交差する変則四差路の中に踏切があり、さらに南側には川崎駅へ向かう路線バスが発着するバス停があるという変わったレイアウトの踏切となっています。踏切北側は、2方向から来た道路の間にコンビニの敷地が三角形状に深く食い込んでおり、この先端部分は踏切の遮断機の内側になってしまうため、列車通過時の待機には注意が必要です。

浜川崎方面行きホーム 尻手方面行きホーム
建設が進む小田栄駅の浜川崎方面行きホーム(左・1)と尻手方面行きホーム(右・2)

 1月3日の調査時点では、上下線ともホームになるコンクリート製の床材の設置が完了し、屋根の骨組みを建てる作業が途中まで進んでいる状況でした。(この日は年末年始休暇中のため作業は行われていなかった。)ホームと踏切を通る道路の間は階段と車椅子用のスロープが設置される予定になっており、ホーム近傍ではその基礎工事も進められていました。

工事エリアの外側にある看板。
工事エリアの外側にある看板。

この小田栄駅は来る3月26日(土)のダイヤ改正で開業する予定です。この新駅開業に合わせて、南武支線は朝通勤時間帯(6~8時)に3本増発され、そのほかの時間帯についても運転間隔の適正化が実施される予定です。今回のダイヤ改正では北海道新幹線新青森~新函館北斗間の開業が特に注目されていますが、こういった身近な部分でのサービス改善についても注目していきたいところです。

▼参考
川崎市:川崎市と東日本旅客鉄道株式会社との包括連携協定の締結について
川崎市:南武支線川崎新町~浜川崎駅間 新駅名称を「小田栄駅」に決定しました
2016年3月ダイヤ改正について - JR東日本(PDF/598KB)
東京新聞:「小田栄駅」3月26日開業 南武支線ダイヤ改正 増発で利便性向上:神奈川(TOKYO Web)
→運賃計算について

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南武支線(2007年10月9日作成)
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