カテゴリ:鉄道:民鉄・公営の車両
横浜市営地下鉄グリーンライン
公開日:2008年10月03日00:59

つづいて、日吉駅からは3月に開業したばかりの横浜市営地下鉄グリーンラインに乗車しました。ここでは乗車レポートだけではなく、路線概要や今後の課題についても触れていきたいと思います。
■横浜市営地下鉄グリーンラインの概要
横浜市営地下鉄4号線(愛称:グリーンライン)は東急東横線・目黒線日吉駅から、横浜市内陸部にある港北ニュータウンを経由してJR横浜線の中山駅へ至る全長13.1kmの地下鉄で、去る2008(平成20)年3月30日に開業しました。都営地下鉄大江戸線や大阪市営地下鉄今里筋線などと同様、建設費削減のためリニアモーター駆動の小断面地下鉄となっているのが特徴で、この結果横浜市営地下鉄は1・3号線の第三軌条方式とリニアモーター方式の2種類の地下鉄を持つこととなります。また、人件費削減のため1・3号線と同様ワンマン運転となっており、ATOによる自動操縦やホームドアを備えています。このグリーンラインは港北ニュータウンの主要な交通機関として位置づけられており、現状では全列車4両編成での運転となっていますが、将来の乗客増に備えて車両・設備の双方とも最大6両編成まで対応できるようになっています。
また、2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会第18号答申では、「横浜環状鉄道」として日吉から先はJR京浜東北線の鶴見まで、中山から先は相鉄線の二俣川、JR横須賀線の東戸塚、京急線の上大岡を経由し、みなとみらい線の元町・中華街までの延伸を2015(平成27)年までに整備するべきであるとされています。しかしながら、横浜市交通局は深刻な赤字経営となっており※1、2003(平成15)~2004(平成16)年にかけて行われた「横浜市市営交通事業あり方検討委員会」では「凍結を含めて慎重に検討する」とされており、少なくとも今後10年間この延伸区間の建設が行われる可能性はほぼ無いと言ってよい状況です。
なお、このグリーンラインの建設工事が行われた際、中山駅周辺で最大6cmの地盤沈下が発生し、周辺の家屋に被害が発生しました。横浜市交通局では「掘削のため周辺の地下水位が低下し、軟弱な粘性土が圧密※2して地盤沈下が発生したものと考えられる」としており、被害状況が判明次第、順次補償を行うこととしています。
■構内・車内・沿線風景

地下に新設された東急線・市営地下鉄乗り換え口
6月に乗りに行った「日暮里・舎人ライナー」と同様、今回も1駅だけではその路線の実態はつかめないということで日吉駅から中山駅まで全線乗車しました。グリーンラインの日吉駅は東急線の直下にあり、開業に合わせて東急線のホームから地下の改札口へ抜ける階段が新設されたため乗り換えは非常に便利な構造となっています。この構造は終点の中山駅も同様です。

グリーンライン日吉駅ホーム
ホームは高田駅が片面ホーム上下2層となっているほかは全て島式ホームとなっており、車両基地がある川和町駅は島式ホーム1面2線の脇に留置線2本が並ぶというやや変則的な配線となっています。すべての駅で6両分へのホーム延伸を考慮したスペースが確保されていますが、当面は4両編成での運行であるため、両端各1両分は内装がされておらず、壁や柵で仕切られて入れないようになっています。また、地下駅の場合線路側の壁面には上下2列LEDが埋め込まれており、電車接近時に走行方向に光が流れるようになっています。
郊外を走る地下鉄であるため全体的に線形は良く、駅間ではおよそ70km/h前後の速度で走行します。また、センター北~センター南間、都筑ふれあいの丘~川和町間で地上を走るなど従来のリニアメトロのイメージとは異なった沿線風景となっています。


