明石海峡大橋 - 関西旅行2010(5)
公開日:2010年11月04日22:18

加古川駅を出た後は引き続きJR神戸線で東へ向かいます。ここで、ちょっと寄り道ということで舞子駅で下車して明石海峡大橋を見て行くことにしました。
▼関連記事:「関西旅行2010」1つ前の記事
姫路駅・加古川駅で見た車両 - 関西旅行2010(4)(2010年10月26日作成)
■明石海峡大橋の概要
明石海峡大橋は本州と四国を結ぶ神戸淡路鳴門自動車道のうち、明石海峡(兵庫県の神戸市と淡路島の間)に架かる吊り橋で、1998(平成10)年4月に完成しました。この明石海峡大橋は2本ある主塔の間の長さが1991m※、主塔の高さは297mと吊り橋としては世界一の大きさを誇っています。
●明石海峡大橋の諸元
形式:3径間2ヒンジ補剛トラス吊橋
着工(起工):1986(昭和61)年4月26日
供用開始:1998(平成10)年4月5日
全長:3951m
中央支間長:1991m※1
表 世界の吊り橋上位10位
順位 | 橋梁名 | 国 | 中央支間長(m) | 完成年 |
1 | 明石海峡大橋 | 日本 | 1991 | 1998 |
2 | グレートベルト東道路橋 | デンマーク | 1624 | 1998 |
3 | 潤揚長江公路大橋 | 中国 | 1490 | 2005 |
4 | 青龍大橋 | 〃 | 1418 | 2007 |
5 | ハンバー橋 | イギリス | 1410 | 1981 |
6 | 江陰長江公路大橋 | 中国 | 1385 | 1999 |
7 | 青馬大橋 | 〃 | 1377 | 1997 |
8 | ベラザノ・ナローズ橋 | アメリカ | 1298 | 1964 |
9 | ゴールデン・ゲート橋 | 〃 | 1280 | 1937 |
10 | ヘガクステン橋 | スウェーデン | 1210 | 1997 |
2本ある主塔は明石海峡の海中に設置されており、水深は60m前後あることから海底地盤から主塔の頂部までの高さは約360mと東京タワーの高さ(333m)よりも高いものとなっています。明石海峡大橋では最大で計1万5千トンの自動車荷重がかかる設計となっており、これに橋の構造体自体の質量を加えた荷重をこの2本の主塔と橋の両端にあるアンカレイジ(橋台)で支えています。橋全体に使われた鋼材の総量は27万トン(東京タワー68棟分)、コンクリートの総量は144万立方メートル(東京ドーム1.2杯分)に及びます。橋全体に占める構造体の質量が大きいことから、この明石海峡大橋では部材の軽量化も意識されており一例としてケーブルには直径約5mmの高強度鋼線(引張強度1.765GPa)を開発し、これを約3万7千本束ねたもので橋桁を支えています。
また、明石海峡には幅1500mの国際航路が設定されており、この部分については大型船舶の航行に対応できるよう橋桁の高さを65m以上確保しています。このため、橋梁中央の路面高さは海面から100mという高い位置となりました。このように高所に橋桁が位置することから、設計に際しては風の影響も十分検討されており、道路公団(当時)所有の風洞で模型によるテストを行い、風圧による橋桁のたわみの大きさや自励振動※2の有無が確認されました。その結果、この明石海峡大橋は風速90m/sまで耐えられる設計となっています。
▼脚注
※1:当初の設計では主塔の間隔は1990mとなる予定だったが、工事中の1995(平成7)年1月に橋の直下を震源とした阪神・淡路大震災が発生し、地盤が変移したため全長が1m延びた。
※2 自励(じれい)振動:物体に継続して力が働いているときに振動がどんどん大きくなっていく現象。別名発散振動とも。吊り橋では橋桁の形状により発生することがある。完成直後に崩壊したアメリカのタコマ・ナローズブリッジの例で有名。
■舞子公園から見た明石海峡大橋

移情閣(孫文記念館)と明石海峡大橋
明石海峡大橋直下の海沿いは「舞子公園」という公園になっており、明石海峡大橋に関係した各種施設や記念碑などが設置されています。また、公園内には神戸で活躍していた中国の実業家で貿易商だった呉錦堂が大正時代に建てた別荘である「移情閣」(六角堂とも呼ばれる)があり、1984(昭和59)年からは中国の革命家孫文の記念館として利用されています。なお、この建物は明石海峡大橋の建設に伴い1994(平成6)年に一旦解体され、元の位置から200m南西に進んだ位置に復元されたものです。1993(平成5)年には兵庫県指定重要文化財、2001(平成13)年には国の重要文化財にそれぞれ指定されています。

明石海峡大橋を真下から見上げる
橋の真下もブロック敷きの遊歩道になっており、頭上に伸びる巨大な橋桁を見上げることができます。筆者はこれまで東京のレインボーブリッジや横浜のベイブリッジなどを真下から見たことはありますが、世界一大きな吊り橋ということでそれとは比べ物にならない破格のスケールといえます。
ちなみに、橋の直下の海に面した部分では釣りを楽しんでいる方が多く見られました。この付近ではアオリイカ、タイ、サヨリ、アジなどが釣れるようです。


左:舞子公園の広場から見た明石海峡大橋のアンカレイジ
右:その中にある展望台「舞子海上プロムナード」の入口
真下から橋を見上げた場所の背後には橋桁を吊るケーブルをとめておくアンカレイジ(橋台)があります。アンカレイジは吊り橋の両端に設置されるもので、主塔とともにケーブルを引き止める役割を果たす重要な構造物です。このアンカレイジには「舞子海上プロムナード」という有料の展望施設が併設されており、橋桁内部の通路を通ってアンカレイジから150m海上側まで出ることができます。今回は時間が無かったのと費用節減のため中には入りませんでした。


左:橋の科学館
右:橋の科学館前にある明石海峡大橋のケーブルのカットモデル
JR舞子駅側には明石海峡大橋に関する資料を展示している「橋の科学館」があります。ここでは明石海峡大橋の建設に使用された技術に関する解説や風洞実験で使用された模型、工事の様子を記録した映像などを見ることができます。また、建物の前には明石海峡大橋で使用されている直径1.1mのケーブルの実物大断面模型やケーブルの一部を切り取って造ったベンチが設置されています。やはりこちらも今回は時間と費用の節減のため脇の休憩所を利用するにとどまりました。
次回は明石海峡大橋を後にし、山陽電鉄に乗って引き続き東へ向かいます。
▼参考
橋の科学館
JB本四高速:技術情報:本州四国連絡橋の紹介:明石海峡大橋
阪神国道事務所|ベイ・エリアNET|明石海峡大橋関連情報
舞子公園 - 兵庫県園芸・公園協会
明石海峡大橋~世界最大のつり橋~ - 日本機械学会誌2004年3月号30・31ページ(リンク先は国立情報科学研究所論文情報ナビゲータ“CiNii”)
孫文記念館
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(つづく)
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