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東急大井町線急行7両化工事(2017年3月12日取材)
公開日:2017年03月22日23:01

昨年夏、東急大井町線で運行されている急行電車を6両から7両に増車する計画が明らかになりました。その後、大井町線内の急行停車駅ではホームの延長工事が進められています。1週間ほど前にこの工事について一通り現地を調査しましたので、その様子をお伝えします。
■突如明らかになった東急大井町線急行7両化

大井町線の急行専用車両6000系電車。2008年3月16日、二子新地駅で撮影。
東急大井町線は東京都品川区のJR京浜東北線大井町駅から、東横線の自由が丘駅を経由し、世田谷区の二子玉川駅に至る全長10.4kmの路線です。2009(平成21)年には二子玉川駅で接続する田園都市線の混雑緩和対策として、二子玉川~溝の口間が複々線化され、大井町線の電車が終日溝の口駅まで乗り入れるようになりました。また、大井町線内でも信号システムのATC化、旗の台駅・上野毛駅への追い抜き設備新設などの改良が実施され、溝の口延伸に先立つ2008(平成20)年に急行が新設されました。急行の停車駅は大井町・旗の台・大岡山・自由が丘・二子玉川で、原則として6両編成の専用車両(6000系)により運行されています。これにより、田園都市線から品川方面へ向かうバイパスルートが形成され、田園都市線(池尻大橋→渋谷)の混雑率は延伸前の198%から184%(2015年度)へ緩和されています。


自由が丘駅に掲出されたホーム延伸工事のお知らせ。2016年12月30日撮影
2009年の溝の口延伸後は、副都心線と東横線の相互直通運転開始に伴い東横線を追われた9000系電車による車両更新や、安全性向上のため一部駅でのホームドア新設などがあったものの、運行形態については大きな変化無く現在に至っていました。しかし、昨年6~7月にかけて突如複数の世田谷区議会議員の個人サイト・Facebookページ等において「平成29年度内を目標に大井町線急行の朝ラッシュ時混雑緩和対策として7両化するためのホーム延伸工事に着手する」旨の報告が掲載されました。
▼参考
世田谷区議会議員おぎのけんじ氏が2016年6月23日に投稿したFacebookページ
東急電鉄によるホームドア整備及びホーム延伸工事について 世田谷区議会議員 山口 ひろひさ
この時点では東急電鉄公式サイトならびに現地等で同様のお知らせは一切無く、真偽は不明となっていましたが、10月以降工事対象となっている大井町・旗の台・自由が丘の各駅で工事のお知らせが掲出されたことから、この報告は「本物」であることが確認されました。
■各駅で工事が本格化
工事対象3駅でのお知らせ掲出後は、各駅とも急ピッチでホームの延長工事が進められています。自由が丘駅は昨年12月31日、それ以外の駅は今月12日に調査を行いました。以下、各駅の状況をお伝えします。
●大井町駅


左(1):大井町駅のホーム先端で進む延長工事。
右(2):さらに奥に進んだところ。床板の設置が進む。右側の防音壁は資材搬入のため取り外し式になっている。
大井町駅は、2002(平成12)年に開業した東京臨海高速鉄道りんかい線建設の際高架橋を全面改築しており、6両編成対応の島式1面2線のホームになっていました。このため、2008年の急行運転開始時も特に改修は行われていません。また、ホーム自体は6両編成対応ですが、折り返し用のシーサスクロッシングは駅からかなり離れた場所に設置されており、信号システムが通常通り使用できないことを無視すれば10両編成まで入線可能となっています。実際に東横線のホームドア輸送などで10両編成が入線したことがあります。
このように大井町駅はかなり余裕をもったレイアウトになっているため、7両化では単純にホーム床面を二子玉川方へ1両分延長するだけとなっています。今月12日の調査時にはホームの床板を設置する作業が進められていました。床板は工場既製品を骨組みの上に並べる構造になっており、高架下から床板などの資材を搬入できるよう線路外側の防音壁の一部が取り外し式に改造されています。
●旗の台駅


