大阪城北詰駅~大阪天満宮駅(現地写真) - JR東西線(6)

JR東西線 前人未到の深さで大阪中心部を貫いた地下鉄道のすべて
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■大川シールド 1km000m~2km040m(L=1040m)
  東天満換気所 1km590m

▼参考
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~27ページ
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 53~55・172~174・188・190~195ページ
片福連絡線大川シールド工事 - 土と基礎1993年5月号43~46ページ

●概説
前回の記事を参照。

●現地写真(地上)
大川側の藤田邸跡公園入口。開園時間前だったため扉が閉まっておりは入れなかった。
大川側の藤田邸跡公園入口。開園時間前だったため扉が閉まっておりは入れなかった。

大川シールドは大阪城北詰駅の記事でも解説したとおり同駅尼崎方32mを利用して設けられた立坑より掘進が開始された。工事終了後、跡地は藤田邸跡公園として整備され一般に開放されている。今回は開園時間前に訪れたため中を見ることはできなかった。次に大阪を訪れる機会がある際、取材を行うこととしたい。

奥に見える水色の柱が大阪水上バスの桟橋。その周囲も柵の高さが異なる。 大阪市水道局桜宮配水場
左:奥に見える水色の柱が大阪水上バスの桟橋。その周囲も柵の高さが異なる。
右:大阪市水道局桜宮配水場

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藤田邸跡公園を出ると大阪市水道局桜宮配水場をかすめながらそのまま大川(旧淀川)の下へ直線的に進んでいる。シールド掘進時に支障となるため撤去された大阪水上バスの桟橋は、当初の予定通り工事終了後に再構築されており現在も公園と川の境に存在している。ただし、現在この桟橋は使用されていない模様で入口の扉には鍵がかけられている。なお、川との境には転落を防止するために柵が設けられているが、大川シールドと交差する部分のみこの柵の高さがほかと異なっており、トンネル建設時の鋼矢板引き上げの際何らかの手を加えられたものと思われる。なお、河川地下のトンネル横断ということで堤防などに埋設物の表記が無いかを探してみたが今回は発見することができなかった。もしこのようう名標記の存在についてご存知の方がいらっしゃるのであればぜひともご一報願いたい。

大川と桜宮橋(銀橋)。JR東西線のトンネルは写真左側の森へ向かって進んでいる。
大川と桜宮橋(銀橋)。JR東西線のトンネルは写真左側の森へ向かって進んでいる。

川の下を横切ると大川シールドは半径285mでカーブしながら国道1号線(京阪国道)の桜宮橋(銀橋)をかすめていく。
桜宮橋は大正時代の都市計画の一環で建設されたもので、1930(昭和5年)に完成した。川を跨ぐ部分の全長は104mで、軟弱地盤により橋台の強度を十分確保できなかったことから3ヒンジアーチ橋※1という珍しい形式のアーチ橋となっている。この桜宮橋はアーチ部分の色から銀橋と呼ばれており、大阪市民の間ではこちらのほうが一般的な名称となっているようである。
国道1号線の交通量増加にともない1999(平成11)年からは旧橋梁のすぐ北側にもう1本アーチ橋(新桜宮橋・新銀橋)を建設する工事が行われ、2006(平成18)年12月より供用が開始された。新橋梁は建築家の安藤忠雄氏が設計を担当しており、旧橋梁との統一感を出すため新旧のアーチの高さが極力同一になるようデザインされたほか、全溶接構造を採用し新旧の橋梁における技術の違いを感じることができるようになっている。現在は新橋梁が東行き専用、旧橋梁が西行き専用となっており国道1号線は東野田交差点から西側全てが片側3車線に拡幅された。

▼脚注
※1 3ヒンジアーチ橋:両端の支承に加え、アーチの中央にもヒンジが付くアーチ橋。アーチにもヒンジを付けることにより地盤沈下などで両端の支承が移動してもアーチに有害な応力が発生しない利点がある一方、ヒンジが強度上の弱点となるため採用例は少ない。

▼参考
銀橋サイト(大阪国道事務所サイト内)

国道1号線の反対側から見た造幣局(3枚合成)
国道1号線の反対側から見た造幣局(3枚合成)
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桜宮橋の脇を過ぎると大川シールドは独立行政法人造幣局本局の前庭の下を横切る。
造幣局では日本円の各硬貨のほか、内閣府が出している勲章・褒章、各種スポーツ大会で贈呈される優勝メダル類など金属工芸品の製造を行っている。また、敷地内には造幣博物館が併設されており、日本の貨幣流通の歴史を知ることができる。さらに毎年春には大川沿いに全長560mに渡り植えられた桜が見事な花を咲かせており、開花期間中は「桜の通り抜け」として一般開放を行っていることで有名である。

