中央線連続立体交差化事業(2009年7月11日取材)



JR中央線三鷹~立川間では現在線路を高架化する工事が行われています。本ブログ(Yahoo!ブログ版)では、2007年9月から11月にかけてその様子をレポートしました。それから2年が経過しているため7月に再び訪問してまいりましたので、ここに記事にしたいと思います。

写真1枚目:上りホームも一部完成した武蔵小金井駅と地上ホームに到着するE233系。

■高架化工事の概要

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高架化される区間の地図(Googleマップ)

中央線三鷹~立川間の連続立体交差化事業は1980(昭和55)年から調査が開始され、1994(平成6年)の都市計画決定を経て、2002(平成11)から工事が行われています。この事業では現在地上を走っている中央線の三鷹~立川間(掘割・盛土により既に立体交差化されている国分寺~国立間を除く)の13.1kmを高架化し、18か所存在する踏切を解消するものです。中央線はラッシュ時に日本一過密な1分50秒間隔で列車が運行されており、高架化が完成すると“開かずの踏切”が解消され、交通渋滞の大幅な緩和が期待できます。
なお、大元の計画では当区間の複々線化も併せて計画されていましたが、用地や費用、環境面の問題等クリアすべき課題が多いため、現在は「複線のまま高架化」にとどまっています。複々線化については2000(平成12)年の運輸政策審議会第18号答申において、京葉線を延伸する形で地下新線を設けることにより行うべきとの方針が示されており、「2015(平成27)年までに整備着手することが適当」と位置付けられています。(本ページ末尾の「参考」に示した小金井市のホームページに掲載されている断面図では建設中の高架線の下にトンネルの位置が描かれています。)


仮線と高架化のイメージ(Yahoo!ブログ版から転載)

高架化はまず旧来からある複線の線路の脇に仮線を1本敷設し、空いたスペースに1本ずつ高架橋を建設するという手法が採られています。下り線については2007年7月1日に三鷹~国分寺間、2009年1月11日に国立~立川間がそれぞれ高架化が完了しており、現在は上り線の高架橋建設が鋭意進行中です。そして、来る2009年12月5日には三鷹~国分寺間の上り線が高架化される予定となっており、予定通り来年度の事業完成が迎えられる見込みとなっています。

■現在の工事の様子

●武蔵境駅

上り線も完成した武蔵境駅のホーム。ホーム中央から現駅舎へ通路が伸びる。

着工前の武蔵境駅は片面ホーム2面の間に中線1本が入り、下りホームは西武多摩川線と共用するやや変則的な構造でした。このような構造となっていたのは西武多摩川線がほかの西武鉄道の路線とは独立していたため、JR線を経由して車両を出し入れする必要があったためです。(中線は車両の受け渡しのための待機場所となっていた。)高架化後は中線がなくなり、駅前後も直線が続く一般的な構造の駅となります。7月訪問時にはすでに上り線の新ホームが完成し、あとは切り替えを待つだけという状態となっていました。駅舎は当面の間現在のものをそのまま使用するるようで、上り線の新ホームの中央に現駅舎への連絡通路が設置されています。


高架下の連絡改札口

中央線と並行している西武多摩川線も2006年12月9日に高架化されており、2008年には駅施設が拡張され、1面2線のホームとなっています。また、高架下にはJR側の改札内と直接出入りができる連絡改札口が設置されました。中央線との連絡線は高架化工事に伴い一時休止となっていますが、工事の完了後にこれも再開される予定となっています。

●東小金井駅

上り線ホームが完成した東小金井駅

着工前の東小金井駅は片面ホーム2面のみの棒線駅でした。高架化では武蔵境駅の中線が当駅に移設され、下り線が片面ホーム、上り線が島式ホームの2面3線の構造となります。7月訪問時は現在の地上線に支障する一番北側の上り本線外側の柵以外はすべて完成しており、武蔵境駅と同様あとは切り替えを待つのみの状態となっていました。なお、前回訪問時(2007年)の記事でもお伝えしましたが、東小金井駅は高架化工事に際して上下線のホームをつなぐ通路が撤去されており、それぞれ別の改札口を持つ形となっています。

