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高崎線架線切断・・・原因とその対策

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。

今朝8時頃、宇都宮線の大宮~さいたま新都心間の架線が切れて停電となり、宇都宮線・高崎線・京浜東北線・湘南新宿ラインの各線の運行が停まりダイヤが大幅に乱れたほか、駅間で停まった電車の乗客が体調を崩し、救急車で病院に運ばれる事態になったそうです。


“エアセクション”とは何か?


青い丸で囲んだ部分がエアセクション。矢印の先はエアセクションの位置を示す標識。
JR外房線千葉→本千葉の列車から前面展望。2006年10月10日



エアセクションの構造。上が横から見た様子、下が下から見上げた様子。

上記のニュース記事の通り、架線が切れたのは「エアセクション」と呼ばれる架線の区切り目です。エアセクションは架線を電気的に切り離す場所で、2つの変電所との境目や安全上架線を区切る必要がある駅や車両基地の入口に設置されています。全長は架線柱(架線を支える電柱)1~3間隔分(50~100m)あり、2つの架線を平行に張っています。この部分は2つの変電所から電気を供給しているわけですが、双方の変電所から同じだけの電気を供給してバランスをとることはできません。架線自体が持つ電気抵抗によって変電所から遠い方の架線の電圧が低くなってしまうからです。
この部分にパンタグラフが触れると、電圧が高い架線から電圧が低い架線に大電流が流れることになります。速度が出ている場合は一瞬で通過してしまうため問題はありませんが、万一パンタグラフがぴったりエアセクションと一致して停まってしまった場合、上記の大電流が流れ続けることになります。さらに、この場所で電車が停まった状態から動き出す瞬間には架線に莫大なエネルギーがかかるため、影響はさらに大きくなります。また、パンタグラフが2本の架線に均等に接していない場合もあり、この場合接触が弱いほうの架線との間でアーク(火花)が発生することもあります。
これらの要因により、エアセクションの部分でパンタグラフが停止してしまった場合架線を溶断する可能性が高くなります。

「では、エアセクションをなくしてしまえば?」という声も聞こえてきそうですが、それはできません。もし、数十キロの路線の架線を1箇所も区切らないと工事や事故の際にその路線全部を停電にする必要が出てしまいます。運行を確保するという意味でもエアセクションをなくすことはできません。

セクション外停止位置標識


「セクション外停止位置」標識。架線の渡りを示す記号だけのものもある。
JR中央線神田~御茶ノ水間(交通博物館屋上から)2006年5月4日。

鉄道各社では実際の運行状況などを勘案して、電車が頻繁に停まる場所にはエアセクションを設置しないようにしています。さらに、ダイヤ乱れで電車の間隔が詰まり万一エアセクションの近くで停止しなければならなくなった場合に備え、運転士にエアセクションの位置を知らせる標識も設置されています。(ここ数年増加しており、首都圏ではほぼ全てのエアセクションに設置。)JR東日本の場合、エアセクションの外に黄色い板に架線の渡りを示す記号を描いた標識が各所に設置されています。また、私鉄の中でも特に過密なダイヤである京浜急行の場合、エアセクションから先は編成全車(最長12両)が出る位置まで停車を禁止する標識が設置されています。
さらに、架線自体を太くしたり、張り方を工夫するなどして、多少加熱されたりアークがおきてもすぐには切れないような構造にしているようです。

しかし、このような対策にもかかわらず、毎年数件エアセクションの架線溶断事故が発生しているのが現状です。今後はエアセクション上で停車しそうな場合、その手前で強制的に停車させるようなシステムにするなどソフト面だけでなく、ハード面での制御も必要と思われます。とくに利用者の多い首都圏では早急な対応が必要でしょう。


▼関連記事
東京駅中央線ホームの架線「相変わらず・・・」(2006年12月27日)
→中央線東京駅の入口にある架線の区切り目(FRPセクション)で発生していたスパークについて。

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