京成押上線高架化工事(2016年1月9日取材)

京成押上線を走る車両では最古参となった千葉ニュータウン鉄道9000形と最新の京急新1000形

2015年8月22日、京成電鉄押上線の押上~八広間の下り線が高架化され、この区間の高架化工事が完成しました。2013年にこの工事についてお伝えしましたが、1月初めに完成後の状況について改めて調査してまいりました。今回も京成曳舟駅付近を中心に現地の様子をお伝えします。

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京成押上線連続立体交差事業の概要

京成押上線を経由して羽田空港~成田空港間を結ぶ「アクセス特急」。
京成押上線を経由して羽田空港~成田空港間を結ぶ「アクセス特急」。2010年10月10日撮影

 京成押上線は、東京スカイツリー直下の押上駅から京成本線と接する青砥駅までの全長5.7kmを結ぶ民鉄線です。押上駅から先は都営地下鉄浅草線・京浜急行電鉄と相互直通運転を行っており、2010年に開業した成田スカイアクセス線とともに成田・羽田の両空港を直結するルートの一部となっています。このため、運行本数は昼夜を問わず多く、朝ラッシュ時は最短2分間隔での運行になっています。
 京成押上線は押上駅が地下、荒川を渡る前後の八広駅・四ツ木駅と終点の青砥駅が高架、京成曳舟駅と京成立石駅が地上となっています。このうち、地上を走行している京成曳舟駅付近では明治通り(環状4号線・都道306号線)、京成立石駅付近では平和橋通り〈都道308号線〉とそれぞれ踏切で交差しており、過密ダイヤと相まって激しい交通渋滞が発生しています。このため、東京都・墨田区・葛飾区と京成電鉄ではこの地上区間の高架化を行うこととし、1990年代後半から準備が進められてきました。


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 このうち、墨田区側の押上~八広間については1998(平成10)年に高架化事業の都市計画が決定されました。高架化されるのは押上駅側の東武亀戸線との交差部付近から八広駅直前までの約1.5kmで、完成すると明治通りをはじめとする8箇所の踏切が解消されます。総事業費は約310億円で、国が43%、東京都が30.1%、墨田区が12.9%、京成電鉄が14%をそれぞれ負担することとなっています。

押上~八広間の高架化が完成(2016年1月9日取材)

 当初、この墨田区側の高架化工事は2012(平成24)年3月の完成が予定されていましたが、様々な事情により工事が大幅に遅れ、2013(平成25)年8月24日(土)に上り線、2015(平成27)年8月22日(土)に下り線がそれぞれ高架化され、全ての区間の高架化が完了しました。今年1月9日(土)にこの下り線の様子を中心に再度調査致しましたので以下、現地の状況をお伝えします。

●八広~京成曳舟間
八広駅停車中の上り列車から見た地上区間との接続地点跡
八広駅停車中の上り列車から見た地上区間との接続地点跡

 高架の八広駅から京成曳舟駅に向かって地上へ降りる部分は2009(平成21)年以降北側に設置した仮設の高架橋へ急なS字カーブで迂回させ、旧線の高架橋を改築もしくはかさ上げして新しい京成曳舟駅に接続する高架橋を建設しました。下り線の高架化が完了したことにより、平面線形は元に戻り速度制限も撤廃されました。使用を終了した仮設高架橋は1月時点で概ね解体が済んでいましたが、高架橋高欄の復旧などの作業がまだ途中となっていました。



●京成曳舟駅
完成した京成曳舟駅高架ホーム
完成した京成曳舟駅高架ホーム

 京成曳舟駅の高架ホームは、地上時代と同じ対向式2面2線で、踏切による設置位置の制約が無くなったことから、ホーム全体が押上方面へ70mほど移動しています。今回完成した下り線ホームは、先に完成した上り線とほぼ同一の構成になっています。軌道や架線などの構造も上り線と同一になっています。

ホーム中央付近は階段やエスカレータがあるためホーム幅が広くなっているが、階段部分については上り線(左)に比べ下り線(右)の方が若干狭くなっている。 ホーム中央付近は階段やエスカレータがあるためホーム幅が広くなっているが、階段部分については上り線(左)に比べ下り線(右)の方が若干狭くなっている。
ホーム中央付近は階段やエスカレータがあるためホーム幅が広くなっているが、階段部分については上り線(左)に比べ下り線(右)の方が若干狭くなっている。

