山陽電鉄 - 関西旅行2010(6)
公開日:2010年11月23日21:48

明石海峡大橋をあとにし、引き続き神戸方面へ向かいます。ここで、JR神戸線(山陽本線)ばかりに乗るのはつまらないということで、JRの舞子駅ではなく隣にある舞子公園駅へ行き、山陽電鉄に乗りました。
▼関連記事:「関西旅行2010」1つ前の記事
明石海峡大橋 - 関西旅行2010(5)(2010年11月4日作成)
■山陽電鉄の概要
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山陽電鉄は神戸市の西代駅から姫路市の山陽姫路駅(本線:全長54.7km)と山陽網干駅(網干線:全長8.5km)を結ぶ私鉄です。西代駅からは神戸高速鉄道を経由して阪神電鉄(阪神本線)と相互乗り入れを行っており、阪神間のアクセス鉄道という意味では並行する山陽本線(JR神戸線)と完全に競合状態に置かれています。この区間は関西の私鉄では珍しく国鉄分割民営化以前から山陽本線の優位な状態となっており、山陽電鉄は主に地域間輸送に徹する形を強いられています。
1995(平成7)年の阪神大震災以後はさらにこの傾向が強まったため、危機感を持った山陽電鉄では1998(平成10)年より、神戸高速鉄道東西線・阪神本線を経由して阪神梅田駅へ至る「直通特急」の運行を開始し、阪神間を行き来する利用者の取り込み強化を行いました。(一方で同年、それまで相互乗り入れを行っていた阪急神戸線は神戸高速鉄道の新開地駅までの直通に短縮された。※)さらに、山陽電鉄は鉄道事業以外に路線バス・高速バスなどのバス事業や分譲マンションの販売などいくつかの副業を持つことで収益を確保しています。このあたりの事情は首都圏の京成電鉄と同様といえるでしょう。
▼脚注
※:今年3月には休止となっていた神戸高速鉄道新開地~西代間に対する阪急電鉄の第2種鉄道事業許可が廃止され、制度上も山陽電鉄と阪急電鉄の直通運転は完全に廃止された。なお、第2種鉄道事業とは他社の線路を使用して列車を運行する事業のことである。
■山陽電鉄の車両
現在山陽電鉄が所有している車両は「3000系」と「5000系」の2種類に大別することができます。
●3000系


左:3200系(3206-3207-3217)
右:アルミ車体の3050系(3074-3075-3542-3642) 2枚とも山陽須磨駅で撮影
※クリックで拡大
2種類ある車両のうち古い方にあたるのがこの3000系です。メカニズム面は昭和中期の通勤電車としては標準的な抵抗制御となっており、4両または3両の編成を組み、前者は普通列車やS特急に使用されています。車内は一部車両を除きロングシートとなっています。この3000系は製造された年代により「3000系」「3050系」「3200系」にさらに細分化することができ、その中でも車体の材質がアルミ合金のものと普通鋼のものに2文することができるなどバリエーションに富んでいます。
3000系は1964(昭和39)年から1971(昭和46)年にかけて製造された車両で、1964・65年に製造された最初の2編成は国鉄の301系(営団地下鉄東西線直通)と並んで、当時の国内では大変珍しかったアルミ合金製の車体となっています。この先進性は各方面から高く評価されており、3000系は1965(昭和40)年の鉄道友の会ローレル賞を受賞しています。一方、以降の車両は1968(昭和43)年の神戸高速鉄道開業に合わせて製造された車両で、短期間に大量の車両を用意する必要性からコスト低減が強く求められたため、普通鋼製の車体へ逆戻りしています。
1972(昭和47)年からは3000系の基本構造はそのままに冷房を搭載強調文することとなり、形式が3050系に区分されて製造が継続されました。さらに、1981(昭和56)年からは再びアルミ合金製の車体が採用されます。これは当時地元に工場を持つ川崎重工で研究が進められていたアルミ合金の中空押し出し型材を試用したもので、以後1985(昭和60)年の製造終了まで全面的にこの工法が採用されています。
3200系は3000系列の製造で廃車となった車両から機器を流用して作られた車両で、他の車両よりもモーターの出力が小さいことから全編成が3両編成となっており、網干線で運行が多くなっています。車両の外観は3000・3050系の鋼製車と変わりません。
昭和中期に製造されたこの3000系ですが、2004(平成16)年からは内装面を中心にリニューアルが行われており当面の間使用が継続されるものと思われます。
●5000系

山陽電鉄5000系。山陽垂水駅で撮影
5000系は3000系列に代わる新型車両として1986(昭和61)年から製造が開始された車両で、主に阪神電鉄を経由して阪神梅田駅へ乗り入れる直通特急に使用されています。メカニズム面では保守性を考慮して動力方式には抵抗制御の応用版で回生ブレーキが使用可能な界磁添加励磁制御が採用され、車内は並行する山陽本線との対抗を意識してロングシートからクロスシート(当初は固定、後に転換可能型)へ変更されました。
当初、3000系と同じく3両・4両の編成で製造された5000系ですが、その後特急列車を6両編成に増結することになり、後から中間車のみを増備する形で全編成の6両編成化が行われています。また、1998(平成10)年の直通特急運転開始に備えて製造された車両は制御方式が当時登場したばかりのIGBT素子を使用したVVVFインバータに変更され、形式も5030系に区分されています。5030系は1998年から2001年にかけて製造されましたが、その後は不況や利用者の減少などもあり前述の通り既存の車両の更新でしのぐ状態が続いており、今後の増備の計画は今のところ無い模様です。
山陽須磨駅で下車した後は徒歩でJRの須磨駅まで移動し、再びJR神戸線で東へ向かいます。
▼参考
大都市圏のライバル - 交友社鉄道ファン2010年10月号(通巻594号)
など
▼関連記事:「関西旅行2010」
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明石海峡大橋 - 関西旅行2010(5)(2010年11月4日作成)
(つづく)
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