東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅改良工事(2018年1月21日取材)

方南町駅2番出口

東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅では、現在駅出入口のバリアフリー化や6両編成の本線から直通を可能にするための改良工事が進められています。昨年12月に新しい出入口がオープンしましたので、1月に調査を行いました。今回はその新しい出入口を中心に現在の状況をお伝えします。

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東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅改良工事(2014年2月1日取材)(2014年7月1日作成)

方南町駅の改良工事の概要

丸ノ内線02系本線用編成。 方南町駅のホーム。
左(1):丸ノ内線02系本線用編成。2012年6月2日撮影
右(2):方南町駅のホーム。2014年2月1日撮影


 東京メトロ丸ノ内線は豊島区の池袋駅を起点に、東京都心部をU字型に結び、杉並区の荻窪駅に至る全長24.2kmの「本線」と中野坂上駅から分岐し、杉並区の方南町駅に至る全長3.2kmの「分岐線」から成る地下鉄路線です。都心を貫通する本線は6両編成が最短1分50秒間隔で運行される超過密ダイヤであるのに対し、分岐線は沿線が住宅地であるため中野富士見町駅にある車両基地への入出庫列車を除き3両編成で運行されています。
 丸ノ内分岐線の終点である方南町駅は、方南通り(東京都道14号新宿国立線)と環状7号線(東京都道318号線)が交差する方南町交差点の地下にあります。渋滞防止のため交差点は環状7号線がアンダーパスする構造になっており、方南町駅のホームはこれを避けた地下2階にあります。現在のホームは島式ホーム1面2線で、入口から車止めまで110mほどの長さがありますが、オーバーランに対する安全上の余裕を考慮すると6両(全長108m)の列車の乗り入れにはわずかに足りません。そのため、方南町駅には終日3両の分岐線専用編成のみが乗り入れています
 改札口と地上出口は中野坂上寄りの線路上部と終端側の車止めの先にあります。いずれの地上出口も階段のみの設置だったため、車椅子やベビーカーでの利用が非常に困難になっており、ボランティアによるサポート活動も行われていました。このような方南町駅のバリアフリー非対応は周辺自治体や住民の間でも問題視されており、エレベータの設置を求める署名が杉並区や東京メトロに対し提出されてきました。
 これを受け東京メトロでは、2012年度の事業計画で方南町駅の大規模改良に着手することを発表しました。改良工事の内容は以下の通りとなっています。

方南町駅改良工事の概要と新設される駅ビルの位置図
方南町駅改良工事の概要と新設される駅ビルの位置図
(C)国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの画像を元に作成


(1)ホームを6両編成対応に延伸
終端側に約18mトンネルを増築し、改札口・事務室・トイレなどを移設した上で、ホームを6両編成対応に延伸する。これにより中野坂上駅から先新宿方面への直通運転が可能となる。

(2)駅ビルと地上へのバリアフリー移動経路を新設
駅南西の環状7号線沿いで買収した土地に駅ビルを新設し、増築したトンネルと地下通路で接続する。駅ビル内にはエレベータとエスカレータを設置し、駅から地上へのバリアフリー移動経路を新設する。

工事は2013年11月より開始されています。総工費は約50億円で当初完成予定は2017年度とされていましたが、工事が遅れており現時点では2019年度の完成予定となっています。

3番出口オープン!

写真中央の屋根が斜めに欠けた白いビルが3番出口
写真中央の屋根が斜めに欠けた白いビルが3番出口(同じ場所の2014年2月1日の様子

 2013年秋に着工した方南町駅改良工事は、まず駅南西で新しい地上出口となるビルを建設する工事から開始されました。駅とビルを接続する地下通路は、交通量の非常に多い環状7号線側道直下での工事となるため時間を要しましたが、昨年12月9日(土)に全ての工事が完了し、3番出口として使用が開始されました。

方南町駅3番出口階層図
方南町駅3番出口階層図(上から地上1階、地下1階、地下2階)

 3番出口があるビルは環状7号線とその裏手の路地の間を目一杯使って建てられました。ビルは地上3階、地下2階構造で、地下部分は階段・エスカレータ・エレベータのほかに駅事務室・お忘れ物取扱い所、駅の機能向上に必要な機械室などが収容されています。以下、地下部分の様子を説明していきます。



●地上1階
環状7号線に面している3a出口
3a出口はエレベータと上下エスカレータが設置
上(1):環状7号線に面している3a出口
下(2):3a出口はエレベータと上下エスカレータが設置


