東京駅再開発の状況2010年

赤レンガ駅舎北口ドーム頂部に建ち始めた避雷針

現在、JR東京駅では丸の内口の赤レンガ駅舎復原と八重洲口のビル改築を中心とした再開発「東京ステーションシティ」プロジェクトが進められています。当ブログでは2006年よりこの事業についてお伝えしておりますが、去る8月14日と昨日10月10日に再度取材を行ってまいりましたので解説したいと思います。

■丸の内赤レンガ駅舎の復原工事
復原工事中の北口ドーム
復原工事中の北口ドーム。2010年8月14日撮影

丸の内口に建つ赤レンガ駅舎では2008年より太平洋戦争の空襲で失われた駅舎の3階部分を復原する工事が進められています。この工事では空襲での被災直後に「仮のもの」として造られた北口・南口の平面的な八角形屋根を撤去し、被災前の円形ドーム屋根を復原します。また、ドーム内の天井や壁面の装飾についても戦前の写真や設計図などを元にできる限り原形に近い形で再現される予定となっています。また、国の重要文化財ともなっているこの赤レンガ駅舎を今後永きに渡り維持・管理していく観点から、駅舎内部の耐震補強と床下への積層ゴム・オイルダンパを利用した免震装置が組み込まれることとなっており、あわせて敷地の有効活用を図るため2層構造の地下階が建設されることになっています。

中央線ホーム脇で行われているセットバック工事 北口ドーム内の工事の様子
左:中央線ホーム脇で行われているセットバック工事。
右:北口ドーム内の工事の様子。2枚とも2010年8月14日撮影

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赤レンガ駅舎本体の復原工事は2008年の中頃から本格的に開始され、駅舎全体が足場とネットで覆われて見えなくなっています。内部では既存の屋根の撤去とドーム型屋根の骨組みの構築が行われており、足場が徐々に高くなってきていることからその進捗状況をおおよそ推測することができます。また、駅舎背面の中央線1・2番線ホーム側でも工事が行われており、建物に最も接近する北口ドーム部分では線路内に仮囲いが若干張り出しています。この部分では赤レンガ駅舎の免震化に伴うセットバック工事※1が行われている模様です。
一方、駅舎内部の耐震補強と復原も進められており改札口となっている北口・南口のドームでは工事の進捗にあわせて頻繁に通路や券売機の位置が移動しており、通路上空には落下物による事故を防止するため仮設の屋根が設置されています。

▼脚注
※1セットバック工事:免震構造の建物は地震時に非免震構造の建物(地表面に固定)に対して動くためそれに対応するクリアランスを確保しておかないと大地震の際衝突して破壊する恐れがある。ここでは赤レンガ駅舎側の壁面を削りクリアランスを確保している。

駅前ロータリーから避雷針が立ち始めた北口ドームを見る
駅前ロータリーから避雷針が立ち始めた北口ドームを見る。2010年10月10日撮影

こちらは昨日10月10日、日比谷公園で行われた第17回鉄道フェスティバルの帰りに撮影した北口ドームの様子です。頂部には復原完成予想パースに描かれている避雷針が建ちはじめており、すでにドーム部分の骨組みはほぼ完成していることがわかります。

■八重洲口鉄道会館ビル(旧大丸)の解体工事
解体作業がほぼ終わった旧大丸東京店 旧大丸東京店地下の通路
左:解体作業がほぼ終わった旧大丸東京店
右:旧大丸東京店地下の通路

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八重洲口では旧大丸東京店(鉄道会館ビル)の両側に超高層ビル(グラントウキョウサウスタワー・ノースタワー)を建設し、大丸東京店を「ノースタワー」に移転した後、旧店舗の入っていたビルを解体する計画となっています。すでに2008年に大丸の旧店舗から新店舗への移転は完了しており、直後から旧店舗があった鉄道会館ビル建物の解体作業が進められています。この鉄道会館ビルは1954(昭和29)年にまず6階建てで建設され(これは当時の建築基準法の制約によるものといわれている)、東海道新幹線開業後の1968(昭和43年)に12階建てに増築されたという歴史を持っています。
この解体工事では近接する東海道新幹線の線路の防護※2、直下に存在する駅施設や八重洲口と八重洲地下街を結ぶ地下通路を生かした状態で作業を進める必要があることから、作業時間が非常に限定されており2年間にわたり工事が続くという状況となっています。また、建設が古い建物であることから内部にアスベスト等の有害物質が使われている可能性もあり、それも作業を遅くする要因となっているものと考えられます。現在は建物の撤去はほぼ完了しており、工事に伴い一時休止されていた八重洲地下街への連絡通路も徐々に再開されつつあります。今後は跡地にバスターミナルと駅前広場(グランルーフ)の整備が行われる予定となっており、高速バスが多数発着する八重洲口の交通機能の強化が実現することとなります。

▼脚注
※2なお、鉄道会館ビルはその基礎の一部が東海道新幹線の高架橋と一体構造となっていたことから、解体に先立ち高架橋の耐震補強と基礎を分離する工事が行われた。

■東京中央郵便局の改築工事
駅側の一部が取り壊された旧東京中央郵便局
駅側の一部が取り壊された旧東京中央郵便局。2010年10月10日撮影

丸の内駅前広場の南側にある東京中央郵便局では2008年から局舎の改築工事が行われています。旧局舎は1931(昭和6)年に建設された大変古いもので、文化財としての価値の高さから改築計画が発表された際は当時の鳩山邦夫総務大臣が建物の保存を主張しました。そのため、当初の前面改築の計画を変更し、駅側に面したの建物の一部が保存される形に変更されました。
昨年の時点ですでに駅側に面していない部分の建物の解体はほぼ完了していましたが、現在はさらに残存部分のほぼ中央(建物が屈曲する部分)も解体されており、裏で行われている高層の新局舎の工事が見える状態となっています。当初はこの部分も保存されることになっていましたが、耐震性や作業スペースの問題などからやむなく一旦解体して後で復元する計画に変更されたものと思われます。この結果、目の前にある赤レンガ駅舎が元々ある建物の構造体を極力生かしながら復原を進めているのに対し、東京中央郵便局はそのほとんどを取り壊して後で再現するという対照的な構図となっています。2008年に発表された改築計画が半ば「政治圧力」による強引な変更であったが故、「ほとぼりが冷めたら当初の計画に戻す」とも取られかねない不体裁な状況となりつつあります。

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▼参考
東京駅が街になる Tokyo Station City
鹿島:東京駅丸の内駅舎保存・復原工事
東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の着工について - JR東日本(PDF・2007年5月8日発表)
東京中央郵便局の再整備計画について - JP日本郵政グループ(PDF・2008年6月25日発表)


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