東京駅「発電床」
※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。改札口の床を踏むと電気が発生する、その名も「発電床」・・・そんな風変わりな装置の実験が東京駅で行われています。
実験が行われているのはJR東京駅八重洲北口改札口です。改札口周辺の床には少し柔らかめの白いマット(見た目は工事の際に養生用として使われているものに近い)が敷き詰められており、このマットの上を人が歩くとその運動エネルギーの一部が電気エネルギーに変換される仕組みです。この実験はJR東日本と独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が共同で行っており、500キロワット/秒(100ワット電球が約80分間点灯する電力)の発電を見込んでいます。そして、将来的には改札口や案内表示板の電源の一部をまかなうことを目標にしているということです。
圧電素子

床に敷き詰められたマットの中には「圧電素子」と呼ばれる電子部品が内蔵されています。左は圧電素子の例(壊れた目覚まし時計を分解して取り出した)とその構造を示したものです。写真は素子のみですが、通常はこの表面に導線をハンダ付けして通電できるようにします。圧電素子は圧力が加わり素子が変形すると電流が発生する、電流を加えると素子が変形するという性質を持っています。前者の仕組みを利用したのが今回の「発電床」やライター(電気の火花で着火する)、後者の仕組みを利用したのが時計のアラームや防犯ブザーなどに内蔵されている「圧電ブザー」です。圧電素子自体で発生する電気はごくわずかですが、「発電床」はこの素子を大量に敷き詰め、床を踏むとき発生するエネルギーをもれなく電気に変換し、さらに発生した電気を蓄電装置(コンデンサ・バッテリーなど)に蓄えることで実際に機器を動作させることができる形で電気を出力するものです。
ただし、現状では消費する側の求める電力が大きすぎるため、実用できるものとはいえないのも事実です。しかし、現在普及しつつあるICカード式乗車券(Suica・PASMO・etc)では改札機で最も電力を消費する部品であるモーターを大幅に削減することが可能であり、案内表示機も消費電力の少ない液晶やLEDを用いたものが増えつつあることを考えると、「発電床」を利用した機器動作も十分見込めると考えられます。
鉄道は自動車などと比べてエネルギー効率が良い交通機関です。その効果を最大化するには電車の走行以外の消費電力削減も欠かせません。「ホームの屋根は全面ソーラーパネル」「雨水をトイレの洗浄水に利用」といった省エネの努力はすでに一部で行われていますが、近い将来これに「発電床」が加わる日は来るのかもしれません。今後に期待したいところです。

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