左:10000形車内
右:ドア脇のディスプレイ
※クリックで拡大
グリーンラインの10000形車両です。リニアメトロは掘削量が少なくできるためコストが削減できる反面、車両も小さくなるため車内の天井が低くなり圧迫感が生じる欠点があります。この10000形では貫通扉や座席の袖仕切りなどに透明な板を多用することで極力車内の見通しを良くして圧迫感を解消できるよう考慮されているようです。※3また、ドアの脇には最近の通勤型電車では当たり前となった液晶ディスプレイが設置されており、駅や乗り換えの案内を行います。(表示内容を見る限り三菱電機製と思われる。)
■利用客数低迷の一方・・・
グリーンライン開業から1ヶ月間の利用者数は平日5.6万人、土休日4.6万人と10.4万人という目標のおよそ半分の厳しいスタートとなりました。しかし、その後は東急目黒線の日吉への延伸などがあり、着実に利用者数は増加している模様で、去る9月26日からは混雑の激しい金曜日の最終電車の後に1本増発されました。また、従来交北ニュータウンからブルーラインを利用し、あざみの駅から東急田園都市線で都心へ向かっていた乗客の一部がグリーンラインへ転移しており、グリーンラインとほぼ同時に開始された東急大井町線の急行運転の効果もあって、今年6月の調査では田園都市線の混雑率が前年比で5%減少したことが報告されています。グリーンラインは今後も港北地区の住民の足として着実に浸透していくことを期待したいところです。
▼脚注
※1:路線バス事業は数年前から路線廃止や民間企業への路線譲渡など大胆な経営効率化を行っている。
※2:中山駅付近には鶴見川支流の恩田川が流れており、もともと地下水位が高く地盤が軟弱であったと考えられる。
※3:このあたりの造作は東京メトロ有楽町線/副都心線10000系や福岡市営地下鉄七隈線3000系とかなり似ている。
▼参考
横浜市 市営地下鉄グリーンライン - 人 to 街 to 暮らしをつなぐ。
→横浜市交通局による紹介ページ
東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について
→運輸政策審議会第18号答申
横浜市市営交通事業あり方検討委員会 トップページ
→「横浜市営地下鉄事業のあり方に関する答申」に4号線(グリーンライン)の事業継続に関する記述あり
横浜市交通局 - 18年度ニュース・リリース 中山駅周辺の地盤沈下
→中山駅の工事により発生した被害について
グリーンライン開業1カ月、乗車人数は目標の半分/横浜市営地下鉄 : 鉄道ブログ : カナロコ -- 神奈川新聞社
→開業後1ヶ月の利用状況
グリーンライン開通後、田園都市線の混雑に変化 - タウンニュース
→グリーンライン開業後の田園都市線の混雑緩和について
▼関連記事
横浜市営地下鉄、ワンマン化の準備は着々(2006年6月30日作成)
日暮里舎人ライナー(2008年7月4日作成)
東急大井町線急行と6000系電車の概要(2008年8月18日作成)
スポンサード リンク
カテゴリ:鉄道:民鉄・公営の車両の記事

千葉モノレール「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」コラボラッピング
2013/05/25 20:51

千葉モノレール「URBAN FLYER 0-type」(2:車内・デビュー記念イベント編)
2012/07/28 23:52

千葉モノレール「URBAN FLYER 0-type」(1:概要・車外編)
2012/07/26 20:31

銚子電鉄2010(2010年8月19日)
2010/12/10 22:57

横浜市営地下鉄グリーンライン
2008/10/03 00:59

秩父鉄道(写真は失敗です・・・)
2008/05/30 18:00

多摩都市モノレール
2008/03/15 22:49

湘南モノレール
2007/10/17 21:33

ちょっと遅いですが・・・夏の江ノ電
2007/10/16 18:33

茨城交通湊線第三セクターで存続へ
2007/10/02 22:35
<<<新しい記事:横浜線開業100周年
古い記事:東急目黒線延伸区間(武蔵小杉~日吉)>>>
最新記事 

羽田空港アクセス線建設工事2023②大汐線改修区間の現状
2023/05/31 17:38

羽田空港アクセス線建設工事2023①前史
2023/05/24 18:15

「未来へのレポート」は15周年を迎えます -皆様への感謝と次の目標-
2023/05/17 12:00

青梅駅新ホーム使用開始と東青梅駅単線化工事(2023年5月3日取材)
2023/05/08 12:01

京急大師線大師橋駅地下化工事とその他区間の現状(2023年3月19日取材)
2023/05/05 08:03

みなとみらい線元町・中華街駅留置線工事開始(2023年1月11日取材)
2023/04/14 17:30

武蔵小杉駅横須賀線新下りホーム使用開始(2022年12月28日取材)
2023/04/07 20:34

埼玉県三郷市のマンホール
2023/04/05 12:15

東武野田線高架化工事(2021~2023年取材)
2023/04/02 15:12

よみうりランド「ジュエルミネーション」
2023/03/31 19:18
月別アーカイブ
全記事タイトル一覧
お知らせ
当サイトに関連するTwitterアカウントのうち、筆者個人のアカウント(@takuya870625)は4月30日をもって運用を終了いたしました。長らくのご愛顧ありがとうございました。当サイトに関する最新情報は「未来へのレポート 公式(@Rf_notify)」および調査速報アカウント「未来へのレポートNOW(@Rf_now)」にてご覧ください。→詳細はこちら2021年以前の記事について、記事のレイアウトの一部やURLを最新記事と同様になるよう修正を進めています。古いURLでアクセスされた場合変更後のURLに自動転送されます。(2023,04,19)
過去のお知らせ一覧
公式Twitter