発車メロディサイトが危ない!(1) - JASRACが警告!

鉄道趣味のジャンルの1つとして「発車メロディ」というものがある。現在、この発車メロディにまつわる重大な問題が発生している。今回はその経緯とそれに対する筆者の主張を述べたいと思う。
■発車メロディの歴史
発車メロディとは電車が発車する際に放送される合図音(ベルやブザーの場合もある)のことで、1990年代から首都圏のJR線を中心に導入が進み、現在は全国各地の鉄道会社へと広がっていった。また、市民グループなどの働きかけなどもありその地域限定のメロディも次々と開発され、ある種の「名物」へと発展しているものもある。一方、1990年代後半より、インターネットが個人の間へ広がるにつれ、これらの発車メロディを録音し、それをWAVE・MP3などの形式でネット上に公開することが盛んに行われ、鉄道趣味の1ジャンルとして確固たる地位を築いていった。その証拠にYahoo!JAPANのカテゴリ「鉄道 - サウンド」にも発車メロディを扱っているサイトがいくつか登録されている。また、このような盛り上がりを受け、メロディの制作会社もメロディの原版をCDとして発売したり、着メロ・着うたとして配信するなどビジネスとしても十分成立しうる規模となっている。
■JASRACによる警告と著作権法
だが、この盛り上がりに水を差すかのように今月初め、衝撃的な「事件」が起こった。1990年代中ごろから発車メロディを公開している老舗のサイトに社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)から公開中止要請が行われ、そのサイトでは全てのサウンドファイルの公開を中止してしまったのである。そのサイトは高音質で発車メロディの公開を行っていたことから当初は「CDの音源をコピーして使っている」と誤認されたものだと考えていたのだが、今週に入り音質の善し悪し関わらずそのほかの発車メロディ公開サイトにも次々と公開中止要請が行われ、結果的に現在管理がされているサイトに関してはほとんどがサウンドファイルの公開中止に追い込まれている。
著作権法第2条によれば「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされている。よって発車メロディも創作性があるから現行の著作権法が対象とするところの「著作物」となり、Web上での無許可掲載は法律に違反していることとなる。よって今回の措置はある意味当然と言えば当然であろう。では、なぜ公開から10年も経った今頃制裁が発動されたのだろうか?あくまで筆者の推測でしかないが以下のような理由が考えられる。
1、CD発売
個人が運営する発車メロディサイトのほとんどは非営利で運営されており、一方でこのようなサイトが出現した当初は現在のように制作会社はCDを発売しておらず、権利者が実害(金銭的損失)を被ることも無かったため公開が半ば黙認されていたものと考えられる。だが、2004年にテイチクエンタテイメントから「JR東日本 駅発車メロディー オリジナル音源集」のCDが発売され、その後もいくつか続編が発売されたことからこれら個人サイトがCDの売り上げ、さらには権利者側(JASRAC・レコード会社・曲の制作者など。以下同。)の収益に直接影響する可能性が出てきたのである。
2、音質の向上
近年駅の放送機器更新と録音機器の性能向上が進み、CD(=元の音源)と遜色の無い音質が簡単に得られるようになった。すなわち、これをWeb上に公開すれば、わざわざCDを購入しなくともCDとほとんど同質の音をタダで聞くことができてしまうのである。
こうなってくるとやや乱暴な言い方だが「権利者側にとっては個人サイトの存在が邪魔でならない」という状態になってくる。このような理由から、今回の制裁発動となったものと考えられる。
■警告を受けたら
前述のとおり、発車メロディと言えども無許可でのネット配信は著作権法違反となる。警告を無視して公開を続ければサイトの削除のみならず訴訟を起こされ、多額の損害賠償を請求される恐れもある。よって今回の措置には感情的に反発したり、音声ファイルの公開を強行しては決してなら無い。
なお、発車メロディサイトの中には長らくメンテナンスがなされず、放置状態のものも多数見受けられる。このうち、レンタルサーバを使用しているものでページ上に管理人への連絡先(メールアドレス)が明記されていない、もしくはメールを送信しても応答が無い場合、確実にサーバの運営会社やプロバイダへ削除依頼が行き、最悪の場合管理人が知らない間にサイトのデータ全てが削除されてしまう。(実際に1件この措置が取られたと思しきサイトを発見している。)この記事をご覧の方でもし発車メロディの公開ページを長らく放置している場合は、一刻も早く違反となっている全ファイルをサーバから削除するとともにサイト全体のバックアップを取ることを強くお勧めする。
また、BVE Trainsimなど効果音として発車メロディを用いている場合も厳密には無許可での配布となり、違反とされる可能性がある。さらにJASRACの「F&Q」のページによると「ビデオで偶然収録されてしまった音楽も申請が必要」と主張されており、例えば駅のホームで電車の到着~発車のシーンを撮影する場合必然的に入ってしまう発車メロディに関しても違法とされる可能性がある。(例えば私がYahoo!ブログ時代に作成したこの動画もこの主張に厳密に沿うならば違法となる。)
次の記事では今回の措置に対する筆者の主張を述べていく。
(つづく)

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