東海道線辻堂駅前の再開発とホーム拡幅(2010年5月16日取材)

東海道線の辻堂駅前では現在工場跡地の再開発が進められています。これに伴い、辻堂駅では利用者数の大幅な増加が見込まれることから、ホーム拡幅を含む駅施設の拡張が進められています。この記事では再開発の概要と明日5月22日(土)にホーム拡幅工事が行われる辻堂駅の駅施設拡張の2点について詳しく解説します。
■再開発計画「湘南C-X」の概要
辻堂駅の北側にはこれまで関東特殊製鋼(カントク)の本社工場が広がっていました。1999(平成11)年12月にこの工場が整理縮小されることになり、生み出される4.7haの土地の利用方法の検討が開始されます。さらに、2002(平成14)年11月にはカントク側の計画変更により工場施設の全てを関西に移転する形で廃止することになり、先の縮小に伴い取得済みだったものを含む計21.7haの広大な土地が再開発の対象となりました。これを受け、内閣の直属機関である都市再生本部では当地域を「都市再生緊急整備地域」に指定するとともに、都市再生機構(UR)、藤沢市、進出予定の企業などで構成する「辻堂駅周辺地区整備計画調整委員会」を中心として再開発に関する具体的な計画が策定さました。2005(平成15)年7月には公募により再開発地区の名称が「湘南C-X(シー・クロス)※1」に決定し、工場施設の取り壊しが完了した2006(平成18)年7月より本格的な工事が開始されました。
●「湘南C-X」事業計画
面積:30ha(カントク工場跡地以外の土地も含む)
居住人口:2300人
就業人口:10000人
事業期間:2004(平成16)~2010(平成22)年(予定)
▼脚注
※1:「C-X」の「C」はCity(都市)、Culture(文化)、Sea(海)を表し、「X」はCross(交差)を表す。また、Complex(複合)を頭と尾に短縮したものという意味も込められている。

辻堂駅西側の歩道橋から見た再開発地全景。(4枚合成)
※クリックで拡大
再開発地区は中心部と外周部の2つに大別することができ、前者にはショッピングモール、病院、行政機関といった市民生活の向上に寄与する施設が、後者には住宅、企業の研究施設などが整備されることになっています。2006年の着工以来、再開発に必要な道路、上下水道、電力といったインフラ整備は順調に進んでおり、去る2009(平成21)年5月には「一部まちびらき」を記念したイベントが開催されました。また、駅に一番近い区画にはすでにショッピングモールの建築計画に関する掲示が出されており、建物本体の工事がまもなく開始されるものと思われます。
■東海道線辻堂駅改修の概要
この再開発に伴い、辻堂駅では利用者数の大幅な増加が見込まれるほか、使用開始から数十年を経過した駅舎の老朽化が問題となっていたことから東京寄り、小田原寄りにそれぞれ存在する橋上駅舎を全面的に改築・拡張することになりました。具体的な改修箇所と内容は以下の通りです。

辻堂駅の改修箇所を示した図
●ホーム拡幅
東海道貨物線下り・東海道線上りの線路を北側に移設し、現ホームの平均幅員を8mから12mに拡幅する。
●南北自由通路拡幅
既存の通路は途中に駅施設があるため、幅が2m~7mとばらつきがあったが、これを全長にわたり幅12mに拡幅する。これに伴い、橋上駅舎を拡張して駅施設を通路外に移転する。
●北口駅前広場へのデッキを整備
再開発により北口に駅前広場が新設されるため、南北自由通路を延長する形でそこへ通じるデッキを整備する。通路幅は拡幅後の南北自由通路と同様12mとする。
●西口駅舎の全面改築
使用開始から40年以上が経過し老朽化が進んでいる西口駅舎(小田原寄り)を全面的に改築し、あわせてエレベータを新設する。また、この駅舎が接続している幅3m跨線橋を撤去し、新たに幅6mの跨線橋を架設する。
この改修工事は再開発に伴うものであるため、必要となる約65億円の費用は受益者である藤沢市、茅ヶ崎市、JR東日本の3者が折半して負担することになっています。具体的な内訳は以下の通りです。
●ホーム拡幅:藤沢市・茅ヶ崎市・JR東日本
●南北自由通路の拡幅および駅舎改築:藤沢市
●西口駅舎改修:藤沢市・茅ヶ崎市・JR東日本
●西口跨線橋拡幅:藤沢市・茅ヶ崎市
●西口駅前広場の整備:藤沢市
■2010年5月16日の状況