 新設されたビルは環状7号線側と裏側の2箇所に出口があります。このため、出口番号はサフィックスを付けて区別しており、環状7号線側は「3a」となっています。3a出口はビルの幅目一杯に設けられており、外から見て左側からエレベータ、上りエスカレータ、下りエスカレータ、奥への通路の順に設置されています。建物の外は地下駅構内へ消火用水を送る送水口がある他は目立つ設備はありません。

環状7号線から入って右側の通路を進むと階段があり、さらに奥まで通路が続いている。 ビル裏側の道路にある3b出口
左(1):環状7号線から入って右側の通路を進むと階段があり、さらに奥まで通路が続いている。
右(2):ビル裏側の道路にある3b出口


 3a出口からビルに入って右側の通路を進むと、ビルの中央付近に階段があります。通路はビルの裏側まで続いており、ここが「3b」の出口になっています。エスカレータや階段以外の空きスペースは機械室や業務用の駐車場などになっており、一般利用できる施設はありません。1月訪問時はまだ完成から間もなかったため、一部工事中の部分も残っていました。

●地下1階
地下1階のエスカレータ・階段踊り場
地下1階のエスカレータ・階段踊り場

 エスカレータと階段はビルの半分のスペースに押し込んだレイアウトになっているため、地下1階は踊り場としてそれぞれの向きを変えています。階段は単純ならせん状にするのではなく地下1階で若干位置をずらしており、天井を高くして圧迫感を抑えています。地下階の内装は最近主流の白いタイルやパネルを使用しており、天井は丸ノ内線のラインカラーである赤色で着色したスリット内に照明を埋め込んでいます。(副都心線渋谷駅などと同様の構成)今後は既存のホームや改札口などを含めこの内装にリニューアルされる予定です。
 地下1階もエスカレータ・階段以外の部分は全て業務用室になっており、一般利用できる施設はありません。また、エレベータは地下1階を通過します。

●地下2階
地下2階。エスカレータの裏に駅事務室・お忘れ物取扱い所がある。
地下2階。エスカレータの裏に駅事務室・お忘れ物取扱い所がある。

 地下2階は環状7号線側にエスカレータとエレベータの乗り口があります。ビルの重量を支えるため、エレベータの前には柱が数本立ち並んでおり、見通しはあまりよくありません。エスカレータの奥には改札口前から移転してきた駅事務室・お忘れ物取扱い所があります。階段はエレベータの裏側にあるため、この写真では見えません。

3番出口から方南町駅へ続く通路
3番出口からの通路は方南町駅の終端に通じる。奥にはトイレが移設された。
閉鎖された古いトイレ
左(1):3番出口から方南町駅へ続く通路
右上(2):3番出口からの通路は方南町駅の終端に通じる。奥にはトイレが移設された。
右下(3):閉鎖された古いトイレ

 エスカレータの前からは環状7号線の下を通って方南町駅へ向かう通路が延びています。通路の幅は約2mで途中斜めにクランクしているところがあります。通路の突き当りには新しいトイレがあり、右に曲がると既存の方南町駅1番出口前に出ます。従来使用していたトイレは既に閉鎖されており、今後は駅事務室とともに撤去されて新しい改札口のスペースとなります。

2番出口周辺も改良対象に

方南銀座商店街の中にある方南町駅2番出口 2番出口の下にある東改札
左(1):方南銀座商店街の中にある方南町駅2番出口
右(2):2番出口の下にある東改札


 東京メトロでは駅のバリアフリー化をさらに推進するため、駅周辺の地権者に対し地下鉄出口の改良とビルの新築・建て替えを協同で行うプロジェクトを公募しています。これまで2016年以降16の駅について公募が実施されており、6両化工事着工時点で対象になっていなかった方南町駅2番出口も昨年1月に新たに含まれました。これに関連するのかは不明ですが、昨年8月に2番出口脇にあった立ち食い蕎麦屋が駅から若干離れた場所に移転しています。
 方南町駅は開業から55年間大規模な改修を受けておらず、各施設とも老朽化が激しくなっています。2番出口やその下にある改札口もかなり手狭になっており、丸ノ内線本線との直通開始による利用者増加の可能性も考慮すると今後なんらかの変化があると予想されます。6両化工事と合わせ、これらの開発事業の動向についても注目してまいります。

▼参考
事業計画|東京メトロ
→平成24年度(第9期)分より方南町駅改良工事について言及あり
東京メトログループ中期経営計画「東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~」
→19ページに方南町駅6両化に関する記述
「駅周辺開発における公募型連携プロジェクト」第3弾を実施します! - 東京メトロニュースリリース
公募型連携プロジェクト|東京メトロ
→方南町駅2番出口周辺の開発協力者募集について
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