等々力駅地下化とその問題

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。


東急大井町線は京浜東北線の大井町駅と東急田園都市線の二子玉川駅を結ぶ10.4kmの路線です。二子玉川駅で接続する東急田園都市線は首都圏でもワーストクラスの混雑率を誇る路線であり、現在混雑緩和のため二子玉川~溝の口間を複々線化し、大井町線の列車を乗り入れさせるための工事が進んでいます。また、この複々線化が完成するのに合わせて大井町線では急行運転が予定されており、それに向けた信号設備の改良や通過線の設置が必要となります。信号設備については現状の地上信号から他線でも使用されているCS-ATCに、通過線は等々力駅と旗の台駅にそれぞれ設置される計画です。

等々力駅地下化に「待った」


等々力駅西側の踏切

通過線が設置される予定の等々力駅は周囲を道路や住宅に挟まれているため、地上での拡張が難しく、駅を地下に移す予定となっています。でも、等々力駅の近くには何がありましたっけ?そうです。等々力渓谷があります。今回の地下化でトンネルが設置される深さは9m。その深さには等々力渓谷や武蔵野線新小平駅でも紹介したように「武蔵野礫層」という帯水層があります。新しい地下構造物はこれを完全に破断し、等々力渓谷の湧水に悪影響を及ぼすのではないかとの声が上がりました。
これに対し、世田谷区主導の下、「等々力駅地下化工事技術検討委員会」が組織され、駅の地下化工事で起きる可能性のある影響やそれを最小限に抑えるための対策が検討されました。



地下化工事の影響とその対策
上:駅の現状と地下水の流れ。
左下:無対策で地下化した場合、地下水の上流側では水位上昇、下流側では水位低下がおきる。
右下:その対策。トンネル内に通水管を設置して地下水流動を妨げないようにする。

委員会では周辺に観測井戸を設置して地下水の流れや等々力渓谷での湧水量などを調査しました。その結果
1、地下水は等々力駅を縦断する方向に流れていること
2、地下構造物により流れが遮断されると上流側では地下水位上昇が、下流側では地下水位低下が予測される。上流側では下水道など地下構造物に悪影響を及ぼしたり、地震のときに液状化が起こる可能性がある。下流側では地下水の枯渇により地盤沈下や等々力渓谷の湧水への悪影響が心配される。
3、その対策として建設時に設置する止水壁の面積を極力減らし、新設地下トンネル内に通水管を設置し、地下水流動を妨げることの無いようにする。
という対策が示されました。個人的には「通水管を通った水が自然の地下水と言えるか?」という疑問はありますが、地下化が決定した以上これは致し方が無いことでしょう。



左:等々力駅構内の観測井戸(囲いの中の茶色い丸い蓋がそれ?)
右:駅から離れた商店街にあった「東急電鉄」と書かれた2つのマンホール(観測井戸)

駅構内ならびに周囲にはこのような観測井戸が設置され、随時地下水位がモニタリングされています。これは工事中・ならびに完成後も続けられ、地下水流動の管理に役立てられることとなります。
また、これらの調査に時間がかかったため等々力駅の地下化および通過線の完成も遅れることになり、その補完として隣の上野毛駅で上り線のみ通過線が設置されることになりました。


これまで3回ほどにわたって東京の地下水と鉄道との関係について見てきましたが、

1、新小平駅水没事故により都市化の進んだ東京でも未だ豊かに地下水があり、かつそれが脅かされているという警鐘が鳴らされた。
2、東京地下駅など地下水に対して全く考慮されていない地下構造物が山ほど残っている。
3、等々力駅地下化など今後の地下開発において、地下水との関係が重要な検討すべき点である。

ということが個人的な「まとめ」ということになりました。(??) みなさんの足の下も日々絶えることなく地下水が流れているというわけです。これを機にもう一度地下水について考え直してみてはいかがでしょうか?



▼関連記事
床から地下水が噴き出す地下駅?(2006年10月15日)
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東京駅総武地下ホーム・・・地下水対策の痕跡(2006年12月2日)
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新小平駅・・・地下水で歪められた駅(2006年12月3日)
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等々力渓谷(2006年12月12日)
→今回の記事と深く関連

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