左(1):旗の台駅二子玉川方で進むホーム延長工事。
右(2):さらに先端に進んだところ。バラストを抜き取り、ホーム基礎を埋め込む準備をしている。
旗の台駅は池上線の上を大井町線が斜めに交差するレイアウトになっています。大井町線ホームは2008年の急行運転開始時に対向式ホーム2面2線から島式ホーム2面4線に改修されており、終日急行の追い抜きが実施されています。旗の台駅の7両化では大井町方・二子玉川方双方に0.5両分ずつホームを延長します。今月12日時点では線路間に盛ってあったバラスト(砂利)が除去されて土嚢に詰め替えられており、ホームの基礎を埋め込む準備が行われていました。
●大岡山駅
大岡山駅は1997(平成9)年に地下化された当時より目黒線・大井町線とも8両編成分のホーム長が確保されています。このためホームの延長工事は不要です。
●自由が丘駅


左(1):自由が丘駅二子玉川方で行われているホーム延長工事。
右(2):奥にある踏切までの空間を目一杯使いホームが延長される。2016年12月31日撮影
自由が丘駅は大井町線の上を東横線が斜めに交差するレイアウトになっています。大井町線ホームは対向式2面2線で、2008年の急行運転開始時に二子玉川方へ1両分ホームを延長しています。ホーム両端には踏切が近接していますが、ATCの機能の1つである過走防護パターン(ORP)を動作させ、停車時のオーバーランを確実に防止することにより踏切をできるだけ長い時間開放できるようにしています。
自由が丘駅の7両化は、前回延長した二子玉川方のホームをさらに踏切直前まで延長します。延長できる長さは多めに見積もっても15mほどしかありませんが、現在のホームは両端に数mずつ固定柵で覆われ使っていない部分があるため、合計すると辛うじて1両分の長さは確保できるものとみられます。ただし、踏切までの余裕が全くなくなってしまうため、現在のようにORPを使っても踏切の遮断開始をギリギリまで遅らせるという操作ができなくなってしまうのではないかと思われます。

自由が丘駅大井町方はホームの延長は無いが、柵で囲まれたスペースができている。
自由が丘駅の大井町方はホームの延長はありませんが、上下線とも工事用のパネルで覆われたスペースができています。ただの資材置き場なのか、何かホーム自体の改修を行っているのかは不明です。
●二子玉川駅

二子玉川駅の溝の口方にある未使用部分。
二子玉川駅は1990年代に行われた大規模改良の際、大井町線と田園都市線(旧新玉川線)の線路の位置が入れ替えられ、外側が田園都市線、内側が大井町線のレイアウトになっています。線路入れ替え後は、内側の大井町線の線路を若干延長して折り返し用の引上線が設置され、現在はその線路が溝の口駅まで延長されています。引上線設置時はホームの途中にシーサスクロッシングを設置したため、その部分はホーム縁端が削り取られていますが、それ以外の使用しない部分は固定柵を設置したのみでホームとしては現在も7両分程度の長さは確保されています。このため、大井町線の7両化では固定柵の撤去程度で対応可能であるとみられます。
■今後のスケジュール
駅の掲示物以外に告知が無かった大井町線の急行7両化ですが、本日3月22日に東急電鉄公式サイトで公開された田園都市線の混雑緩和施策に関するニュースリリースの中で2017年下期の運用開始予定であることが発表されました。車両の準備に関しては現在のところ明らかになっていませんが、大井町線の6000系は基本構造が田園都市線などを走る5000系などと同一であること、田園都市線ではホームドア設置に備え6ドア車を順次新造した4ドア車へ差し替えていることから、同一設計の増結車を製造するものと思われます。これらの動向についても今後注目してまいりたいと思います。
▼参考
田園都市線および大井町線の朝ラッシュ時の混雑緩和施策を実施 ピーク前増発や大井町線急行7両編成化など、都心方面の輸送力を増強するとともに、移動手段、働く場所、乗車時間の多様な選択肢を提供します |東急電鉄ニュースリリース
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