東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅改良工事(2019年3月29日取材)

リニューアルされた方南町駅の駅名板と02系

東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅では、現在駅出入口のバリアフリー化や6両編成の本線から直通を可能にするための改良工事が進められています。6両編成の乗り入れ開始を間近に控え、現地では車止め移設による有効長延伸などの工事が実施されました。今回は昨年秋から今年春にかけて調査した現地の状況をまとめてお届けします。

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東京メトロ丸ノ内分岐線方南町駅改良工事(2018年1月21日取材)(2018年3月10日作成)

方南町駅の改良工事の概要

丸ノ内線02系本線用編成。丸ノ内線では近い将来信号システムの刷新や電車線電圧の昇圧が予定されており、新型車両(後述)への置き換えが開始された。 方南町駅のホーム。
左(1):丸ノ内線02系本線用編成。丸ノ内線では近い将来信号システムの刷新や電車線電圧の昇圧が予定されており、新型車両(後述)への置き換えが開始された。2012年6月2日撮影
右(2):6両化工事着工前の方南町駅のホーム。2014年2月1日撮影


 東京メトロ丸ノ内線は豊島区の池袋駅を起点に、東京都心部をU字型に結び、杉並区の荻窪駅に至る全長24.2kmの「本線」と中野坂上駅から分岐し、杉並区の方南町駅に至る全長3.2kmの「分岐線」から成る地下鉄路線です。都心を貫通する本線は6両編成が最短1分50秒間隔で運行される超過密ダイヤであるのに対し、分岐線は沿線が住宅地であるため中野富士見町駅にある車両基地への入出庫列車を除き3両編成で運行されています。
 丸ノ内分岐線の終点である方南町駅は、方南通り(東京都道14号新宿国立線)と環状7号線(東京都道318号線)が交差する方南町交差点の地下にあります。渋滞防止のため交差点は環状7号線がアンダーパスする構造になっており、方南町駅のホームはこれを避けた地下2階にあります。現在のホームは島式ホーム1面2線で、入口から車止めまで110mほどの長さがありますが、オーバーランに対する安全上の余裕を考慮すると6両(全長108m)の列車の乗り入れにはわずかに足りません。そのため、方南町駅には終日3両の分岐線専用編成のみが乗り入れています
 改札口と地上出口は中野坂上寄りの線路上部と終端側の車止めの先にあります。いずれの地上出口も階段のみの設置だったため、車椅子やベビーカーでの利用が非常に困難になっており、ボランティアによるサポート活動も行われていました。このような方南町駅のバリアフリー非対応は周辺自治体や住民の間でも問題視されており、エレベータの設置を求める署名が杉並区や東京メトロに対し提出されてきました。
 これを受け東京メトロでは、2012年度の事業計画で方南町駅の大規模改良に着手することを発表しました。改良工事の内容は以下の通りとなっています。

方南町駅改良工事の概要と新設される駅ビルの位置図
方南町駅改良工事の概要と新設される駅ビルの位置図
(C)国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの画像を元に作成


(1)ホームを6両編成対応に延伸
終端側に約18mトンネルを増築し、改札口・事務室・トイレなどを移設した上で、ホームを6両編成対応に延伸する。これにより中野坂上駅から先新宿方面への直通運転が可能となる。

(2)駅ビルと地上へのバリアフリー移動経路を新設
駅南西の環状7号線沿いで買収した土地に駅ビルを新設し、増築したトンネルと地下通路で接続する。駅ビル内にはエレベータとエスカレータを設置し、駅から地上へのバリアフリー移動経路を新設する。

工事は2013年11月より開始されています。総工費は約50億円で当初完成予定は2017年度とされていましたが、工事が遅れており現時点では2019年度の完成予定に変更されています。



