東京総合車両センター夏休みフェア2008/その2
公開日:2008年08月25日22:39

8月23日(土)の東京総合車両センター夏休みフェアの続きです。「その1」の記事で紹介した場所以外の写真です。
※引き続き枚数が多いため一部をサムネイル画像にしています。クリックで拡大します。
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東京総合車両センター夏休みフェア2008/その1
新系列検修棟

新系列検修棟
209系に始まるJR東日本の「新系列電車」はメンテナンス性を考慮した構造となっており、東京総合車両センターもそれに応じた設備が完備されています。その一例がこの新系列検修棟で、車体をジャッキで支えた状態で台車を着脱することができるため、前回ご紹介した車体・台車分離~トレーラー輸送という作業を省くことができます。
今回この場所では軌道自転車の試乗が行われていました。
台車の組み立て実演
車体から切り離された台車は天井クレーンを使って移動し、さらに車輪、モーターなどの部品に分解され、それぞれ専門の検査部門に回されます。ここでは検査が終わった台車の組立作業の実演が行われていました。実演で使われていたのはE231系の付随車の台車TR246形で、重量は約1.5トンあります。


左:微調整を繰り返しながら慎重に車輪と台車枠の位置を合わせる。※クリックで拡大
右:空中を舞う台車 ※クリックで拡大
まず、車輪の端に軸箱(ベアリングが収納されている部分)を取り付け、台車枠の位置に合わせて置きます。そして、位置を正確に合わせながら車輪の上に台車を被せます。その後、車輪と台車枠が分離しないように各所にストッパーをボルトで固定します。ボルトは規定の締め付け強さになると空回りするトルクレンチや電動の工具を用いており、「走行中の振動で緩まない」かつ「締めすぎて破壊しない」という2つの相反する条件を満たすよう工夫されています。

作業員が持っている洗剤ボトルの中に空気漏れチェック用の石鹸水が入っている。
組み立てが終わると、クレーンで台車を移動させ完成後の外観のチェックとブレーキ試験を行います。ブレーキ試験では配管の継目に石鹸水を流し、空気漏れがないかを確かめます。万一空気が漏れてしまうとブレーキ不動作など重大なトラブルにつながるため慎重に確認を行っていきます。
各部品の展示
さらに、同じ建屋内では台車の各部品の展示が行われていました。


左:車輪は形式ごとに違う ※クリックで拡大
右:屋外に並べられた新品の車輪。正確には「一体圧延車輪」という。 ※クリックで拡大
台車から取り外された車輪は亀裂がないかチェックされ、さらにスリップなどでできた傷を専用の旋盤を使って削ります。また、磨耗が進んで規定の直径以下になった車輪は車輪の部分のみを機械で引き抜いて新品と交換します。(以前、大船工場(現在は廃止)でこの作業の実演を行っていましたが、車輪を引き抜くのに必要な強さは約200トンとのことでした。)外にはその新品の車輪がずらりと並べられていました。車輪は形式によって大きさや厚さなどが異なります。

並べられた各種モーター。青い部品の先にギアが取り付けられ、車輪に動力を伝達する。



モーター3種(左からMT61(205系、211系など)、MT68(209系、E217系など)、MT75(E233系)) ※クリックで拡大

回転子が取り外された状態のモーター
台車から取り外されたモーター(部内では主電動機:Main Motorを略してMMと呼ばれる)は分解され、内部の配線に断線がないかチェックしたりホコリなどの洗浄が行われます。モーターも車輪と同様形式によってさまざまな種類がありますが、大きく分けて抵抗制御車両で用いられる直流モーター(直流直巻電動機)とVVVFインバータ制御車両で用いられる交流モーター(かご型三相交流誘導電動機)の2つに大別されます。特に前者は使用とともに内部にカーボンブラシの磨耗粉が飛散し、放置しておくとフラッシュオーバー(配線のショート)などの故障を起こすため念入りに洗浄が行われます。

モーターの回転試験機
点検・洗浄が終わったモーターは元通り組み立てられ、最高回転数までの回転試験が行われます。交流モーターは5000rpm(rpm:毎分の回転数)を超えるような高速で使われるため、このテストは重要になります。この時は安全のため最高回転数の半分である2500rpmで実演が行われていました。



台車修繕場その他写真。左から空気バネ、工作機械(ボール盤)、部品を運搬する台車、廃棄物置場 ※クリックで拡大
東京総合車両センターは品質マネジメントシステム(QMS)の規格ISO9001およびISO9002、環境マネジメントシステムの規格ISO14001を認証取得しています。工場内は工具などが整然と並べられており、事故や不良品の発生させない管理が行われていることをうかがい知ることができます。また、廃棄物に関しても徹底した分別が行われており、日ごろから環境問題に対応した業務が行われていることがわかります。
▼参考:ISO9001・9002・14001について
日本工業標準調査会:マネジメントシステム(ISO9001/14001他)-マネジメントシステム規格とは
その他写真ギャラリー


左:食堂2階の鉄道模型(Nゲージ)・プラレール ※クリックで拡大
右:毎年恒例の東京消防庁の自動車展示 ※クリックで拡大



工場内に並んでいた各種部品(左からエアコンのロールフィルタ?、エアコン本体、連結器) ※クリックで拡大


左:大井工場時代に復元を手がけたナデ6141の絵。現車は鉄道博物館(埼玉県さいたま市)に収蔵。 ※クリックで拡大
右:クハ101-902が置かれていた工場入口の線路。こちらも現在は鉄道博物館に収蔵。 ※クリックで拡大
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鉄道博物館(2月18日訪問)その1 (2008年3月11日作成)
8年前に訪問した当時とは知識の量も見方も全く違うため、同じ工場でも新鮮に感じるものがたくさんありました。今後もこのブログでは鉄道に関するイベントを積極的に取り上げる予定です。
▼参考
2008夏休みフェア『東京総合車両センター 一般公開』開催のお知らせ - JR東日本(PDF)
(おわり)
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