第4立坑~坑口~品川駅 - 総武・東京トンネル(29)

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■名称なし(開削部分:5km960m00~6km212m05(L=252m05)、地上部分:6km212m05~6km442m00(L=229m05))
▼参考
工事誌(東海道線)823・824・836・859ページ
交友社「鉄道ファン」2003年10月号(通巻510号)特集「首都圏の近郊形電車物語」
●概説

第4立坑から品川駅ホームまでの位置図 ※クリックで拡大
第4立坑から先は掘削深度が浅いため開削工法で建設されている。東京方は単線シールドトンネル2本の「芝浦トンネル2」と隣接しているため、トンネル中柱の配置は東京方3分の1(6km002m00まで)の区間が3径間、残りが2径間で、地上に建つ変電所・換気所の建物と一体構造となっている。勾配は「芝浦トンネル2」の続きで品川駅へ向けて25パーミルの上りとなっており、品川駅に停車する下り列車はこの付近で力行をやめて勾配に任せて駅進入の減速を行っている。そして、6km212m05で地上に出る。地上部分は巨大なU字溝のような構造となっており、ここから地平レベルまでは30パーミル(建設時)の上り急勾配となっている。なお、総武・東京トンネルは基本的に全てトンネル床に防振ゴムを介して直接レールを固定する「直結軌道」を採用しているが、この開削部分と地上部分のみ新幹線などで使用されている「スラブ軌道」を採用している。
●現地写真

矢印で示した建物が品川第1変電所
第4立坑上部には品川第1変電所があるが、新幹線品川駅の付帯設備に隠れて線路敷地外からはほとんど見えない。写真は芝浦水再生センター屋上の芝浦中央公園から撮ったもので、辛うじて変電所の建物の輪郭が確認できる。

品川駅13・14番線ホームからトンネル坑口を見る。
トンネル坑口は品川駅のホームの至近にあり、ホームの端からも見ることができる。完成から30年以上が経ち、ポータルのコンクリートも年季を感じさせる色合いになっている。トンネル右側は保守用機械の留置線で、主に総武・東京トンネルの地下水対策工事用の機材が置かれている。これについてはまた後ほど別の記事で扱う。
■横須賀線開業と品川駅ホームの変遷

品川駅横須賀線ホーム(手前が14番線、その隣が15番線)
その先、品川駅のホームについても工事誌で触れられているので、ここではその内容に加え横須賀線開業から現在に至るまでの品川駅横須賀線ホームの変遷について述べていくこととしたい。
横須賀線の品川駅13・14番線ホームは東京トンネル(東海道線線増)と同時に建設されたものである。東海道線ホームと新幹線高架橋に挟まれた限られたスペースに建設されたため、S字にカーブしている上全体的に幅が狭くなっている。このホームは地下区間の開業に合わせ1976(昭和51)年10月1日のダイヤ改正から営業を開始した。ただし、列車が入線するのは朝夕のラッシュ時のみ、しかも全列車が東京・千葉方面に折り返すという形で。
なぜこのような開業となったのだろうか?
東京~品川間の「東京トンネル」は1974(昭和49)年に完成している。だが、当初の目標であった東海道線・横須賀線分離運転の要となる横浜羽沢駅経由の貨物線は、騒音公害を懸念する沿線住民の反対運動により完成が大幅に遅れることとなった。一方、東京止まりとなっていた総武快速線は開業早々からラッシュ時は乗車率200%を超える超満員となり、東京駅地下ホームと地上を結ぶエスカレータが乗り換え客で大渋滞となって危険といわれる有り様となっていたのである。そこで、苦肉の策として品川駅ホームの入口にポイントを設置し、13番線のみを使用して総武快速線を品川駅まで延長するという方法が編み出されたのである。前述の通り朝夕のラッシュ時のみの運行となったのは、想定外の開業時期繰上げで国鉄側の人員確保が間に合わなかったためである。
その後、遅れていた貨物線の新設と旧線の新川崎駅(建設時の仮称は新鹿島田駅)新設や軌道強化など横須賀線への転用工事が終わり、1980(昭和55)年10月1日ダイヤ改正からようやく本来の横須賀線ホームとしての使用が開始された。これに伴い前述のホーム入口のポイントも一旦撤去され、品川折り返しの総武快速線も一旦消滅した。

湘南新宿ラインE231系(写真は東海道線での運用時)
時は流れて2001(平成13)年、分割民営化された国鉄を引き継いだJR東日本は山手貨物線を利用して横浜方面と大宮方面を結ぶ「湘南新宿ライン」の運行を開始した。当初は昼間のみの25往復と暫定的なものであったが、池袋駅の立体交差化が完了した2004(平成16)年からは最高速度を120km/hに引上げるとともに一気に64往復に大増発され、東京都心を貫通して神奈川県と関東北部を結ぶメインルートへの変貌を遂げた。
この湘南新宿ラインは西大井駅(正確には蛇窪信号場)から南を横須賀線と共用している。そのため、湘南新宿ラインが増発されるにつれ、線路容量を空けるため総武快速線は東京折り返しの列車が増加し、横須賀線の東京~品川間の列車が減少するという状態が続くようになり、かつての「東京駅エスカレータ大渋滞」が再発することが懸念された。そこで、品川駅横須賀線ホームの隣に片面ホーム15番線を新設するとともに14番線を中線化し、東京駅で折り返している総武快速線を品川駅まで延長することとした。東京方は14・15番線へ分合流するポイントを設置する必要があるが、トンネルへの下り勾配の開始点とホームとの距離が不足したため※、既存のスラブ軌道を撤去して勾配を30パーミルから34.1パーミルに変更しポイントの設置スペースを捻出している。この15番線ホームは去る2008(平成20)年3月ダイヤ改正から使用が開始され、総武快速線の「品川行き」が平日朝ラッシュ時に2本“復活”したほか、日中は品川始発の成田エクスプレスが2本設定されている。先ほど、総武快速線の暫定開業の項で「一旦」と書いたのは以上のような理由による。また、ホーム混雑緩和を兼ねてこの改正以降横須賀線の下り列車は全て15番線に発着するようになった。

品川駅横須賀線ホームの配線の変化 ※クリックで拡大
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▼脚注
※走行安定性を著しく欠くため、勾配の変化中にポイントを設置することはできない。
(つづく)

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