 ホーム中央付近は、階段やエスカレータを設置するため、ホーム幅が広くなっています。今回新設された下り線ホームは、北側にマンションが接近していることから、マンションへの日照を確保するため階段部分のみ拡幅量が若干ですが少なくなっています。上下線ホームで階段の幅を比較すると、下り線側は点状ブロック2枚分幅が狭くなっていることがわかります。

完成した2階の改札内コンコース
完成した2階の改札内コンコース

 下り線側の高架橋が完成したことにより、ホーム下のコンコースも全幅に渡り完成しました。ホームと同様コンコースも上下線でデザインは同一となっています。高架橋外側に面して設置されている窓は、住宅へのプライバシー確保のため曇りガラスが採用されています。

東口の先の通路延伸予定部分。 高架橋の橋脚は2層目に通路の床を載せられるようになっている。
左(1):東口の先の通路延伸予定部分。
右(2):高架橋の橋脚は2層目に通路の床を載せられるようになっている。


 青砥方にある東改札口の先は、現在すぐに階段で地上へ降りて高架橋真下に設けられた仮設通路で明治通りへ接続しています。この地上へ降りる階段の脇には、将来2階レベルのまま通路を明治通りへ延伸できるよう準備がされており、高架橋の橋脚も2層目に床を載せられるよう梁が準備されています。通路の工事はすでに始まっている模様です。

明治通りの踏切跡。踏切による遮断が無くなったため、奥側の横断歩道が消去された。
明治通りの踏切跡。踏切による遮断が無くなったため、奥側の横断歩道が消去された。(同じ場所の2013年11月23日の様子

 明治通りは、踏切が無くなったことにより渋滞が解消されました。以前は踏切遮断中の明治通りの歩行者横断ルートを確保するため、踏切の両側に線路へ並行する形で横断歩道がありましたが、踏切廃止によりその必要性が無くなったため、下り線側(写真奥)の横断歩道が消去されました。

押上5号踏切跡。高架下に東改札口へ上がる階段がある。
押上5号踏切跡。高架下に東改札口へ上がる階段がある。

 東改札口を出てUターンしたところの階段を降りると、旧押上5号踏切があった道路に降りられます。この付近は1月訪問時点ではまだ下り線側の外装の一部が完成していませんでした。道路の桁下高さは、2階に通路があるため、3.8m(道路構造令における最低値)と低くなっています。

西改札口へ通じるもう1つの階段。この付近にロータリーを備えた駅前広場ができる予定。 押上方にある西改札口
左:西改札口へ通じるもう1つの階段。この付近にロータリーを備えた駅前広場ができる予定。
右:押上方にある西改札口


 押上方にある西改札口は、今後地上にバスの乗り入れが可能な駅前広場が設けられる予定になっており、京成曳舟駅のメインの出入口となります。そのため、エスカレータやエレベータが併設され、階段の幅も広くなっています。現在は駅前広場が未完成であるため、曳舟たから通り(旧押上4号踏切)まで細い通路で接続されています。

明治通り踏切跡から青砥方面を見る。今後この先には高架橋に並行して道路ができる予定。 取り壊しが進む地上の旧下り線ホーム
左(1):明治通り踏切跡から青砥方面を見る。今後この先には高架橋に並行して道路ができる予定。
右(2):取り壊しが進む地上の旧下り線ホーム


 地上の旧下り線跡は軌道設備の撤去は大方完了しており、1月時点では京成曳舟駅構内の旧ホームの取り壊しのみが進められていました。今後廃線跡には道路が建設される予定です。

墨田区側は高架化工事が完成する一方、葛飾区側の四ツ木~青砥間では依然として用地買収が続いており、本格的な工事には着手していません。こちらの状況についても随時確認はしていますので、本格的に着工され次第再度調査を行う予定です。

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▼参考
京成押上線(京成曳舟駅付近)の下り線を8月22日(土)から高架化します! - 京成電鉄ニュースリリース(PDF/1.25MB)
京成押上線(京成曳舟駅付近)を8月に全線高架化!|東京都
京成電鉄押上線(押上駅―八広駅間)連続立体交差事業 墨田区公式ウェブサイト
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