●武蔵小金井駅

武蔵小金井駅。中央の囲いの中は改札内通路の一部として使用されている。

武蔵小金井駅は西側に留置線(旧武蔵小金井電車区)があり、着工前は2面3線の構造となっていました。高架化後は上下線とも島式ホームの2面4線に拡張される予定です。西側の留置線はそのまま地上に残るため単線の連絡線が設けられます。また、増設される1線は現在の地上線の跡地を利用して設置するため、12月の切り替え時点では本来副本線となる3番線を暫定的に本線として使用する予定です。このため、駅両端の上り線は将来線路の移設・切り替えが容易なよう直結軌道+ロングレールを使用せず、通常のバラスト軌道+定尺レール(25mごとに継ぎ目を持つ)の組み合わせとなっています。7月訪問時には完成した上りホームの一部が改札内通路の一部として使用されていました。


ホームの立川寄りを見る。左が2007年9月1日の状況、右が2009年7月11日の状況。
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左:3番線の線路は移設が容易なよう定尺レールとなっている。
右:2番線からも東京方面に出られるようATS-Pの地上子が増設されたが、使用開始前のためこのようにカバーで遮蔽されている。

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左:解体前の旧駅舎(2007年9月1日) 右:旧駅舎の跡地 
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左:工事中の駅前ロータリーと高架化された武蔵小金井駅 右:高架下の新改札口
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高架橋がほぼ完成したのに合わせ、2009年1月に駅舎の機能が高架下に移され、旧駅舎は解体されました。この旧駅舎は東京都内の駅では原宿駅、国立駅(2006年解体)に次いで古いものでした。跡地は独立行政法人都市再生機構(UR)の「武蔵小金井駅南口第1地区再開発事業」の一環で駅前と一体的に再開発される予定となっており、現在駅前ロータリーの工事などが行われています。

●国立駅

高架化された下り線ホーム

高架化工事の西側区間の国立駅は下り線が2009年1月11日に高架化され、現在上り線の高架橋の建設が進められています。着工前の国立駅は2面3線の構造でしたが、上り線外側の線路は当駅の東側から武蔵野線新小平駅方面に通じる通称「国立支線」や当駅北側にある鉄道総合技術研究所(鉄道総研)への連絡線へ入る列車の待機場所として使用されており、乗降用ホームとしては機能していませんでした。高架化後は同じく2面3線の構造となりますが、地上時代と異なり外側が本線、内側が中線という扱いになるため上下線兼用の副本線として使用可能となります。鉄道総研連絡線は高架化工事着工と前後して廃線となっており、高架化後は設置されません。跡地は国立市により駐輪場や公園として整備中です。

■今後
着工前の配線図

完成後の配線図
高架化前後の線路配置(上が着工前、下が完成後。)
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:武蔵小金井駅付近の完成時の配線は現時点では不明。上の図は現在あるポイントをすべて残すと仮定してで書いた。

中央線連続立体交差化事業の完成は2010年度の予定となっています。完成の暁には首都圏の通勤輸送を担う大動脈にふさわしい姿に生まれ変わることでしょう。
なお、武蔵小金井駅が現在地上・高架に分かれており、留置線の出入りに制限を受けるためE233系導入で引退予定の201系が暫定的に2編成残存しています。この武蔵小金井駅の高架化完了によりこの車両も正式に引退・廃車となることが予想されます。こちらもぜひ注目したいところです。

▼参考
中央線高架化工事に伴う列車の運休等について - JR東日本(2009年9月18日発表)
鉄道連続立体交差 武蔵野市
JR中央本線(三鷹~立川間)他連続立体交差事業の概要 - 小金井市公式WEB
武蔵小金井駅南口第1地区再開発事業ホームページ - UR都市機構
国立市役所 国立駅周辺まちづくり推進室 JR中央線連続立体交差事業に伴う国立駅周辺まちづくり

▼関連記事
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中央線連続立体交差(2)武蔵小金井駅 (2007年9月11日)
中央線連続立体交差(3)東小金井駅 (2007年9月13日)
中央線連続立体交差(4)国立駅 (2007年11月2日)
中央線連続立体交差(5・終)武蔵境駅 (2007年11月5日)

※2010年6月3日 配線図の間違いを修正
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