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東急大井町線急行と6000系電車の概要
公開日:2008年08月18日22:46

去る、2008年3月28日(金)より東急大井町線で急行列車の運転が開始されました。このブログでもYahoo!ブログ時代に何度もその準備状況をレポートしてきましたが、肝心の急行列車に使われている6000系電車についてがまだ未取材でした。一昨日8月16日(土)にこの6000系に乗車してきましたのでここで記事にしたいと思います。
大井町線急行運転開始の経緯と概要

6ドア車を2両組み込む東急5000系
2008年1月1日あざみ野駅で撮影
東急大井町線は東急田園都市線の二子玉川からJR京浜東北線の大井町駅を結ぶ全長10.4kmの路線です。今回、この大井町線で急行運転が開始されることとなったのは、田園都市線の異常ともいえる混雑が背景にあります。
田園都市線は神奈川県大和市の中央林間から東京都の渋谷を経由し、東京メトロ半蔵門線に乗り入れています。田園都市線は東急電鉄(東急不動産)が開発した「多摩田園都市」の主要な交通機関として建設されたものですが、沿線における東急不動産以外の業者による宅地開発や、あざみ野駅で横浜市営地下鉄ブルーライン(1・3号線)が接続したことから、これらの通勤・通学客を一手に引き受ける形となり、※1田園都市線の最混雑区間である池尻大橋→渋谷の朝ラッシュピーク時の平均乗車率は195%※2と国内では1、2位を争う異常な混雑となっています。これに対処すべく田園都市線は10両編成が最短2分5秒間隔という超高密度で運転されていますが、乗降時間の延びによる電車の“渋滞”が常態化しているためこれ以上の増発は不可能な状況となっています。また、最混雑区間である二子玉川~渋谷間は地下線となっており、用地の都合上複々線化も不可能となっています。
そこで最後の手段として編み出されたのが今回取り上げる「大井町線の急行運転」なのです。これは大井町線二子玉川~大井町間の所要時間が各駅停車で24分となってたものを、急行では途中停車駅を自由が丘、大岡山、旗の台の3駅に絞り、所要時間を18分に短縮するとともに、交差する東横線、目黒線などに乗客をバイパスさせて田園都市線の混雑を少しでも緩和させることを狙ったものです。大井町線はもともと急行運転を前提にした設備ではなかったため、以下の改良が行われました。

2面4線化された旗の台駅
2008年3月16日撮影
1、待避線の設置
等々力駅に上下の通過線、旗の台駅に上下の待避線を設置。ただし、等々力駅は付近にある等々力渓谷へ流れる地下水の影響調査のため工事が遅れているため、暫定措置として上野毛駅に上り線のみ通過線を設置。(詳細はこの記事最下段「関連記事」を参照。)
2、急行停車駅のホーム延伸
急行は各駅停車より1両多い6両編成※3で運転されるため、急行停車駅のホーム延伸を行った。
3、ATC化
大井町線は信号システムがATS(地上信号)だったが、これでは急行運転開始後の最大20本/hの運転に対応できないため、東横線で採用されたCS-ATC(車内信号)に変更した。
ちなみに、戸越公園・九品仏の2駅はホームが5両分に満たないため、ドアを一部締め切って停車していますが、この2駅は急行が通過するため現在もその措置が続けられています。
急行専用車両「6000系」

大井町駅に停車中の東急6000系急行二子玉川行き
大井町線の急行列車には6両編成※3の新型車両「6000系」が使用されています。田園都市線などで使用されている5000系をベースにした車両ですが、5000系の新造開始後5年が経過しているため、その間の技術発展を取り入れた形となっています。

東急6000系先頭部
2008年3月16日二子新地駅で撮影
先頭部はこれまでの東急の車両のイメージから脱却し、「急行」の名にふさわしい鋭角的なスピード感溢れる形状となっています。この部分はFRPの成型品を用いており、運転室の奥行きの拡大とともに踏切事故に対する保護の役割も果たしているものと思われます。


