第26回仙台新幹線車両基地まつり(2010年7月24日)
公開日:2010年08月17日20:12

久しぶりに首都圏以外に関する内容となります。
去る、2010年7月24日に宮城県にある東北新幹線の新幹線総合車両センターの公開イベント「第26回仙台新幹線車両基地まつり」が開催されました。今回このイベントに行ってまいりましたのでその様子をレポートしたいと思います。
■新幹線総合車両センターの概要
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宮城県宮城郡利府町にあるJR東日本の新幹線総合車両センターは東北・山形・秋田の各新幹線の車両の留置とJR東日本の全ての新幹線車両のメンテナンスなどを行う施設です。施設があるのは仙台駅から北東に6kmほど進んだ東北本線利府支線新利府駅の前で、新利府駅には施設内に直結する専用改札口(通常は一般利用不可)が設置されています。施設内には留置線、工場設備のほか乗務員の教育を行う総合訓練センター、線路のメンテナンス資材を扱う仙台レールセンター・仙台新幹線保線技術センターが併設されており、勤務する従業員数はJR東日本・関連会社を合わせて1200名を越える大規模な事業所となっています。
なお、施設の西側にある留置線には常に数編成の新幹線が止まっておりダイヤが乱れた際はここから臨時列車を出したり、逆に車両故障を起こした列車を収容したりすることが可能となっています。(ちなみに、今回行きで利用したE2系+E3系の編成の「やまびこ47号(東京駅9:32発)」はE3系側の行先表示器が途中で不具合を起こしたため急遽仙台駅で切り離しを行いこの施設に収容されました。)
■仙台新幹線車両基地まつり



台車工場内外に展示されていたE5系「はやぶさ」(上・下左)とE926形「East i」(下右)
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この新幹線総合車両センターの一般公開イベント「仙台新幹線車両基地まつり」は毎年夏(7月の下旬)に行われているもので、今年で26回目の開催となります。今回は来る12月の東北新幹線新青森駅延伸にあわせて導入される新しい新幹線E5系「はやぶさ」の展示のほか、工場内での作業の実演、JR東日本や近隣の鉄道会社によるグッズの販売などが行われました。また、事前応募制で併設されている総合訓練センターのシミュレータの体験、E2系・E4系を利用した体験列車などのイベントも行われました。

台車工場内部。新品の一体圧延車輪が山積みになっている。
施設内の建物は台車工場、組立工場、塗装工場(車体)の3つに分かれており、台車工場は工場建屋3棟全体の面積の半分を占める大きな建物となっています。このような構成になっているのは新幹線のメンテナンス体制と関係があります。JR東日本では新幹線車両に対して以下の4つの検査を決められた周期で行っています。
仕業検査(重要部品の目視点検):2日以内に実施
交番検査(車両全体の目視点検・計測):30日または走行距離3万km以内
台車検査(台車のみの分解検査):18ヶ月または走行距離60万km以内
全般検査(車両全体の分解検査):36ヶ月または走行距離120万km以内
このうち、台車検査は在来線車両には存在しないメニューです。新幹線車両は超高速かつ長距離を走行することから特に台車など足回りのメンテナンスは安全性確保の上で非常に重要であり、台車に関してはこのような短い周期での検査を行っています。このため、前述の台車工場では車体をクレーンで吊り上げて台車のみを取り外すことが可能なような設備になっており、この結果在来線の車両工場と比較して異様なまでに広い工場建屋が必要になってしまったのです。
台車工場では車体から取り外した台車を部品単位に分解した上で詳細な機能確認や不具合箇所・消耗品の交換などが行われます。今回のイベントでは「車輪転削」、「車軸への新しい車輪の取り付け」、「検査が終わった台車の組立」の3つの作業の実演が行われていました。



左から車輪転削、新しい車輪の取り付け、台車の組み立て
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車輪転削は走行により磨耗したり傷が入った車輪の表面を削って滑らかにするものです。作業は専用の旋盤に車輪をセットして毎分20回程度の速さで回転させ、表面に硬質の刃物(材質はタングステンカーバイトにコバルトを添加したもの)を当てて6~7mm程度の深さを削り取るというものです。
このように車輪転削を行っていくと当たり前ですが車輪直径がどんどん減少していくことになります。そのため、一定の基準を下回った車輪については車軸から引き抜いて処分し、新しいものに付け替えることになります。新しい車輪の取り付けは棒だけの状態になった車軸に新しい車輪を挿入し、専用の圧入機にセットします。そして最大で130トンの圧力をかけながらゆっくりと車軸の指定の位置まで車輪を挿入していきます。左右の車輪の挿入が終わると、搬送台車に乗せられて別の場所に移動して正しい形状に仕上がっているかなどを検査し、台車に取り付けが行われます。
台車の組み立ては在来線の工場のときと同じくまず決められた間隔で車輪を並べた後、その上に台車枠を被せるという順序で行われます。



左からディスクブレーキ用ブレーキパッド、防雪カバー付きの軸ばね、アクティブサスペンション用アクチュエータ
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工場内には台車から取り外された各種の部品が所狭しと並べられています。車輪ディスクブレーキ用のブレーキパッドや増圧シリンダ、防雪カバー(蛇腹状のゴム)の付いた軸ばね、フルアクティブサスペンション用の空気アクチュエータなどいずれも新幹線の超高速走行や東北地方の豪雪地帯の走行に対応する独特なものとなっています。




組立工場内にあった車両部品の数々。左上から時計回りに「パンタグラフ(E3系のPS206型)」「ゴムチューブ状の貫通幌」「車両用の電子基板と検査用の拡大鏡」「展示されていた各形式の座席の生地」
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一方、組立工場では主に車体に取り付けられている各種部品などを見ることができました。新幹線の車両工場として特徴的だったのは工場内に座席の表地(モケット)の縫製を行う部屋があったことです。ここにはJR東日本の新幹線全形式の座席の生地が常備されており、表地が擦り切れたりしたものについては新しく縫ったものに交換しているようです。この日も部屋の中ではミシンを使って表地の縫製作業が行われていましたが、そのスピードは我々素人では信じられないほど速いものでした。



左から鉄道グッズの販売、新幹線戦隊ショー(!?)、E5系ミニ列車
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組立工場ではこのほか各種鉄道グッズの販売や子ども向けのステージイベントやミニ列車などを見ることができました。
なお、工場の南側にある留置線には「こまち」の新型車両E6系が止まっていましたが、今回は残念ながら展示車両とはなっておらず隣を走る利府支線の電車から眺めるだけに終わりました。
▼参考
「第26回仙台新幹線車両基地まつり」の開催について - JR東日本仙台支社(PDF)
機械メンテナンス高度化に関する調査研究 - 社団法人日本機械工業連合会(PDF)
■おまけ:E2系・E3系の連結作業
動画本体へのリンク 音量注意!!
組立工場内にはE3系「こまち」の先頭車の車体があり、連結器の開閉が行われていました。帰りに仙台駅でこの装置を実際に使用するE2系「はやて」とE3系「こまち」の連結作業を動画で撮影しました。
新幹線総合車両センターに関しては以上ですが、今回はこのほかに東北本線や仙石線の車両の撮影などを行いましたので次回以降はそれらについて解説したいと思います。
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