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JR東西線(片福連絡線)のルート - JR東西線(2)
公開日:2010年09月21日09:04

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■国鉄分割民営化を乗り越え、片福連絡線着工へ
▼参考
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
1981(昭和56)年、国鉄に対し片福連絡線の事業認可が行われた。しかし、その傍らでは1980(昭和55)年に制定された国鉄再建法に基づく特定地方交通線の選定による、赤字ローカル線のバス・第三セクター転換が進められるなど当時の国鉄は経営危機を通り越して分割民営化の方針がほぼ固まりつつあった。こうなると大都市圏といえど国鉄が新線建設の主体となることなどおおよそありえないことであり、結局片福連絡線は着工できないまま民営化された国鉄を引き継いだJR西日本(西日本旅客鉄道)が第1種鉄道事業者(施設の建設・保有・運営を行う)としてその認可を継承した。しかし、発足したばかりのJR西日本に新線建設を自力で行うだけの資金力などあるはずも無く、一方で片町線や福知山線沿線の宅地開発はバブル経済も手伝ってとどまること無く進むという危機的状況に陥った。JR西日本が発足直後に片町線や福知山線に「学研都市線」「JR宝塚線」という愛称をつけたことからもその状況はうかがえる。
このような情勢から兵庫県、大阪府、大阪市、尼崎市、JR西日本、日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)など、官民が一体となり片福連絡線の整備手法について議論が行われた。また、政府でも片福連絡線の建設資金の調達先として1987(昭和62)年に行われたNTTの株式売却益による無利子貸付けや、鉄建公団資金の活用が検討された。その結果、1988(昭和63)年の政府予算で片福連絡線の建設費が計上されるとともに、同年5月には前述の沿線自治体や企業・団体の共同出資により第三セクター「関西高速鉄道株式会社」が設立された。以後、同社が片福連絡線の第3種鉄道事業者(施設の建設・保有を行う)、JR西日本は第2種鉄道事業者(列車の運行を行う)となり、ようやくここに片福連絡線の着工準備が全て整ったのである。
―国鉄が大阪市営地下鉄乗り入れを検討し始めてから実に21年もの月日が経過していた―
■整備手法と施工区分
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年全般
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
より大きな地図で JR東西線(片福連絡線) を表示
1989(平成元)年11月、安全祈願式・起工祝賀会が行われいよいよ片福連絡線は着工を迎えた。ここからは片福連絡線の具体的な整備手法や施工区分について解説することとする。
まず、工事に必要な建設資金は大きく分けて2種類の調達方法がとられており、駅間については日本鉄道建設公団の民鉄線(P線)資金、駅部については関西高速鉄道(株)の出資金、NTT株売却益による無利子融資、銀行融資などの会社調達資金から成り立っている。前者のP線資金は鉄建公団が建設した施設を事業者に譲渡の上、25年元利均等払いにより償還を行うもので、利息の一部を国と自治体による補助する制度があった。また、後者の会社調達資金のうちNTT株売却益による無利子融資は公共施設を建設するための制度で、駅ごとに整備計画を策定し運輸大臣の認可を受ける必要があった。
一方、実際の施工は主に鉄建公団、関西高速鉄道、JR西日本の3者が担当したが、他鉄道線と交差する箇所については各鉄道者局に施工を委託している。詳細は解説すると非常に長くなるのでここでは大まかな構造物の名称と位置(京橋駅起点のキロ程)のみについて紹介することとする。

JR東西線(片福連絡線)京橋~海老江の断面図
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JR東西線(片福連絡線)海老江~尼崎の断面図
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京橋駅 中心0km000m(木津起点44km830m)
(工事起点 0km078m)
開削部 0km250m~0km800m
大阪城北詰駅 0km800m~1km000m(L=200m・中心0km900m)
大川シールド 1km000m~2km040m(L=1040m)
東天満換気所 1km590m
大阪天満宮駅 2km040m~2km440m(L=400m・中心2km140m)
桜橋シールド 2km440m~3km520m(L=1080m)
西天満換気所 2km645m
北新地駅 3km520m~3km805m(L=285m・中心3km620m)
出入橋シールド 3km805m~4km265m(L=460m)
福島換気所 4km315m
新福島変電所 4km380m
新福島駅 4km660m~4km860m(L=200m・中心4km760m)
福島シールド 4km860m~5km740m(L=880m)
吉野換気所 5km550m
海老江駅 5km740m~6km105m(L=365m・中心6km010m)
淀川シールド 6km105m~8km430m(L=2325m)
姫里換気所 7km520m
御幣島駅 8km430m~8km670m(L=240m・中心8km550m)
御幣島シールド 8km670m~10km225m(L=1555m)
御幣島換気所 9km780m
加島駅 10km225m~10km415m(L=190m・中心10km320m)
開削部 10km415m~10km861m
(工事終点 10km900m)
尼崎駅 中心12km453m
なお、上記の構造物の区間長(キロ程)であるがこのJR東西線では今年初めにお届けした京葉線新東京トンネルと同様、鉄建公団発行の工事誌に公団以外が担当した工区の情報がほとんど書かれていない。加えて、このJR東西線では施工主体が細切れに割り振られているため、正確なキロ程の情報がかなり欠落しており断片的な情報を元に計算で求めた推定値になっている箇所が多々あることをあらかじめお断りしておく。
また、この節冒頭の平面のルート図であるが、これまで使用していた国土交通省の国土情報ウェブマッピングシステムのオルソ化空中写真ダウンロードシステムが経費縮減を理由に2010年3月末で閉鎖してしまった※1ため、Googleのマイマップ機能で代替した。マップ上のラインや吹き出しをクリックすると構造物の名称が表示されるのでご参照願いたい。
ここまでがJR東西線(片福連絡線)全体の大まかな解説である。次回以降は京橋駅側から順に各構造物ごとに特徴や現地の様子について解説していくこととしたい。
8月24日・25日の2日間、気温30度超の炎天下を歩き続けて得られた成果に乞うご期待…
▼脚注
※1:代替として国土地理院のサイトでオルソ化空中写真の公開されているが測量法の制約により閲覧機能しかないため、これまでのようにダウンロードして加工したうえでブログに掲載することはできない。
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