東京駅(総武線側の概説) - 総武・東京トンネル(11)


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■東京地下駅の位置の検討
▼参考
工事誌(総武線)4・5ページ


検討された東京地下駅の位置10案
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和59年)に筆者が加筆

総武快速線の都心側のターミナル東京駅は地下駅で建設されることが決定したが、その東京駅ついて工事誌に興味深い記述がある。
1つ目はホームは2面3線とされていたことである。これは当初の需要予測では2面3線で十分だと考えられていたものの、想定を超える速さで宅地開発が進んだため急遽現在のような2面4線に変更したものと思われる。さらに2つ目は東京地下駅の位置に関して10案検討されたことである。当時、横須賀線との直通が明確に決定されていなかった上、太平洋戦争で被災した丸の内赤レンガ駅舎の取り壊し・高層ビル化計画も考えられており、それら再開発との一体的な整備も模索されていたようだ。以下、その10案の簡単な概要を順に述べていきたい。

1案(紫色:新常盤橋の先で国鉄線高架橋の東側に2階建で2面のホームを設置する。
2案(青色:1案を2階建てにせず、国鉄線高架橋の直下にもう1面ホームを設置する。
3案(水色:1案を2階建てにせず、国鉄線高架橋の西側にもう1面ホームを設置する。
※以上3案が永代通りの手前で止まっているのは、この道路の直下に地下鉄5号線(東西線)が通るためである。
4案(緑色:八重洲口駅前地下に2面のホームを設置する。
5案(黄緑色:東京地上駅直下に2面のホームを設置する。
6案(黄色:丸ノ内赤レンガ駅舎を取り壊し、2面のホームを設置する。
7案(橙色:3案の国鉄高架橋の西側に1面設置した後、丸ノ内赤レンガ駅舎を取り壊してもう1面設置する。
8案(桃色:東京地上駅直下に1面設置した後、丸ノ内赤レンガ駅舎を取り壊してそこにもう1面設置する。
9案(赤色:八重洲口南側に2面のホームを設置する。
10案(茶色:丸ノ内駅前広場地下に2面のホームを設置する。

費用や工期などを勘案した結果、1~3案は東京駅本体から離れすぎている、4・9案は首都高速八重洲線と重複する、5・8案は営業中の駅の直下の掘削が極めて難しい、6・7・8案は赤レンガ駅舎の改築費用などの問題があり、最終的に10案の丸ノ内駅前広場直下案に決定した。

■丸の内トンネル:0km344m66~0km000m00(L=344m66 ※横須賀線側へさらに387m00続く)
▼参考
工事誌(総武線)121・190~197・222~225・356・357・379・823~829ページ
工事誌(横須賀線)東京駅断面図
「鉄道土木技術者が経験した変わった構造物と特異な災害」 監修:仁杉巖 執筆:池田俊雄・久保村圭助 交通新聞社2003年

●概説

丸ノ内トンネル(東京地下駅)位置図
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和59年)に筆者が加筆

東京駅のトンネル部分は「丸の内トンネル」という。駅の中央に0kmポストが置かれており、営業上も建設上もここが総武快速線と横須賀線の真の接続点となる。この記事では内容の肥大化を防止するため、0kmポストから総武線側を中心に取り扱う。
総武線側は東西線と交差する銭瓶トンネルを抜けると、半径300mでカーブしながら扇形に4線へと線路が広がっていき、丸の内口駅前広場の下へと進んでいく。丸の内トンネルの区間は全て開削工法で掘削され、最大幅42m、最大深さ27mと言う巨大な構造物であるため、最初に構築の端面に当たる部分に「地中連続壁」を施工した。これは掘削時の土砂崩壊や湧水を防止する目的である。その後、金属でできた縦の柱を予定位置に全て打ち込んだ後、上の階から順番に掘削・構築を完成させていく「逆巻工法」により駅躯体の建設を行った。


東京地下駅断面図

駅は場所によって階数が異なり、両端が地下4層、中央が地下5層構造となっている。
地下1階は改札口・コンコースで在来線ホーム下のコンコースのほか、隣接する東京メトロ丸ノ内線東京駅・東西線大手町駅、さらに周辺ビルの地階へも通じており、地下街としての性質も持つ。地下2階は倉庫・団体待合室と交差する丸ノ内線のトンネル、地下3階は空調機械室とトンネル換気用送風機室、地下4階は改札内コンコース(エスカレータ・階段接続階)とトンネル換気用送風機室、地下5階が2面4線のホームとなっている。また、換気塔は駅本体部の両端と駅前ロータリー内に合計4本設置しており、千葉寄りから順に「北部換気塔」「中央山側換気塔」「中央海側換気塔」「南部換気塔」と名称がつけられている。「中央山側換気塔」「中央海側換気塔」は2重構造の円筒形となっており、外側が排気口、内側が給気口となっている。また、「南部換気塔」は地上出入口と一体化している。


東京駅北口ドーム(2007年5月26日撮影)

東京駅の工事で最大の難関となるのは丸の内赤レンガ駅舎(北口ドーム部分)の受け替え(アンダーピニング)である。丸の内赤レンガ駅舎は1914(大正3)年に建設されたもので、東京大空襲で円形屋根の3階部分を焼失し、八角形屋根の仮構造で復旧したものである。当初は、施工の難しさや工期などを考え、この部分を解体することも検討されたようだが、当時の国鉄総裁石田禮助の一声により赤レンガ駅舎は現状のまま残し、その地下に駅を建設することに決定した。


アンダーピニング施工範囲(左)と受桁の構造概略(右)

施工範囲は支持条件が同一となるよう北口ドーム全体に加え、両側の駅舎部分も含めた計2600平方メートルとした。アンダーピニングはまず駅舎の地下を掘削し、レンガ壁の両側に鉄筋コンクリート製の添え梁(はり)を高張力ボルトで強固に固定する。その後、この添え梁の下にコンクリート受桁(新設地下駅と重複する部分)または鋼製受桁(それ以外の部分)を差し込み、さらにその下に鋼製杭を2本ずつ設置して工事期間中の支えとした。添え梁を支えるコンクリート受桁は76本、鋼製受桁は38本、それを支える鋼製杭は実に250本近くに達し、林のように並んだ杭の中に地下駅を構築していったのである。赤レンガ駅舎は強度解析も困難で、関東大震災や空襲被害による影響も心配されたが、変形などは全く発生することなく無事に工事は完了した。


東京地下駅電力トンネルの位置図

(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和59年)に筆者が加筆

このほか、東京地下駅の付帯設備として、東京駅日本橋口にある東京変電所から東京地下駅地下4階へ電力を供給するトンネルが建設されている。トンネルは東京変電所脇に深さ16.5mの立坑を掘削し、そこから国鉄線の下に内径2.3mのヒューム管を推進工法により設置した。立坑脇には東京変電所から延びる既存の送電ケーブルダクトがあり、そこに穴を開けて東京地下駅までの送電ケーブルを分岐させた。立坑付近には古い建物の基礎などが残存しており、撤去したガレキの量は計36立方メートルにものぼったという。

(つづく)
概説だけで1ページ使ってしまうとは・・・いつになったら終わるんだ・・・
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