左:6000系車内 ※クリックで拡大
右:ドア上部のディスプレイ ※クリックで拡大
車内は5000系と違い、白や木目調の柄など明るめの色を多用しており、温かみのある雰囲気となっています。また、ドア上部には5000系と同じく液晶ディスプレイが2個設置されており、乗り換えなどの各種案内や動画広告が表示できるようになっています。その下には赤のLEDが埋め込まれており、ドア開閉時に点滅することでドア近傍に立つ乗客への注意喚起を行っています。


左:6000系台車(TS-1019A形orTS-1020A形) ※クリックで拡大
右:東芝製IGBT-VVVFインバータ(デハ6500) ※クリックで拡大
2枚とも2008年3月16日二子新地駅で撮影
走行機器類はVVVFインバータ制御、ボルスタレス台車など5000系とほぼ同じ構成となっています。VVVFインバータは東芝製で、動作音はJR東日本のE233系などに近く、5000系よりもさらに走行音が静かになっています。(このとき私はモーターのない先頭車に乗ったのですが、隣の車両のモーター音は全く聞こえませんでした。)
大井町線の今後の予定
今後、この急行運転の効果を最大化するため、来年6月を目処に田園都市線二子玉川~溝の口間(鷺沼までの計画もあり)を複々線化し、大井町線の電車を溝の口まで延伸する予定となっています。工事は急ピッチで進んでおり、まもなく急行用となる線路が完成する見込みです。これについては今月中に取材を行う予定ですのでどうぞご期待ください。

大岡山駅の発車標
おまけ:この日8月16日は「世田谷区たまがわ花火大会」「川崎市制記念多摩川花火大会」(会場が隣接)の開催日でした。そのため大井町線は午後から臨時ダイヤでの運転となっており、急行は私が乗った大井町16:09発が最終でした。
▼参考:東急大井町線・田園都市線改良に関する東急電鉄のページ一覧
東急電鉄-大井町線の急行運転を開始
大井町線改良・田園都市線複々線化工事 - 東急電鉄
田園都市線の混雑緩和策を積極的に推進します - 東急電鉄
「大井町線改良&田園都市線複々線化」プロジェクト進行中!==for the better TOKYU==
3月28日、大井町線の急行運転を開始、田園都市線の混雑緩和を目指します
編集長敬白: 東急大井町線急行用6000系デビュー。
▼関連記事:東急大井町線・田園都市線改良関係に関する過去の記事一覧
等々力駅地下化とその問題(2006年12月14日作成)
東急田園都市線複々線化(その0)(2007年1月4日作成)
東急田園都市線複々線化(その1)二子玉川駅(2007年1月5日作成)
東急田園都市線複々線化(その2)二子新地駅(2007年1月7日作成)
東急田園都市線複々線化(その3)高津駅(2007年1月8日作成)
東急田園都市線複々線化(その4)溝の口駅(2007年1月8日作成)
東急大井町線九品仏駅の扉締切り(2007年10月11日作成)
東急田園都市線複々線化2008年(2008年1月9日作成)
東急大井町線・急行運転に向けた改良工事(2008年1月11日作成)
東急大井町線・急行運転に向けた改良工事(補遺)+6000系(2008年3月21日作成)
▼脚注
※1:一部で「東急不動産が無秩序に開発を行ったから」と東急不動産に全て原因があるとこじつけて見る向きもあるようだ。だが、このような背景から田園都市線混雑が必ずしも東急不動産だけによるものではない点に注意する必要がある。
※2:乗車率の数字と実際の混雑状況との関係は以下のとおりとなっている。
100%:定員乗車。座席につくか、吊り革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる。 150%:肩が触れ合う程度で、新聞は楽に読める。 180%:体が触れ合うが、新聞は読める。 200%:体が触れ合い、相当な圧迫感がある。しかし、週刊誌なら何とか読める。 250%:電車が揺れるたびに、体が斜めになって身動きできない。手も動かせない。 参考:混雑率-民鉄用語辞典-日本民営鉄道協会 |
※3:このため、急行用の6000系(6両編成)が各駅停車の運用に就くことはできない。
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カテゴリ:東急電鉄の記事

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