左:現在の辻堂駅ホーム。左の線路が上り線で、脇には拡幅用ホームの一部が完成しているほか、穴埋め用の資材が山積みになっている。
右:現上り線の軌道周り。新ホームの基礎となるコンクリートの打設が完了している。
※クリックで拡大
東海道貨物船下りの線路の移設は去る2009年7月9日に完了しており、5月16日(先週日曜日)の時点では現在線との接続地点を除く東海道線上りの新しい軌道の敷設がほぼ終了した状態でした。新上り線の軌道上にはすでに新しいホームの資材(白い塊であることから発泡スチロールと思われる)が搬入されていたほか、新上り線と現上り線の間には列車の通過に支障しない範囲で拡幅用ホームの構造物が設置されていたほか、現上り線のレール周りには列車の通過に支障が無い範囲で基礎コンクリートの構築が行われていました。このコンクリートをよく見ると車輪の通過に支障しないレール外側についてはレールと隙間を空けずに施工されており、切替後はレールもろとも新ホームの床下に埋められてしまうようです。
一方、ホーム上には現在の屋根を貫通する形で新しい屋根の柱が設置され、その上の屋根本体の構築も全て完了した状態となっていました。この屋根は現上り線の上に張り出す形となっており、イメージとしては先月ホームの拡幅が行われた横浜駅横須賀線ホーム(当駅と同日に取材済み。次回記事作成予定。)と同じような造りとなっています。
なお、22日の新ホーム切替時は現上り線の線路上に前述の発泡スチロールを敷き詰めて施工済みの拡幅用ホームと一体化するものと思われます。




左上:拡幅中の南北自由通路
右上:現在のところ変化は無い西口駅舎。自動改札は2通路しかない。
左下:北口駅前広場から見たデッキ。
右下:デッキの階段下に設置されている「湘南C-X」の地図
※クリックで拡大
ホーム以外の改修も着々と進められており、拡幅される南北自由通路の部分については通路上にあった駅施設の移転が完了し、跡地の整備が行われています。また、小田原寄りの西口駅舎は今のところ大きな変化は見られませんが、改札口脇にはすでに新しい西口駅舎のイメージパースが掲出されており、まもなく本格的な改修工事が開始されるものと思われます。ちなみに、現在の西口駅舎は自動券売機と自動改札機がそれぞれ2基ずつと有人改札口が1通路という大変狭い造りとなっており、早急な改修が必要であることが伺い知れます。
一方、藤沢市が施工する北口のデッキや駅前広場はすでにほとんどが完成しており、路線バスやタクシー乗り場も供用を開始しています。
新上り線への切替は明日5月22日(土)の夕方から翌23日(日)の早朝にかけて行われる予定です。この時間帯は東海道線上り列車が貨物線経由で運転されるため停車駅の大幅な変更などが行われることとなります。ご利用の際はご注意ください。
▼参考
藤沢市|湘南C-X(シークロス)
東海道線・湘南新宿ラインの一部運休・停車駅変更のお知らせ(駅配布の資料)
JR東日本:工事に伴う運転変更のお知らせ
→工事に伴う東海道線の運転変更について(工事終了後は削除されます。)

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コメント
面白い工事
趣味的にも土木工事的にも面白い工事ですね。発砲スチロールを使った工法は拝島駅で初めて知りましたけど、歩道の盛り土とかで一般的に使われるようになってきましたね。この駅の上り線の迂回路として貨物線が使われているのも興味深いです。
趣味的にも土木工事的にも面白い工事ですね。発砲スチロールを使った工法は拝島駅で初めて知りましたけど、歩道の盛り土とかで一般的に使われるようになってきましたね。この駅の上り線の迂回路として貨物線が使われているのも興味深いです。
2010/05/23 19:25 | URL | 投稿者:ぱせりさらだ
Re: 面白い工事
ぱせりさらださま>
発泡スチロールによるかさ上げは工期の短縮が可能であることからこのような長期間運休にできない幹線鉄道の改良や早期の復旧が要求される土砂災害現場でも活用されていますね。(有名なのは昨年8月に発生した静岡県地震の際の東名高速牧之原SA付近での土砂崩れ復旧工事。)ちなみに、Yahoo!Geocities版でお伝えしている新港横戸町線の工事の一部でも盛土の代わりにこの発泡スチロールが使われています。
コメントの投稿受付は2018年2月28日をもちまして終了させていただきました。詳しくは→こちら
ぱせりさらださま>
発泡スチロールによるかさ上げは工期の短縮が可能であることからこのような長期間運休にできない幹線鉄道の改良や早期の復旧が要求される土砂災害現場でも活用されていますね。(有名なのは昨年8月に発生した静岡県地震の際の東名高速牧之原SA付近での土砂崩れ復旧工事。)ちなみに、Yahoo!Geocities版でお伝えしている新港横戸町線の工事の一部でも盛土の代わりにこの発泡スチロールが使われています。
2010/05/24 10:19 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
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