カテゴリ:鉄道:建設・工事 > 上野東京ライン・品川駅再開発
東北縦貫線工事(2009~2010年取材まとめ)
公開日:2010年03月15日17:04

2002(平成14)年、JR東日本は東京駅と上野駅の間に東北縦貫線を建設することを発表しました。それから8年が経過し、工事が本格化してきましたのでその様子をお伝えしたいと思います。
■東北縦貫線の概要
東北縦貫線(以下、縦貫線)はこの路線は東海道線東京駅と宇都宮・高崎・常磐線の上野駅を結ぶ路線で、2000(平成12)年の運輸政策審議会第18号答申において2015(平成27)年度までに整備・開業すべきものとして位置づけられました。
この区間は現在山手線と京浜東北線の2路線が走る形態となっていますが、その混雑率は2007(平成19)年度の数字で209%と長きにわたり国内ワースト1位の地位を不動のものとしています。縦貫線が開業すると東海道線と宇都宮・高崎・常磐線の列車の相互直通が可能となり、山手線・京浜東北線への乗り換えが不要となるためおよそ10分の所要時間短縮が実現します。さらに、この区間の混雑率は混雑緩和の目標とされている180%以下へと大幅に緩和される見込みです。また、現在東海道線と宇都宮・高崎線は東京都心西側の湘南新宿ラインを通じて直通運転を行っていますが、縦貫線開業後はこれに加えて車両基地がある都心東側でも直通運転が可能となるため車両の効率的な運用が可能となります。縦貫線開業後は現在両路線で分かれている車両基地を統合する計画となっており、東海道線の田町車両センターが整理・縮小の対象となっています。(すでに遊休化していた旧東京機関区については昨年より施設の撤去が開始されています。)当初の完成予定は2009(平成21)年度となっていましたが、2重高架(後述)となる神田付近で地元との調整が難航したことから2013(平成25)年度へ延期されています。
なお、この縦貫線が建設される区間は東北新幹線の建設が開始されるまで東京駅と上野駅を結ぶ「回送線」と呼ばれる連絡線がありました。そのため、今回の縦貫線建設は実質的にはこの回送線の「復活」と見ることもできます。

東北縦貫線の構造
この縦貫線は構造より「東京~秋葉原間」と「秋葉原~上野間」の2つに大別することができます。
前者の「東京~秋葉原間」は東北新幹線の高架橋の上に縦貫線の高架橋構造物を継ぎ足す2重高架となります。そもそも東北新幹線は前述の「回送線」を潰す形で建設されたことから将来の2重高架化による回送線の復活(=縦貫線の建設)を考慮した設計※となっており、神田駅付近の橋脚ではさらに部材を追加できるよう接合用のボルト穴などが準備された状態となっていました。今回の縦貫線計画でもこの構造はそのまま生かされる予定となっており、線路脇に作業用地がほとんどないことから新幹線の線路上空にクレーンを仮設して桁を順次建設していく直接高架方式を採用しています。2重高架区間両側のアプローチ部分については今ある高架橋を発砲モルタルなど軽量の素材を用いてかさ上げする予定で、必要に応じて基礎杭の追加など補強が行われる計画です。
一方、後者の「秋葉原~上野間」は回送線時代の名残で秋葉原駅付近にある宇都宮・高崎・常磐線の留置線に接続する線路があることから、この線路を営業線用に改良する予定です。
▼脚注
※:高架橋建設に先立ち、2重高架に対応した実物大の試験杭による検討が行われたという記録もある。東北新幹線の建設当初から2重高架とならなかったのは神田付近において地元から新幹線建設に対する反発が非常に大きかったためと考えられる。
▼参考
東北新幹線東京・秋葉原間の高架橋基礎に関する試験 東工26-3 1975年9月日本国有鉄道東京第一工事局
■2009~2010年の状況
前述のとおり神田付近で地元との調整に時間がかかったことから縦貫線の着工は2008(平成20)年5月までずれこみました。着工から1年ほどは予定地状にある使われていない古い建物や軌道などの撤去が中心で、高架橋本体の建設など本格的な工事は2009年に入ってから開始されました。




左上:神田駅のホームから見た東北新幹線の橋脚。この時点では雨水の浸入を防ぐため接合部に蓋がされていた。2006年5月4日撮影
右上:神田駅の南で建設が始まった縦貫線の橋脚。新幹線と在来線に挟まれた狭い場所に建設されており、在来線上空に大きく張り出す。新幹線の橋脚は蓋が全て取り外されている。2010年2月6日撮影
左下:その奥ではトラベラークレーン用の作業台を施工中。2010年2月6日撮影
右下:神田~秋葉原間でも橋脚を建設中。2010年2月6日撮影
※クリックで拡大
2重高架となる神田駅付近では2009年の秋ごろから縦貫線高架橋の巨大な橋脚が建つようになりました。また、東京~神田間のほぼ中央では縦貫線の高架橋を建設するためのトラベラークレーン(直接高架工事で使用する移動式のクレーン)の作業用の台が構築されました。なお、建物の密集度が高い都心部での工事となるため、高架橋の部材は深夜、終電が通過した後の新幹線の線路を通って現場まで直接搬入されるとのことです。


左:御徒町駅付近での古い軌道の撤去工事。2009年5月9日撮影
右:同じ地点の2010年2月6日の様子。手前のまくらぎで封鎖された線路が将来縦貫線の本線となる。2010年2月6日撮影
※クリックで拡大
一方、御徒町駅付近でも2009年秋ごろから軌道改良が開始されました。秋葉原駅付近の留置線へのアクセスを維持したまま工事を行うため、3本なる線路のうち1本を留置線への出入り用とし、残り2本の線路を改良するといった手順がとられているようです。高架橋本体に関しては現在のところ何も手は加えられていませんが、縦貫線開業後は現在より列車本数が増加するため防音壁のかさ上げなどが予定されています。
▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
JR東日本/新幹線直上に在来線新設/「東北縦貫線」、軌道内から鉄骨架設へ - 日刊建設工業新聞(2009年12月4日)
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