千駄ヶ谷駅改良工事(2020年1~3月取材)

新型コロナウイルスの世界的流行により、開催が危ぶまれている今夏の東京オリンピックですが、インフラ整備は当初のスケジュール通りに続いています。メインスタジアムとなる新国立競技場最寄りの千駄ヶ谷駅では、ホームの増設工事が最終段階を迎えています。完成間近となった千駄ヶ谷駅改良工事の状況をお伝えします。
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千駄ヶ谷駅改良工事(2019年取材)(2019年4月12日作成)
■千駄ヶ谷駅改良工事の概要

昨年11月に完成した新新国立競技場
中央線千駄ヶ谷駅は、1904(明治37)年8月の甲武鉄道飯田町~中野間電化時に開設されました。その後何度か駅舎を改築していましたが、1964(昭和39)年に駅南側にある国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)が東京オリンピックのメイン会場となるのに合わせて高架橋を拡幅し、現在使用している島式ホームに加えて多客時に新宿・中野方面行き列車が使用する臨時ホームが設置されました。この臨時ホームは、駅舎との間が階段2箇所でしか連絡されておらず、屋根も無いことから1964年の東京オリンピック開催時に使用された以外は常時閉鎖となっており、ホーム上は広告スペースなどに活用されてきました。
時代は流れて2013(平成25)年9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)第125次総会において、2020年夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。2020年東京オリンピックでは、国立競技場が再びメイン会場として使用されることになっており、昨年11月末には新しい競技場施設が完成しました。

千駄ヶ谷駅改良工事のポイント
新しい国立競技場は収容人数が旧競技場の5万4千人から6万8千人(オリンピック終了後はトラックにも観客席を増設し8万人)へ大幅に増加することになっています。そのため、競技場最寄り駅となる千駄ヶ谷駅では増加する観客利用に対応する改修工事が必要となりました。そこで、1964年に設置された臨時ホームを活用して東京方面行きと中野方面行きのホームを分離し、混雑緩和を図ることになりました。改良工事では、ホームの分離に加えてコンコースの拡張、臨時ホームへのエスカレータ・エレベータ設置(現ホームは大型化)、さらにさらなる安全性向上のため各ホームへのホームドア設置も計画されています。臨時ホームを活用したホームの方向別分離は山手線の原宿駅でも計画されており、隣の代々木駅・信濃町駅のホームドア設置と合わせた総事業費は約250億円を見込んでいます。
■新駅舎の使用を開始
千駄ヶ谷駅改良工事は、2016年夏より本格化しています。2016年9月には、旧臨時ホーム直下にあった改札口の使用を終了し、新宿寄りに設けられた仮設駅舎の使用を開始しました。仮設駅舎への移転後、旧駅舎と旧臨時ホームは全て解体され、新しい駅舎とホームの建設が進められました。今回は、今年1月4日と今月15日に調査した現地の様子をお届けします。
左(1):昨年10月に完成した千駄ヶ谷駅新駅舎
右上(2):新国立競技場でのイベント開催に備え、簡易Suica改札機も設置
右下(3):改札内は新ホームまで吹き抜けになっており開放的
右上(2):新国立競技場でのイベント開催に備え、簡易Suica改札機も設置
右下(3):改札内は新ホームまで吹き抜けになっており開放的
新駅舎とホームの建設は順調に進み、昨年10月27日には新駅舎の使用を開始しました。新駅舎の改札口は旧駅舎とほぼ同じ位置に設けられており、改札口の東京寄りにはコンビニ“NEWDAYS”が入居しています。改札口は、新国立競技場でのイベント開催に備え、常設の自動改札機を10台に加え、臨時用の簡易Suica改札機が6台設置されています。
改札内の天井はホームの屋根と一部兼用しており、ホームまで吹き抜けとなった開放的な空間となっています。ホームへの通路は改札口正面と左側の奥にあり、左側にはベビー休憩室を備えたトイレがあります。(昨年2月使用開始済)


左(1):今年1月時点での千駄ヶ谷駅新ホーム
右(2):ホーム先端のタイルはホームドアに合わせたレイアウト。線路上にはTASC地上子も設置。
昨年春調査時に工事中だった新ホームの構造物は、秋頃までにおおむね完成しました。新ホームの床面はグレーの石材が全面に貼られており、千葉方面行き専用となる現ホームについても同様のデザインにリニューアルされています。ホーム先端の点状ブロックと石材は、近日中に予定されているホームドア設置に合わせたレイアウトになっており、電車の乗降口以外の部分は滑り止めが省略されています。

各種設備もほぼ完成した今月15日の千駄ヶ谷駅新ホーム
2月以降は、新ホームの使用開始に向け照明や各種機器類の取り付けが進められています。3月15日調査時点では、新ホームの照明は全て点灯し、発車案内板もビニールで梱包された状態であるものの、電源が入れられ次発の行先や時刻が表示されていました。一方、現ホームは乗降に使用しなくなる1番線側に固定柵、2番線側にはホームドアを設置するため、床面への穴開けが順次進められています。
■今後のスケジュール

現ホームで設置工事中の2番線専用発車案内板。緩行線経由での発着が廃止された「東京方面」の文字は無い。
このように、千駄ヶ谷駅改良工事は順調に進んでいることから、今週末3月22日(日)よりいよいよ新ホームの使用が開始される予定になっています。これにより現ホームは千葉方面行き専用となります。
新ホーム使用開始後は、現ホーム・新ホームともにホームドアの取り付けが行われ、6月までに使用を開始する予定となっています。中央・総武緩行線では、千駄ヶ谷駅に加え中野~西船橋間の各駅でホームドアの設置が決定しており、総武線側の錦糸町・亀戸などでも既に着工しています。ホームドア設置後は、電車の停止位置をホームドアと正確に合わせる必要があるため、定位置停止装置(TASC)の設置も進められています。千駄ヶ谷駅をはじめとするホームドア設置対象駅では、TASC用地上子の設置が順次進められているほか、今年1月以降は中央・総武緩行線のE231系に搭載されているTASC車上装置の電源がオンの状態で走行しています。

早朝・深夜に運行されていた東京駅発着の緩行線は今月14日のダイヤ改正で廃止された。
中央線では、これまで早朝・深夜に東京駅を発着するオレンジ色の電車が緩行線経由で運行されていました。東京駅発着列車で使用されるE233系は、先頭車のドア間隔がE231系と異なり、さらに2023年度末にはグリーン車が連結され編成構成が大きく変わる予定です。ホームドアが設置されると、これら両形式の電車を同じ線路で走行させることが困難になるため、3月14日(土)ダイヤ改正をもって東京駅発着列車の緩行線経由での運行が取り止めとなりました。ホームドアの設置は快速線でも予定されていることから、武蔵小金井駅・立川駅発着の総武線直通列車の運行も同時に取りやめとなっており、緩行線の黄色い電車は終日千葉方面~中野・三鷹というシンプルな運行形態に変わっています。
中央線ではグリーン車連結に合わせて快速線のホーム延長工事も本格化しています。これらについても調査がまもなく終わりますので、近日中に記事化する予定です。
▼参考
駅改良の工事計画について - JR東日本(2016年6月8日発表)(PDF/595KB)
千駄ケ谷駅 新駅舎及び新ホームの供用開始について - JR東日本(2019年9月17日発表)(PDF/511KB)
2020年3月ダイヤ改正について - JR東日本(2019年12月13日発表)(PDF/1.2MB)
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千駄ヶ谷駅改良工事(2016・2017年取材)(2017年10月11日作成)
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