京急蒲田駅周辺連続立体交差化事業

京浜急行の京急蒲田駅周辺では現在線路の連続立体交差化(高架化)が行われています。Yahoo!ブログ時代にこの工事の状況を何度かレポートしましたが、こちらでも引き続きその後の進展についてお伝えしようと思います。
■事業の概要
この事業は現在地上に線路がある京急本線六郷土手~平和島の5.4km(事業区間は4.7km)と空港線京急蒲田~大鳥居の2.1km(事業区間は1.3km)を高架化するものです。この区間には現在多数踏切が存在しており、特に京急蒲田駅付近にある環状8号線と第1京浜は交通量が非常に多いため踏切遮断による交通渋滞が極めて深刻化しています。また、京急本線と空港線が分岐する京急蒲田駅は2面3線の狭小な駅設備であるうえ、両線が平面交差で分岐しているため、列車の増発が限界に達しています。
2014(平成26)年の高架化完了時にはこの区間の踏切28箇所全てが除却され、交通渋滞が解消される見込みです。また、途中にある雑色(ぞうしき)、京急蒲田、梅屋敷、大森町、糀谷(こうじや)の各駅では、高架化にあわせて駅前広場などの整備が行われます。また、京急蒲田駅は上下線が2層構造となり発着番線数が2倍になるとともに平面交差が解消され、優等列車の追い抜きなども行えるなど現在よりも余裕のあるダイヤ構成が可能となる予定です。総工費は1650億円となっており、国が660億円、都が460億円、大田区が200億円、京急が330億円をそれぞれ負担することとなっています。
■京急蒲田駅と周辺の状況
京急蒲田駅は高架橋の建設に合わせ、これまで3回線路を移動しています。切替の手順を以下に示します。
●着工前

2005年10月1日までの配線です。1番線(空港線)から横浜方面へ通じる線路は高架化工事にともない拡張された土地を利用する形でこの2002年に設置されたものです。この線路が設置されるまで横浜方面から羽田空港へ向かう列車は品川方の本線上でスイッチバックして空港線に入線していました。
●第1回切替(2006年10月28日撮影)

2005年10月2日の切替では1番線(空港線)を第1京浜側に設置した仮線に移設しました。2番線(本線下りホーム)とは仮設の連絡通路で結ばれていました。


左:3番線ホーム端から品川方面を見る。 ※クリックで拡大
右:品川寄りの踏切から駅構内を見る。空港線は左のフェンスの裏を通っている。 ※クリックで拡大
●第2回切替(2007年4月15日撮影)

2006年11月26日の切替では2番線(本線下り)を1番線に近づける形で移設しました。本線下りは駅前後で制限速度50~70キロの急カーブが挿入されています。


左:右へ急カーブしていく本線下りの新線。踏切にはまだ旧線の線路が残っていた。 ※クリックで拡大
右:現在は使用停止となった橋上駅舎から旧本線下りホーム跡(画面中央の空き地)を見る。 ※クリックで拡大
●第3回切替(2008年1月2日撮影)

2007年12月2日の切替では残る3番線(本線上り)を2番線に沿う形に移設しました。また、高架橋建設の支障となるためこの切替時に従来の橋上駅舎を閉鎖し、改札口を仮設の地下通路に移設しています。


左:品川寄りの踏切から駅構内を見る。 ※クリックで拡大
右:横浜寄りの踏切から駅構内を見る。右へ分岐するのが空港線。 ※クリックで拡大
●2008年8月28日の状況

高架橋の建設が進む駅構内

第1京浜の踏切。奥に見える橋脚は段違い構造で、京急蒲田駅が2層になることを示している。
2008年8月23日訪問時の状況です。1月時点と比べさらに高架橋の建設が進んでおり、ホーム部分はほとんどが高架橋の構造物に覆われています。また、工事の進展に伴い3番線ホームから駅前の道路に出る改札口(西口)も移動しています。

横浜寄りの踏切から仮立体化された上り線を見る。

環状8号線踏切
京急蒲田駅の南側では環状8号線が踏切で交差しています。この部分は特に事業の緊急性が高いため、暫定措置として単線幅の仮設高架橋を建設し、上り線のみ先行して高架化することとなり、去る2008年5月17日終電後に切替が行われました。これにより、踏切の遮断時間は従来に比べ4割減少しています。

完成後の京急蒲田駅は上図のような島式+切欠きというやや変則的な配置のホームが上下2層で重なる構造になります。これにより空港線と本線の平面交差が解消されるとともに空港線の単線部分が複線化され、さらに本線は優等列車の追い抜きが可能になるなど線路容量が飛躍的に増大します。また、開いた地上スペースは駅前広場(バスターミナルなど)のほか、第1京浜の拡張スペースにも充てられることとなっており、これを利用して京急蒲田駅南側にある国道1号線と環状8号線の交差点は立体交差化される予定です。
■京急蒲田駅以外の状況
京急蒲田駅以外の部分は線路敷ぎりぎりまで住宅や商店が迫っているため、小規模な作業スペースの確保すらままならない状態です。このため、この部分では線路上空に作業台を設置し、現在線の真上に高架橋を建設する「直接高架工法」が採用されています。工事は本格化しており、線路上空には高架橋の構造物が多数立ち並んでいます。

ホーム中央に作業台が設置されている雑色駅
駅構内でも工事が行われており、ホーム・駅舎などは移転に備えて仮設の構造物となっています。また、雑色・大森町の両駅構内にも作業台が設置されています。

2両のドアが締切となる梅屋敷駅
梅屋敷駅はホーム両端に踏切があるため、ホームが4両分の長さしかありません。このため6両編成の普通列車は横浜寄りの2両のドアを締め切っています。(当駅前後には地上子があり、ドア開閉は自動で制御されています。)高架化後は当然ながらホームの延伸が行われる予定で、この締切扱いも見られなくなります。
■ここにもあったぞ!“修悦体”!


左:京急蒲田駅西口改札脇の仮囲い。1月時点と比べ、さらにグレードアップしている。 ※クリックで拡大
右:梅屋敷~大森町間の作業ヤード入口 ※クリックで拡大
日暮里駅や新宿駅の工事で知られる佐藤修悦氏制作のガムテープ文字(通称「修悦体」)ですが、ここ京急蒲田駅周辺の工事現場でもいくつか目にすることができます。工事の進展にあわせて書き換えられているものもあり、今後も注目の的となりそうです。
▼参考
都市高速鉄道 京浜急行本線(平和島駅~六郷土手駅間)及び同空港線(京急蒲田駅~大鳥居駅間)の連続立体交差事業について - 京浜急行電鉄(PDF)
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業
京浜急行本線 京急蒲田駅付近上り線を立体化|東京都
▼関連記事
京急蒲田駅付近連続立体交差化事業(2006年11月3日作成)
京急蒲田駅高架化の状況(2007年4月21日作成)
京急蒲田駅高架化2008年(2008年2月16日作成→2008年3月25日、Impress watch内のコンテンツ「やじうまWatch」でこの記事が紹介されました。)

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