横須賀線とつなぐ - 総武・東京トンネル(14)


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■総武快速線開業後
▼参考
工事誌(総武線)全般
交友社「鉄道ファン」2003年10月号(通巻510号)「特集:首都圏の通勤形電車物語」

総武快速線東京~津田沼間は1972(昭和47)年7月15日に開業した。これにより劇的に輸送力は増強され、それまで「(ちょっとオーバーな表現だが)東京から遠く離れた未開の地」としか見られていなかった千葉県のイメージがこれを機に180度転換されることとなる。その結果、宅地開発は津田沼を越えて千葉以遠の外房・内房・総武・成田線内まで進行し、7+4両の11両編成でスタートした総武快速線は瞬く間に超満員となってしまい、開業から数年で13両、15両と増車されている。
また、この区間で並行する京成電鉄は総武快速線の開業により、大量に乗客を奪われ経営面で大きな打撃を受けた。京成はこのほか成田空港が反対派(実質は新左翼の過激派)による度重なる妨害で開港が延期されたこと、その損失を補うべく不動産業などの副業に突っ走った末、オイルショックで収支予測が大幅に狂い、一時債務超過に陥いるなど破綻寸前まで経営が悪化した

■東海道線の状況
▼参考
工事誌(東海道線)2ページ

東京駅から神奈川県方面へ続く東海道線は京浜東北線と並行する複々線であったにもかかわらず、総武線と同様深刻な混雑に悩まされていた。これは東京~大船間で東海道線と横須賀線が複線の線路を共用していたことによるところが大きい。工事誌によれば、計画当初(昭和40年代初頭)の時点で予測した昭和50年度の東海道線東京~大船間におけるラッシュ時1時間の列車本数は東海道線27本、横須賀線10本とされ、それでもなお東京~保土ヶ谷間の乗車率は実に340%に達するというものであった。(もちろんこれは数値のみの予測であり、実際にこの本数、乗車率となることはありえない。)よって、総武線の項でも述べた「首都圏5方面作戦」ではこの区間の複々線化と東海道線・横須賀線の分離が絶対条件とされたわけである。


東海道線と他路線の関係(線増完了時点)

複々線化は区間によって方法が異なり、このレポートで採り上げる「東京~品川間」「品川~鶴見間」「鶴見~大船間」に大別することができる。

1、東京~品川間
現在線にほぼ並行して地下トンネルを建設する。

2、品川~鶴見間
東海道線とは別に存在する貨物線(通称品鶴線)を横須賀線に転用する。貨物列車は新鶴見操車場から新たに建設する武蔵野線にバイパスさせる。

3、鶴見~大船間
東海道線に並行している貨物線を横須賀線に転用する。貨物列車は新たに横浜市内陸部(横浜羽沢)を通る新線に通す。

■東京~品川間の線増計画
▼参考
工事誌(東海道線)3・14~18ページ

東京トンネル位置図(濃い青の線)  ※クリックで拡大
(C)国土交通省 <>国土交通省オルソ化空中写真ダウンロードシステムのデータに筆者が加筆

東京~品川間は総武快速線「総武トンネル」と同じく、都心部を通るため用地買収を極力避ける目的で全線地下線で建設することとなった。このトンネル全体を総称して「東京トンネル」といい、東京~新橋間は地上線に沿うような形であり、新橋~品川間は地上線の線路敷にぴったりと民有地がくっついているため、地上線からかなり離れた道路や運河の下を通る形になっている。また、東京駅は総武快速線の地下駅と兼用し、総武快速線と横須賀線は相互直通運転を行うこととされた。

東京トンネル断面図
東京トンネル断面図
※東海道線線増工事誌では海抜(TP)ではなく、地表面からの深さ(GL)を基準に書かれているため本図もそれに従った。

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新設される地下区間は「東海道線の線増」という扱いであるため途中駅は新橋駅1箇所のみであり、新橋~品川間は4kmトンネルが続くこととなる。駅間のトンネルは総武トンネルと同様ほとんどがシールドトンネルであるが、当時の建設技術ではこの長距離を1つのシールドマシンで掘る技術は無かったうえ、全区間を1つのトンネルとしてしまうと換気が十分にできないという問題もあった。そのため、この東京トンネルでは約1kmごとに立坑(たてこう)を設け、建設時はシールドマシンの発進・到達地点とし、完成後は換気所・排水所に転用とすることとした。立坑及び工区ごとのトンネルの名称は以下のとおりである。(なお、東海道線線増の工事誌には詳細なキロ程が書かれていない工区があるため、一部計算で求めた推測値となっているところがある点をご承知願いたい。)

丸の内トンネル:0km000m00~0km387m00
※総武線側にも344m00続く

第1立坑:0km393m00(東京駅の一部)

有楽町トンネル:0km395m00~1km616m00(上り線),1km607m00(下り線)
※途中0km950m00?に有楽町排水所

新橋駅駅部:1km633m50(新橋換気所)~1km954m00(上り線),1km950m00(下り線)

汐留トンネル:1km954m00~2km772m50(上り線),1km950m00~2km775m50(下り線)

第2立坑(汐留換気所):2km780m00?

浜松町トンネル:2km787m50~3km947m50

第3立坑(芝浦換気所・芝浦変電所):3km980m00?

芝浦トンネル1:4km024m00~5km043m00?

田町排煙所(田町排水所):5km048m00?

芝浦トンネル2:5km081m02~5km936m39(上り線),5km054m89~5km925m00(下り線)

第4立坑(品川換気所・品川第1変電所):5km960m00?

開削部(名称なし):5km960m00~6km212m05

地上部:6km212m05~6km442m00)

トンネルの規格は総武快速線と直通する関係上、総武トンネルと全く同一である。工事は1968(昭和43)年より開始された。次回以降はこの「東京トンネル」の各工区について解説していく予定である。

(つづく)
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