東急東横線代官山~渋谷間地下化工事(2009年3月21日取材)



去る、2008年6月14日、小竹向原~渋谷間に東京メトロ副都心線が開業しました。この副都心線は3年後の2012年より、渋谷から東急東横線へ直通する計画となっており、現在東横線代官山~渋谷間の地下化及び急行・特急停車駅のホーム延伸(10両化)が進められています。本記事では前者の地下化工事に関してレポートしたいと思います。(なお、本記事は今年3月下旬時点の情報を基に作成しているため、さらに工事が進んだ現在とは異なっている個所が多々あります。ご了承ください。)

写真1枚目:唐突にレールが終わる副都心線渋谷駅の南端。3年後の今頃は、ここから「元町・中華街行き」の列車が発車していくはずだ。(2008年7月6日撮影)

■地下新線の計画

東横線代官山~渋谷間の線路位置。黄色の線が現在線、赤色の線が地下新線(一部現在線と重複している)を示す。
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(平成元年)に筆者が加筆

地下化されるのは東横線代官山駅の渋谷寄りから先の区間です。平面上のルートは代官山駅から、並木橋(八幡通り)付近までは現在線の直下を通り、その後S字カーブを描きながら民有地を横切り、明治通りの地下に入ったのち、既開業部分である副都心線渋谷駅の南側に接続します。現在線はJR山手線を越えると急カーブで進路を東から北へ変えていますが、地下化後も急このカーブは残ることになります。


地下新線のトンネル断面と工法

一方、縦方向のルートは代官山駅の中ほどから線路は徐々に高度を下げ、渋谷1号踏切の直前で地下に入り、そのまま渋谷川と交差するまで下りが続いたのち、わずかに水平な区間を経て勾配上にある副都心線渋谷駅に接続します。この水平部分は駅入口の分岐器(ポイント)を設置するスペースであると思われます。使用される工法は代官山駅東側の地下入口からJR山手線の交差部分までが開削工法、そこから渋谷駅手前の水平部分までがシールド工法、そこから副都心線渋谷駅までが開削工法となっています。
このうち、シールド工法については鹿島建設と川崎重工が共同開発した「アポロカッター工法」が使用されます。この「アポロカッター工法」は長方形に近い2つのシールドトンネルが一体化した構造で、従来の正円形のシールドトンネルと比較して掘削断面を削減することが可能です。掘削はシールドマシンの先端に取り付けた高速(最大50m/分)で回転する切削ドラムで地盤を削りながら行う方式で、深部の固い地盤でも十分耐えうるものとなっています。このような前例のない特殊な構造となったのはトンネルのルート上に重要な下水道幹線があることや民有地における専有面積(区分地上権)を最小限に抑えるためとされています。

▼参考
円形・矩形・馬蹄形など多様な断面を掘れるシールド掘進機が完成 - 川崎重工PR誌「Kawasaki News」

■工事の様子

代官山駅構内の様子

地下区間へのアプローチ部は代官山駅構内まで入り込んでおり、計画ではホーム中央付近より下り勾配で徐々に高度を下げる形となる予定です。現在代官山駅構内では線路を鉄骨で仮支えしながら、その下を掘削する工事が行われています。線路上には作業がしやすいよう写真のように木の角材が敷き詰められています。


渋谷1号踏切から渋谷方面をみる。正面の煙突は渋谷清掃工場(ごみ焼却施設)。

代官山駅を出た先でも線路下の掘削が行われています。写真の渋谷第1踏切道より先が完全な地下区間となる予定です。


JR山手線との交差部

踏切を過ぎると渋谷川へ向け地面が下がるため、現在線は高架を進むようになります。高架に移るとすぐにJR山手線を鉄橋で越えます。この鉄橋の直下に渋谷駅の南側の開削部から発進したシールドマシンの到達立坑が設けられます。また、JR山手線と並行する道路の下には共同溝が通っており、これが新設トンネルと交差するため移設される予定です。


高架橋の補強工事中

JR山手線を越えた先も並木橋までは現在線の直下を通過します。ここから先は地上掘削が不要なシールド工法ですが、現在線の高架橋の基礎が新設トンネルに支障となるため、その移設工事が行われているようです。なお、この高架橋は東横線渋谷~丸子多摩川(現・多摩川)間が開業した1927(昭和2)年に造られた非常に古いもので、細心の注意を払いながら作業が行われています。


渋谷川と9000系電車。この9000系電車は副都心線直通前に東横線から撤退する模様だ。



並木橋から渋谷駅方向を見る。かつてこの付近には並木橋駅があり、高架橋の欄干にその面影が見られる。

並木橋を過ぎるとトンネルは現在線の下を外れて渋谷川、民有地の下を横切り、明治通りの下に出ます。この付近もシールド工法となるため地上部での掘削等は行われていませんが、トンネルと民有地(ビル)が交差する付近の明治通りの歩道上には数か所舗装をはがした跡が見られました。おそらくトンネル通過に備えて、この舗装をはがした部分からビルの下へ向けて薬液注入を行い、地盤を強化したものと考えられます。


明治通り中央の作業帯

明治通りをそのまま進むと、道路中央に作業帯が現れます。この作業帯は巨大な防音ハウスを備えた大規模なもので、この直下がシールドマシンの発進立坑があるものと思われます。シールドトンネルの掘削は今年4月より開始されており、一部では今月の時点で577mの工区のうち約半分の掘削を終えたと報道されています。
この防音ハウスから先、既に開業済みの副都心線渋谷駅までの目地通り上でも掘削作業が行われています。しかし、途中交通量が多い国道246号線と交差しており、地上を使用する作業は深夜に限定されている模様です。

■東横線跡地を含む渋谷駅の再開発について

東急百貨店東横店3階のホームに進入する銀座線01系。ちょうど左の列車の先頭車があるあたりに新ホームができる。(2008年7月6日撮影)

2008年6月25日の記事で東横線地下化完成後に渋谷駅の再開発が計画されていることをお伝えしましたが、それとほぼ時を同じくして東京都都市整備局より「渋谷駅街区基盤整備方針」として渋谷駅、並びに駅周辺の具体的な再開発計画案が発表されました。それによりますと、再開発計画には先の記事でお伝えした

1、東急文化会館跡地への高層ビル(地上33階・地下4階)建設
2、埼京線・湘南新宿ラインホームを東横線ホーム跡地へ移設し渋谷駅本体へ近づける
3、東急百貨店東横店建て替え


の3点に加えて

4、山手線ホームを拡幅し島式化
5、銀座線ホームを明治通り上に移設し島式化
6、西口駅前広場を通り抜け(R246←→道玄坂方面)ができないようレイアウトを変更


が盛り込まれています。本格的な着手は東横線地下化完了後の2012年以降が予定されており、全体の工期は10年以上とも見積もられています。東横線の地下化以降も渋谷駅の変化はしばらくの間続きそうです。

▼参考
東急線の取り組み「東京メトロ副都心線との相互直通運転に伴う東横線渋谷~横浜間改良工事」 - 東急電鉄
「渋谷駅街区基盤整備方針」の公表について/東京都都市整備局

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