大阪城北詰駅 - JR東西線(4)

JR東西線 前人未到の深さで大阪中心部を貫いた地下鉄道のすべて
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■大阪城北詰駅 0km800m~1km000m(中心0km900m)
▼参考
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
大阪都心部を東西に貫く鉄道幹線の建設-JR東西線(片福連絡線)- - JREA1997年 Vol.40 No.5 11~14ページ 
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 縦断面図、92・166ページ

●概説

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京橋駅を出たJR東西線はトンネルに入るとすぐに半径265mの急カーブで北へ進路を変え、大阪城北詰駅に入る。大阪城北詰駅は開削工法で建設された全長200mの地下2層構造半径600mのカーブ上にあり、地下2階のホーム全長は8両編成分の190m(JR東西線各駅共通)で尼崎方面へ向かって5パーミルの下り勾配となっている。駅はほとんどが民有地の下にあり、地上への出入口は駅の両端に計3か所設置されている。当駅の施工は基本的にJR西日本が担当しているが、駅の南側では京阪電鉄(京阪本線)の高架橋と交差していることからこの部分については同社に施工を委託している。また、駅の尼崎方32mは隣接する鉄建公団施工の大阪城北詰~大阪天満宮間の駅間トンネル(大川シールド)の発進立坑となることから鉄建公団が施工を担当している。
京阪電鉄の高架橋は鉄筋コンクリートのラーメン構造となっており、大阪城北詰駅の建設中は既設の基礎杭を仮設の杭で支え、新設の駅トンネル躯体で受け替えている。一方、駅の北側では大阪市公館と1954(昭和29)年に建設された私設美術館である藤田美術館の間にある大阪市の公園予定地内に駅を建設することとなった。しかし、隣接することになる藤田美術館は国宝や重要文化財※1を多数収蔵していることから、工事による建物・収蔵物への被害を懸念して建設反対を前提とした16項目に及ぶ要望書を提出した。そのため、関西高速鉄道および鉄建公団では藤田美術館に対し根強い交渉を続け、美術館への影響を極力与えない工法を採ることや専門機関による工事の影響調査を行うことを約束し、合意を取り付けることに成功した。藤田美術館とは着工後も計24回にわたる協議会が開催され、美術館建物や収蔵品への大きな影響もなく無事工事は完了した。
なお、当駅の建設中の仮称はJR東西線開通により廃止となった地上の駅名をそのまま引き継いだ「片町駅」であった。地上駅の名称を引き継がなかった理由は同一駅名にすると移転扱いとなり新線建設の補助金(今回の場合は(2)の記事で述べた「NTT株売却益による無利子融資」)が得られなかったためといわれている。

▼脚注
※1:曜変天目茶碗(国宝)など。

●現地写真(地上)
土佐堀通の片町交差点。奥の高架橋を京阪電車が走る。
土佐堀通の片町交差点。奥の高架橋を京阪電車が走る。

片町交差点の東側にある1号出入口 片町交差点の西側にある換気塔と一体の2号出入口
左:片町交差点の東側にある1号出入口。
右:片町交差点の西側にある換気塔と一体の2号出入口。

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大阪城北詰駅の1・2号出入口はいずれも土佐堀通の片町交差点脇にある。1号出入口は階段とエレベータが併設されており、2号出入口は換気塔と一体構造となっている。この出入口のすぐ南にはパナソニックをはじめとする大手企業のオフィスが入居する大阪ビジネスパーク(OBP)があるが、地下鉄長堀鶴見緑地線の大阪ビジネスパーク駅や大阪環状線の京橋駅などから歩けることもあり当駅を利用する人は少ない。

大阪城北詰駅と交差する京阪電鉄の高架。高架下はディスカウントストアとなっている。 3号出入口の前から京橋方向を見る。奥の高層ビル群は大阪ビジネスパーク。
左:大阪城北詰駅と交差する京阪電鉄の高架。高架下はディスカウントストアとなっている。
右:3号出入口の前から京橋方向を見る。奥の高層ビル群は大阪ビジネスパーク。

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1・2号出入口を過ぎると京阪電鉄の高架橋と交差する。大阪城北詰駅建設時に高架橋の基礎は杭を造り替えているが、現在高架下はディスカウントストア(京橋ジャパン)が使用しており工事の痕跡を見出すことはほぼ不可能である。京阪電鉄の高架橋を過ぎると大阪城北詰駅は民有地の下を斜めに横切る。トンネル上部は大規模な建築物をを建てにくいためか平屋のホームセンター(コーナン片町店)や駐車場となっている。

大阪城北詰駅3号出入口
大阪城北詰駅3号出入口

尼崎方にある3号出入口は大阪城北詰駅の完成後整備された藤田邸跡公園内にある。出入口の建物は隣接する藤田邸美術館や藤田邸跡公園の門などに合わせて蔵のような外観となっている。

3号出入口の脇にある藤田邸跡公園入口。開園前のため扉は閉まっていた。 大阪市公館。
左:3号出入口の脇にある藤田邸跡公園入口。開園前のため扉は閉まっていた。
右:大阪市公館。

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3号出入口の西側には藤田邸跡公園の門扉がある。藤田邸跡公園は大阪の経済の礎を築いた藤田伝三郎邸の跡地で、太平洋戦争以来放置され荒廃が進んでいたがJR東西線の建設用地となったのを機に大阪市が公園として整備し、公開したものである。開園時間は10:00~16:00で、今回は開園時刻より前に通ったため中を見ることはできなかった。
藤田邸跡公園の門扉からさらに西へ進むと、大阪市公館がある。大阪市公館は1959(昭和34)年の第5回日米市長・商工会議所会頭会議が開催されるのに合わせて建設された迎賓館で、1995(平成7)年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)大阪会議をはじめ、国内外の来賓の接待や各種表彰式などに利用されている。2006(平成18)年からは年1回の一般開放を行っているほか、昨年からは結婚式会場としての利用も可能となっている。

▼参考
藤田邸跡 - ランテック計画事務所
大阪市市民の方へ 大阪市公館について(大阪市公式Web)

●現地写真(地下)
大阪城北詰駅の自動券売機と改札口 左写真の奥の地点から1・2号出入口方向を見る。
左:大阪城北詰駅の自動券売機と改札口
右:左写真の奥の地点から1・2号出入口方向を見る。

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改札口は地下2階のほぼ中央にあり、その左側にみどりの窓口と自動券売機が並んでいる。当駅は1日の乗車人員が約4千人と少ないため、自動改札機は3通路、自動券売機は2台と少なくなっている。今回取材したのは平日(8月24・25日)の夕方ラッシュ時の最中であるが、どの列車も乗り降りする人数はかなり少なかった。

地下2階のホーム
地下2階のホーム

地下2階のホームは上階の改札口と3箇所の階段、1箇所のエスカレータ・エレベータでそれぞれ連絡している。ホームの幅は7mで東京の巨大な地下駅に見慣れている筆者にとってはかなり狭く感じられたが、乗車人員4千人の駅としては適正な規模といえるだろう。ホームは全長に渡り半径600mでカーブしており、電車とホームの間が広く開くため電車到着時は放送でその旨を案内しているほか、ホーム下に並んでいる回転灯が一斉に点灯し、乗降客に注意を促している。

●駅データ
駅名:大阪城北詰(おおさかじょうきたづめ)
住所:大阪市都島区網島町7
乗車人員(降車客は含まない):4340人(2008年度、大阪市の統計資料による)
みどりの窓口:営業時間5:30~23:00

(つづく)
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