ホームを片側使用しながら有効長を延長

 方南町駅では、2017年12月に終端側で建設中だった3番出口の使用が開始され、駅事務室やトイレが新しい出口のビル内に移転しました。これにより、ホーム延長用のスペースが確保されたことから、昨年5月~今年1月にかけて2本ある線路を片方ずつ使用停止にして車止めを6両編成に対応した位置に移設する工事が実施されました。また、7月には終端側にあった西改札が通路の奥へ移設されるなど、6両編成の乗り入れに向けた最終仕上げが急ピッチで進められました。ここからは昨年9月24日、11月25日、今年3月29日の3回に渡り調査した現地の状況をお届けします。

●2018年9月24日(2番線完成/西改札移転後)

2番線リニューアル完了後の方南町駅のホーム。右の1番線は使用停止直後で半分ずつ新旧のデザインが混在していた。
2番線リニューアル完了後の方南町駅のホーム。右の1番線は使用停止直後で半分ずつ新旧のデザインが混在していた。

 2018年5月26日(土)からはまず2番線の使用を停止して、終端側の線路を延長して車止めを奥に移設する工事が実施されました。この工事に伴い方南町駅の折り返し能力が不足するため、分岐線中野坂上~方南町間の運行本数が平日朝ラッシュ時は3往復、土休日は1往復減便されました。この工事に合わせてホームの設備全体のリニューアルも進められ、線路側の壁面が先に完成した3番出口と同様の化粧パネルを用いたデザインに変わりました。

延長された終端側の線路。この時点では6両の停止位置にはホームドアの代わりに鉄製の柵を設置。 さらに奥に進んで移設された車止めを見る。この部分は乗降には使用できないためステンレス製の柵が取り付けられており、第三軌条も設置されていない。
左(1):延長された終端側の線路。この時点では6両の停止位置にはホームドアの代わりに鉄製の柵を設置。(同じ場所の2014年2月1日の様子
右(2):さらに奥に進んで移設された車止めを見る。この部分は乗降には使用できないためステンレス製の柵が取り付けられており、第三軌条も設置されていない。


 方南町駅のホーム自体は元々6両の編成長ぴったり程度の長さありましたが、終端側のオーバーランに対する余長が不足していました。そこで今回の工事では、終端側の車止めの先にあった機械室の一部を取り壊してそこに車止めを食い込ませることにより、6両編成が安全に進入できる線路の長さを確保しました。新しい車止めが設置された場所は環状7号線のアンダーパスの下にあるため天井が低くなっており、ホームと線路の間には太い柱もあるため乗降には使用できず、ステンレス製の柵が置かれています。
 なお、2018年の時点ではまだ6両編成の乗り入れまで時間があることから、延長部分のホームにはホームドアは設置されず、代わりに鉄製の柵が取り付けられていました。床にはホームドア取り付け用の台座が準備されていたため、鉄製柵の支柱はそれを避けた特殊な形状となっていました。

ホーム天井に据え付けられた新しいエアコンと従来から使用中の床置きエアコン。
ホーム天井に据え付けられた新しいエアコンと従来から使用中の床置きエアコン。

 3番出口の完成により、空調の室外機の設置スペースが確保されたことから、方南町駅のホーム天井には丸ノ内線の各駅と同様の大型の空調機が据え付けられました。これまで方南町駅では、開業時から天井に設置されていた扇風機と後付けの床置きエアコンによる申し訳程度の空調しかなく、特に夏場は駅構内が非常に暑くなっていましたが、ようやくこの問題も解決される見込みとなりました。

7月15日に移転した西改札。この時点では自動改札機が不揃いなレイアウトになっていた。
7月15日に移転した西改札。この時点では自動改札機が不揃いなレイアウトになっていた。
(同じ場所の様子:2014年2月1日/2018年1月21日


 2番線の延長工事最中の7月15日(日)には、終端側の西改札が通路奥(1番出口階段直近)に移転しました。この時点ではまだ床面の工事などが残っていたため、自動改札機の位置が不揃いであるなど暫定的なレイアウトでの使用開始となりました。


リニューアルされた1番出口地上。
内部の階段。3番出口と同様の白い化粧パネル張りとなった。
参考までにリニューアル前の1番出口。
左(1):リニューアルされた1番出口地上。
右上(2):内部の階段。3番出口と同様の白い化粧パネル張りとなった。
右下(3):参考までにリニューアル前の1番出口。2018年1月21日撮影

