カテゴリ:公園・風景

姿見の池(国分寺市)

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。

姿見の池と横を走る中央線201系電車

E233系が来てしまい調子に乗って武蔵小金井まで行ってしまったので、仕方が無く?中央線をさらに先に進みました。行ったのは西国分寺駅のすぐそばにある「姿見の池」です。この池は中央線の線路のすぐ脇にあります。中央線の上り電車に乗って西国分寺駅を発車してまもなく車窓左側、住宅街の中に見える池がそれです。

姿見の池(東京の名湧水57選) - Googleマップ
→画面中央の森の右端が姿見の池。

「恋ヶ窪」の地名と姿見の池

姿見の池全景
姿見の池全景

 「姿見の池」の名の由来は鎌倉時代、この池のある恋ヶ窪がこの付近を通っていた鎌倉街道の宿場町であった頃、遊女(現在で言う売春婦)たちが自らの姿を映していたという言い伝えによるります。(ちなみに、現在鎌倉街道の痕跡を示すものはほとんど残っていません。)さらに、この池は「一葉松(ひとはのまつ)」という伝承にも登場します。
 鎌倉時代の武将・畠山重忠(はたけやまのしげただ)は源頼朝の平氏追討に際し、いち早く寄りともに従い、本拠地のある埼玉と鎌倉の間を往復するようになります。そしていつしか、この地の遊女・夙妻太夫(あさづまたゆう※現地案内板の読み)と恋に落ちます。しかし、やがて重忠は寄りともに従い出陣。その間に太夫に恋をしたもう一人の男が太夫に、重忠が戦死したという偽りの知らせをもたらし、嘆き悲しんだ太夫はこの姿見の池に投身し亡くなります。彼女の死を哀れんだこの地の人は彼女の墓に1本の松を植えます。その松は枝に一つしか葉をつけないという不思議なものだったそうです。一方、何も知らず凱旋した重忠も同じく彼女の死を哀れみ阿弥陀堂を建て霊を祭ったということです。このようなエピソードからこの地は「恋ヶ窪」と呼ばれるようになります。

▼参考
さんぽみち総合研究所‐府中国分寺コース
多摩川ジョギング道‐国分寺の歴史と文学を辿る道

いったんは埋められ、そして復活した池

復元された恋ヶ窪用水
復元された恋ヶ窪用水

 姿見の池は鉄道とも深い関わりを持っています。1つは1枚目の写真の通り目の前を中央線が走っているということですが、それよりももっと大事なことがあります。それは池の「水」についてです。の池はかつて周辺の湧水、そして武蔵野台地に灌漑用水を提供した恋ヶ窪用水(玉川上水の分水)をもらい、豊かな水を湛えていました。しかし、周辺の宅地化進展などにより流れ込む水は減り続け、昭和40年代に一旦埋め立てられ消滅します。

公園の入口と恋ヶ窪用水湧水口
公園の入口と恋ヶ窪用水湧水口

 それと時をほぼ同じくして、この恋ヶ窪地区の西に武蔵野線が建設されました。普通の列車は地上の高架の上を走っていますが、実はその地下に中央線国立駅との連絡トンネル(国分寺トンネル)が通っています。(中央線八王子駅~大宮駅を結ぶ「むさしの号」の走行ルート)
 このトンネルは住宅地の下を走ることから当然それなりの深さがあり、武蔵野台地の地下にある帯水層(武蔵野礫層)を分断しました。そしてトンネルの西側(地下水流の上流側)では水がせき止められたため地下水位が急上昇します。この付近は「恋ヶ窪」の地名通りやや窪地になっている場所があり、地上の低地になっている部分に地下水が湧き出して住宅が浸水するというとんでもない事態が起きたため、JRは対策としてトンネルに水抜き穴を開け、地下水を下水道に排出する措置をとりました。

「湧水」の文字が入ったマンホール
「湧水」の文字が入ったマンホール

 その後、1998(平成10)年に東京都と国分寺市はこの地域を「国分寺姿見の池緑地保全地域」に指定し、池の復元と周辺の自然保護を積極的に行っていく方針を固め、あわせて捨てられていた武蔵野線トンネルの湧水を姿見の池まで導くことをJRに提案します。トンネル立坑から池までの導水管敷設費の負担はあるものの、この導水により年間数億円に及んでいた下水道料金が今後削減できることから、JRはこれを了承し、2001(平成13)年より復元された恋ヶ窪用水と姿見の池に導水が開始されました。恋ヶ窪用水の遊歩道のそば、導水管のルート上と思しき場所には写真のように「湧水」と書かれたマンホールがありました。これこそ武蔵野線のトンネル立坑から池まで導水していることの紛れも無い証拠です。
 池の周りは自然が豊かで、私が訪問したときも野鳥(主にカワセミ)の撮影をしている方がいました。「武蔵野」の面影を残す貴重な自然、これからも大事にしていって欲しいですね。

▼参考
姿見の池【都名湧水】|国分寺市
東京都環境局 東京都の保全地域一覧 23国分寺姿見の池緑地保全地域
土木学会Web版「行動する技術者たち」第3回「無用の水」が「恵みの水」に! - 土木学会公式サイトPDF版/439KB
東京都環境局 報道発表 JR武蔵野線引込線トンネルの地下水を野川に導水
→ちなみに集水を強化した平成3年は新小平駅水没事故が起きた年。なお、現地の説明看板は雰囲気を壊さないため?か人工的に導水していることには一切触れていない。(リンク切れのためインターネットアーカイブ)

▼関連記事
新小平駅・・・地下水で歪められた駅(2006年12月3日作成)

※2022年1月27日:写真を高画質化・リンク切れ個所の修正(削除されたものは類似ページで代用)・文章の体裁を最新のものに調整しました。
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