大阪城北詰駅~大阪天満宮駅(概説) - JR東西線(5)

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■大川シールド 1km000m~2km040m(L=1040m)
▼参考
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 53~55・172~174・188ページ
片福連絡線大川シールド工事 - 土と基礎1993年5月号43~46ページ
片福連絡線計画について - だいこう 26巻1号(1980年)99~111ページ
●概説
大阪城北詰駅を出たJR東西線は上下線が独立したシールドトンネルとなる。この区間は「大川シールド」と呼ばれており、施工は全区間鉄建公団が担当した。片福連絡線の当初計画ではこの大川を横断するルートについて南北方向に異なる5つの案が示されていたが、最終的に支障となる構造物が最も少ない現行のルートに確定した。
実際に建設されたトンネルは大阪城北詰駅を出た直後は同駅構内の続きで半径600mのカーブとなり、そのまま斜めに大川(旧淀川)の下へ潜り込んでいく。大川の下に達すると短い直線区間を挟んだ後、今度は半径285mの急カーブで西に進路を変え、銀橋(桜宮橋)をかすめて造幣局の玄関前の下を通った後、国道1号線(京阪国道)の下に入る。その後は道路にあわせて半径300mのカーブを描いた後真っ直ぐ進んで大阪天満宮駅へ到達する。勾配は大阪城北詰駅から造幣局付近まで32.9パーミル、造幣局から国道1号線の東天満交差点手前に設けられた東天満換気所(後述)までが2パーミルのそれぞれ下りとなっており、その後は大阪天満宮駅まで26.6パーミルの上りとなっている。なお、当時は造幣局前付近の国道1号線の幅員が狭く、上り線のトンネルの一部が民有地の下に食い込む形で建設されている。
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大川シールドは泥水加圧式シールドを採用しており、掘進は上下線とも大阪城北詰駅から開始された。掘進延長は上り線が1051m、下り線が1040mで、トンネル外径はどちらも7.0mである。当初計画では大川に仮設の桟橋を設置して掘削残土を船で搬出する予定であったが、大川には満潮時に船が通過できない高さの低い橋が多数あることや、大阪湾で頻繁に発生する濃霧などにより安定した運航が期待できないことからやむを得ずトラックによる搬出に変更となった。トラックでの残土搬出に当たっては一度に出る残土の量を削減するため、上下線で同時進行の予定だったシールドの掘進を下り線→上り線の順で1本ずつ行う形に変更している。
また、トンネル掘進に際してはルート上にある大川護岸の鋼矢板や大阪水上バスの桟橋が支障となった。前者についてはトンネル断面を2.5m支障していたことから余裕を見て4.0m引き抜き、強度確保のため鋼矢板の下端とシールド天井までの間に地盤改良を行い存置した。後者に関しては10本ある杭のうち7本がトンネル断面内に位置しており、一度全面的に撤去した上でトンネル完成後に再構築する手法がとられた。
一方、国道1号線の下に入ると今度は東天満換気所の連絡横坑の分岐や、JR東西線と同時並行で工事が進められていた建設省施工の共同溝シールドトンネルや立坑への接近がある。このうち、共同溝の東天満立坑については、立坑が大川シールドの上下線間に割り込むためトンネルとの最小離隔がわずか35cmしかなく、トンネル完成後に立坑側の地中連続壁(鉄筋コンクリート製)が施工されることから、通常のコンクリート製セグメントでは立坑施工時にトンネルが歪む恐れがあった。このため、東天満換気所の連絡横坑部分とともにダクタイル鋳鉄製のセグメントを採用し、地圧の偏りに対する耐力を大幅にアップすることで問題を解決した。東天満交差点を過ぎると、大川シールドの真上を地下鉄谷町線が斜めに横断し、以後大阪天満宮駅まで北側を並行する。この谷町線のトンネルに関しては大川シールドとの離隔が11mあることから沈下の計測以外に特段の対策は行われていない。
●現地写真
→東天満換気所と合わせて次の記事で解説予定。
■東天満換気所 1km590m
▼参考
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 190~195ページ
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●概説
JR東西線ではトンネルの換気方式に中間換気所方式(詳細は別記事で解説)を採用しており、駅間に必ず換気所が必要となる。大阪城北詰~大阪天満宮間の大川シールドでは造幣局付近の国道1号線地下(京橋起点1km590m地点)に「東天満換気所」を設置してトンネルの換気を行っている。


左:東天満換気所の断面図
右:東天満換気所の立坑本体、換気塔、シールドトンネルの位置関係を示した立体図
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東天満換気所は大川シールドの上下線の間に位置する地下7層構造の立坑で幅が10.0m、長さが15.0mの長方形となっている。大川シールド本体とは地下6階の連絡横坑で接続しており、この地点が当区間で最深部となることから地下7階にはトンネルからの排水を受ける貯水槽が設置されている。立坑本体の建設には全面的に開削工法が採用されており、地下6階の連絡横坑掘削には地盤を凍らせて地下水の浸入や崩壊を防止する凍結工法が併用されている。また、シールドトンネル側は連絡横坑設置に伴いセグメントを一部撤去することになるため、この部分は強度の高いダクタイル鋳鉄製のセグメントを採用している。
立坑本体は国道1号線北側の民有地境界付近に建設されたが、当時すでに国道1号線には拡幅計画があり、将来的に立坑本体が全て道路下となることが予想された。そのため、換気塔は立坑本体の近傍ではなく、東に110m離れた大阪市立北稜中学校脇の三角形状の土地に設置することとし、立坑本体と換気塔は国道1号線地下に設置したコンクリートダクトで接続した。このコンクリートダクトは完成直後にすぐ下を建設省施工の共同溝シールドトンネルが掘進するため、沈下の計測を行い問題が無いことを確認している。
●現地写真
→次の記事で解説予定。
(つづく)

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