新京成新鎌ヶ谷駅周辺の高架化(2010年6月12日取材)

仮設ホームの新鎌ヶ谷駅に停車中の8800形千葉中央行き

新京成電鉄の鎌ヶ谷大仏~くぬぎ山間では現在線路を高架化する連続立体交差事業が進められています。成田スカイアクセス線開業前の状況を取材しに行った去る2010年6月12日にあわせて取材してきましたので解説したいと思います。

■事業の概要

新京成電鉄はかつて千葉県内に数多く存在した旧日本陸軍鉄道連隊の演習線跡の1つを利用する形で終戦直後の昭和20年代に解説された民鉄路線です。この新京成線は演習線跡を利用していることから京成津田沼~松戸間の全線で地上を走っており、急なカーブが極端に多く存在していることで有名です。
この新京成線の路線のほぼ中央にあるのが新鎌ヶ谷駅です。この新鎌ヶ谷駅は北総線(成田スカイアクセス線)・東武野田線との3社が乗り入れる拠点駅であることから、近年駅前にイオンの大規模ショッピングモールが建設されるなど急速な発展が進んでおり、地上を走る新京成線の踏切に起因する交通渋滞が著しくなっています。また、新京成線の下を走る東武野田線は現在複線化が進められていますが、新京成線側の橋梁が単線分の長さしかなかったため東武野田線の複線化に際してはこの橋梁の改築が必要となりました。このような背景から千葉県などの主導により新京成線鎌ヶ谷大仏~くぬぎ山間3.3kmの連続立体交差事業(高架化)が行われることになり、1999(平成11)年2月に都市計画決定がなされ、現在工事が進められています。この事業が完了すると初富、新鎌ヶ谷、北初富の3駅が高架化されるとともに合計12箇所の踏切が解消される予定です。総工費は約350億円で、完成は2010(平成22)年度の予定(後述するが、これは難しいと思われる)となっています。
なお、同じ鎌ヶ谷市内を走る東武野田線の鎌ヶ谷駅周辺についても高架化が行われており、こちらは2005(平成17)年に工事が完了しています。

■工事の状況
この事業の完成予定は2010(平成22)年度、つまり今年度となっています。しかし、現時点で工事が行われているのは初富駅構内から北初富駅の手前までの区間となっており、これ以外の区間については工事が始まっていないのはもちろんのこと、相当数の未買収地が存在しています。このため、今年度中の事業完成は困難であるものと思われます。

工事ヤードが設置されている初富駅構内 初富駅ホームの松戸寄りから建設中の高架橋を見る
左:工事ヤードが設置されている初富駅構内。
右:初富駅ホームの松戸寄りから建設中の高架橋を見る。2枚とも2010年6月12日撮影。

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初富駅構内は西側が工事の作業スペースとなっており、足場の部材などが山積みになっています。高架橋は初富駅から松戸方面に数百メートル進んだ地点(鎌ヶ谷市役所の脇)から工事が行われており、初富駅のホームからは途中で途切れたコンクリートの高架橋を見ることができます。

新鎌ヶ谷駅ホームの京成津田沼寄りから建設中の高架橋を見る 新鎌ヶ谷駅ホームの京成津田沼寄りから建設中の高架橋を見る
新鎌ヶ谷駅ホームの京成津田沼寄りから建設中の高架橋を見る。左が2009年2月5日、右が2010年6月12日撮影。この間の変化は防音壁の追加、踏切上部への桁の架設(この位置からはわからない)など。
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鎌ヶ谷市役所を過ぎると新京成線は北総線に並行するため半径200mを切る急カーブでほぼ直角に曲がります。ここから北初富駅の手前までは用地が取得できたため2004(平成16)年に仮線へ切り替えた上で旧線路敷に高架橋を建設する工事が進められており、現在は新鎌ヶ谷駅構内の高架橋以外は全てが完成しています。なお、この工事では近年の連続立体交差事業では珍しく仮線切替・高架橋建設ともに上下線分を一括して行っています。これはこの区間が都市再生機構(UR)の区画整理事業地内にあり、用地の取得が容易だったためと思われます。
なお、新鎌ヶ谷駅の直前で交差する東武野田線は新京成線が仮線に切り替えられたことにより掘割を複線分に拡張することが可能となり、2004(平成16)年に新鎌ヶ谷~鎌ヶ谷間の複線化が行われました。

東武野田線と交差する桁は未だ架設されていない 新鎌ヶ谷駅構内は通路と交差する部分の高架橋を現在建設中
左:東武野田線と交差する桁は未だ架設されていない。
右:新鎌ヶ谷駅構内は通路と交差する部分の高架橋を現在建設中。2枚とも2010年6月12日撮影

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新鎌ヶ谷駅構内は東武野田線と交差する桁と新京成線ホーム~改札口を結ぶ通路付近の高架橋が現在建設中となっています。この部分も仮線・高架橋ともに上下線を一括で工事を行っており、現在供用中の仮設ホーム、高架上のホームともに1面2線の島式となります。現在工事が行われている通路付近の高架橋は地下階の新設らしき作業が行われており、完成後は区画整理事業や成田スカイアクセス線の開業による利用客増加に対応した広さを持つ通路・改札口ができるものと思われます。

新鎌ヶ谷駅ホームの松戸寄り 新鎌ヶ谷駅ホームの松戸寄り
新鎌ヶ谷駅ホームの松戸寄り。左が2009年2月5日、右が2010年6月12日撮影。
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新鎌ヶ谷駅の先も高架橋の建設は続いており北初富駅の手前まで工事がほぼ完了しています。現在新京成線は北初富駅を出るとすぐに北総線の下をくぐって松戸方面へ向かっていますが、高架化後もこの構成は変更されない予定です。このため、高架化後の北初富駅は線路を地上に下ろす区間を設けるため現在よりも東側に移設される予定となっています。しかし、北初富駅周辺は未だ用地買収が完了していないため、現時点では何も工事が行われていない状況です。


このように新京成線新鎌ヶ谷駅周辺の連続立体交差事業は区間によって極端に進捗率に差が出ており、今年度中の完成は極めて困難となっています。現時点で千葉県、鎌ヶ谷市、新京成電鉄からは何も発表はありませんが出来上がった高架橋を何年も放置するわけにもいかず、最悪の場合土地収用法による用地の強制買収の可能性も考えられる状況となっています。千葉県内の公共事業は同様の理由から頓挫しているものが多く(東京外環自動車道の三郷~東関道の区間など)、今後どのように推移していくのか注目したいところです。

▼参考
千葉県東葛飾地域整備センター柏整備事務所 主要事業 高架事業
新京成線連続立体交差事業(鎌ヶ谷市都市部都市整備課市街地整備係)
UR都市機構 千葉ニュータウン事業本部:新鎌ヶ谷 まちの概要


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