 新改札前の1番出口についても、この頃リニューアルが実施され旧来のくすんだタイル張りから3番出口と同様の現代的な白い化粧板張りに刷新されました。

●2018年11月25日(1番線使用停止中)

1番線使用停止中の方南町駅。延長工事中の1番線は板で覆われている。

 続いて9月22日(土)からは反対の1番線の使用を停止して2番線と同様に車止め移設・線路の延長工事が行われました。工事は床のコンクリートの切削なども伴うため、埃が飛ばないよう1番線側半分は全面板で覆われ見ることはできませんでした。

西改札は完成形のレイアウトになった。
西改札は完成形のレイアウトになった。

 使用開始時点では暫定的なレイアウトだった西改札はこの頃になると自動改札機が横並びになり、間仕切りのガラス板も設置されるなど完成形となりました。その先のホームへ向かう通路は旧駅事務室の取り壊しなどのため狭くなっています。

●2019年3月29日(ホーム延長工事完了後)
ホーム延長工事が完了した方南町駅。ホームドアも6両対応になった。
2番線と同様に移設された1番線の車止め。
新設された6両用のATO地上子。末尾に(6)の文字があるのがポイント。
左(1):ホーム延長工事が完了した方南町駅。ホームドアも6両対応になった。
右上(2):2番線と同様に移設された1番線の車止め。
右下(3):新設された6両用のATO地上子。末尾に(6)の文字があるのがポイント。

 今年1月26日(土)に1番線も6両編成への対応工事が完了し、使用が再開されました。これにより、減便していた分岐線の運行本数も元に戻されています。鉄製の柵が置かれていた6両編成の停止位置にも、正式にホームドアが設置されATOの専用地上子も設置されるなど、6両編成への乗り入れ準備が整いました。

7月5日より6両編成の乗り入れが開始

今年2月にデビューした丸ノ内線の新型車両2000系。CBTC・750Vへの昇圧に対応している。
今年2月にデビューした丸ノ内線の新型車両2000系。CBTC・750Vへの昇圧に対応している。

 6年にわたり工事が続いてきた方南町駅の改良工事ですが、このように概ね施設が完成を迎えたことから、来る2019年7月5日(金)に実施されるダイヤ改正よりついに6両編成の乗り入れが開始されることが決定しました。新たに乗り入れる6両編成は、現在昼間に約20分間隔で設定されている新宿駅折り返し列車、および朝ラッシュ時に設定されている中野富士見町始発列車を延長するもので、現行の3両編成と合わせて方南町駅を発着する列車本数は平日が177本から209本、土休日が157本から176本へおよそ15%増加します。東京メトロでは、3月に千代田線北綾瀬支線で本線との直通運転が開始されたばかりですが、それに引き続き大幅な利便性向上が期待されます。
 一方、丸ノ内線全体においても今後大きな変化が訪れようとしています。2016年1月には丸ノ内線において東京メトロでは初となる無線を利用した信号システム“CBTC(Communications-Based Train Control)”を導入することが発表されました。さらに同年3月に発表された中期経営計画において、丸ノ内線の電車線(第三軌条)電圧を現行の600Vから750Vへ昇圧することが新たに盛り込まれました。これに対応するため、今年2月より新型車両2000系の投入が開始されました。CBTCの導入は2023年度が予定されており、それまでに現行の02系は全車置き換えられる予定です。方南町駅の改良工事はまもなく終了しますが、今後も引き続きこれらの変化について注目してまいります。

▼参考
2019年7月5日(金)丸ノ内線でダイヤを改正します - 東京メトロニュースリリース
丸ノ内線に無線式列車制御システム(CBTCシステム)を導入します - 東京メトロニュースリリース(2016/01/28発表)
丸ノ内線新型車両 2000 系を導入します - 東京メトロニュースリリース(2018/03/28発表)
東京メトログループ中期経営計画「東京メトロプラン2021」|東京メトロ

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