東京駅総武地下ホーム・・・地下水対策の痕跡

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。


東京駅丸の内口の地下にある横須賀線・総武線ホームです。ホームの床は白いPタイルになっていますが、よく見ると色が違うタイルが数m間隔で無数に並んでいるのが分ると思います。でも、これは壊れたタイルを張り替えたわけではありません。

アンカーの打ち込み跡
実は以前、この部分から床に穴を開けてその下の地面に十数mの深さまでアンカーを打つ工事を行いました。
この記事でも若干触れています。
床から地下水が噴き出す地下駅?(2006年10月15日)

高度経済成長期、東京や大阪などで多量の地下水をくみ上げたことにより地中の帯水層が圧密収縮し、地盤沈下が深刻な問題となりました。地盤沈下が起こると、洪水がおきやすくなったり、建物の基礎が地表に露出したり不等沈下を起こして壊れてしまうことがあります。このため、東京都では1972年に地下水の汲み上げを厳しく規制しました。これにより、地下水位は一気に数十mも上がり、地盤沈下も収まって問題は一応解決したように見えました。
しかし、時を同じくしてこの横須賀線・総武線のような大深度の地下開発がたくさん行われました。この開発は地下水位が低いことを前提として行われたため、その後の地下水位の上昇により、地下構造物は水に漬かったような状態になりました。この東京駅地下ホームの深さは地面基準で-27m。建設当時はこの底面より8m下にあった地下水位は、1999年の時点で底面より12m高い位置になりました。駅の半分は地下水に漬かった状態です。例えるならば地下に埋まった巨大な船とも言いましょうか。これよりあと1mほど上昇するとその水圧により床が破損したり、挙句の果て駅全体が浮き上がる恐れが出たため、前述のアンカーを130本打ち込み、地下駅全体を「係留」したものです。

湧き出す水は川へ

また、トンネルの漏水も極めて深刻になっています。この横須賀線・総武線のトンネルはもともと十分な地下水対策がなされていないこともあり、1日あたり4,000~5,000tというものすごい量の地下水がトンネル内に流れ込んでいます。これは線路の中央にある排水溝を流れる水の様子でお分かりいただけると思います。海が近いこともあってこの水には塩が含まれており、トンネル躯体や線路、信号設備の管理上大問題になるため、駅間のシールドトンネルの区間は既存のセグメントの内側にもう1枚コンクリートのセグメントを設置し、地下水の流入を抑える工事が行われています。総武線区間(東京~両国)はすでに終了しています。また、この水をそのまま下水に捨てるのはもったいないということで、トンネル内に導水管を設置し、地下区間を越えて大井町付近の立会川まで水を流しています。この結果、立会川の水質は向上し、ボラの生息が確認されるなど(「ボラちゃん」と呼ばれましたね)「副産物」も生じています。

なお、同様の問題は新幹線の上野地下駅でも発生しており、こちらは1次対策として浮力に対抗するようホームの下に37,000tの鉄塊を積み、2次対策として東京駅と同じアンカー打ち込みが行われました。また、湧き出した地下水は上野公園の不忍池に導水されています。


次は地下水で本当に浮き上がってしまった駅をご紹介します。

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