▼参考
独立行政法人 造幣局

東天満換気所換気塔(扉がある東側) 同じ換気塔を西側から見たところ。右奥に見えるのが桜宮橋(銀橋)。
左:東天満換気所換気塔(扉がある東側)
右:同じ換気塔を西側から見たところ。右奥に見えるのが桜宮橋(銀橋)。

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造幣局前を過ぎると国道1号線の北側に設置された東天満換気所の換気塔が見えてくる。換気塔は大阪市立北稜中学校脇の三角形状の土地に設置されており、東側には換気塔内へ出入りするための扉が付いている。肝心の排気口は側面ではなく上部に口が開いているため、一目見ただけではこの建物がJR東西線の換気施設であることはわからない。しかし、扉には「換気所に入る場合は、入口内右横の排煙機一時停止釦を押してください。排風機は10分停止します。」と書かれており、地下にある構造物の換気施設であることはおおよそ見当が付く。

東側から見た国道1号線東天満交差点 交差点内には共同溝の立坑へ通じていると思われる鉄格子付きの穴があった。
左:東側から見た国道1号線東天満交差点
右:交差点内には共同溝の立坑へ通じていると思われる鉄格子付きの穴があった。

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東天満換気所を過ぎると程なくして谷町筋との交差点である東天満交差点に至る。ここから先、海老江駅の手前までJR東西線は国道1号線(曽根崎通)に沿って進むこととなる。JR東西線と同時並行で工事が進められた建設省(現在の国土交通省)の共同溝東天満立坑はこの交差点の東側の道路下にあり、交差点の植え込みの中にはこの立坑へ通じると思われる鉄格子でふたがされた巨大な穴があるのを確認できた。

東天満交差点から先の国道1号線(曽根崎通) 東天満交差点付近にあった曽根崎通のイラストマップ
左:東天満交差点から先の国道1号線(曽根崎通)
右:東天満交差点付近にあった曽根崎通のイラストマップ

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東天満交差点を過ぎると大川シールドの上を地下鉄谷町線が斜めに横切り、以後国道1号線の下を並走しながら大阪天満宮駅に至るが、当然ながら地上からその様子をうかがうことはできない。地上は片側3者線の車道の両側に幅5mの歩道が付く大変広々とした通りとなっており、複線の鉄道2本が余裕で収まる幅員となっている。

●現地写真(地下)
大阪城北詰駅側の大川シールド入口。防水扉が設置されている。 大阪天満宮駅側の入口。ホームからは見えないがこちらも防水扉がある。
右:大阪城北詰駅側の大川シールド入口。防水扉が設置されている。
右:大阪天満宮駅側の入口。ホームからは見えないがこちらも防水扉がある。

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大川シールドは駅間トンネルであるため直接地下の様子を見ることはできない。
ただし、大阪城北詰駅と大阪天満宮駅のホームからはシールドトンネル入口にトンネル全断面を締め切る防水扉が設置されているのを確認できる。この防水扉は当ブログで以前レポートした京葉線新東京トンネルの隅田川立坑のものと同様、大川地下の横断に際して万一トンネルが崩壊した際大川の河川水が堤内地※2に流出するのを防止するため国から設置を義務付けられたものである。トンネル自体がそれほど深くは無いため、扉は一般的なの開き戸となっており通常はシールドトンネル側へ開けた状態で固定されている。なお、JR東西線では剛体架線を採用しているが、扉の締め切り時にこれが動作の支障になる。そのため、扉と重複する部分に関しては剛体架線全体をスライドさせることにより収納可能な構造としている。
余談であるが、JR東西線の各シールドトンネルでは入口にトンネル名が書かれており(今回の場合「大川」)、資料を見ずともトンネルの名称をある程度知ることができる。また、シールドトンネルから換気口が分岐する地点にも「○○換」と書かれたプレートが設置されており、列車内から換気所の位置を容易に知ることができる。(これは非常時の脱出口の位置を示す意味合いもあるものと考えられる。)

▼脚注
※2 堤内地:堤防から町側の土地のこと。堤防により囲まれ、河川の氾濫から守られているという意味から「内」という文字が使われている。

(つづく)
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