カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > 《番外編》JR東西線
大阪天満宮駅~北新地駅(概説) - JR東西線(10)
公開日:2010年12月07日12:46

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■桜橋シールド 2km440m~3km520m(L=1080m)
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ
大阪曽根崎地下の三事業の同時施工 曽根崎G・F、梅田共同溝、JR東西線 - トンネルと地下1997年4月号31~40ページ
●概説
より大きな地図で JR東西線(片福連絡線)詳細版 を表示
地下鉄堺筋線の南森町駅の下をくぐるとJR東西線は北新地駅まで再び上下線が別のシールドトンネルとなる。このトンネルは「桜橋シールド」と呼ばれており、施工は開業後のJR東西線の施設を保有する第三セクター関西高速鉄道(株)が担当した。トンネルは全区間曽根崎通(国道1・2号線)の直下を通っており、ルート上に存在する阪神高速12号守口線下の一般道路(掘割)や新御堂筋の分岐ランプの基礎杭を避けるため地下20m以上の深い場所を通過している。勾配は大阪天満宮駅の開削部分からの続きで34.5パーミルの急勾配で下りながら西天満換気所(後述)に達した後、2パーミルの上り、そして地下鉄御堂筋線と交差する梅田新道交差点付近からは33.4パーミルの急勾配で上る。カーブは大阪天満宮駅側から半径4000m、5000m、3000m、1500mと緩いものが数箇所挟まっているが、これは上下線間にJR東西線と同時並行で工事が進められていた建設省(当時)の共同溝シールドトンネルが挟まるためである。

桜橋シールドと曽根崎G・F地下歩道・共同溝の位置関係
桜橋シールドの掘進は上下線とも北新地駅端の立坑から開始された。地質はかつての淀川が形成した軟弱な砂や粘土が堆積した「梅田層」と呼ばれる地層が25mの厚さで堆積しており、その下の天満砂礫層には地表面下2.5mの被圧水頭を持つ地下水が分布していた。また、桜橋シールドは発進直後に地下鉄御堂筋線と交差し、その後は大阪天満宮駅まで地下鉄谷町線と並行するなど重要構造物が近接しており、変状防止のためシールドマシンには安定性に優れた泥水加圧式シールドを採用した。
なお、北新地駅側140mの区間については桜橋シールドの掘進後すぐに、シールドトンネル上部でJR東西線と同時並行で行われていた地下道の建設事業(曽根崎ジオ・フロント計画、以下曽根崎G・F)が行われることになっていた。特に上り線側では地下道の下に共同溝が一体施工されるためシールドと地下道底面の最小離隔が2mとなり地下水による浮力の影響が懸念されたほか、土留め壁とも極めて接近するためシールドに変状をきたす恐れがあった。このため、対策として桜橋シールド側ではセグメントの一部をダクタイル鋳鉄製に変更し強度アップを図ったほか、上部の荷重が消失することによるシールドトンネルの浮き上がりを考慮して予め設計上の深度よりも25mm程度深く掘削しておくという微調整が行われた。一方、曽根崎G・F側ではシールドへの上載荷重を可能な限り増加させるため、捨てコンクリートの打設や鋼材の積載などの対策を行った。また、一部の土留め壁については桜橋シールドの掘進に先行して施工することとなったが、地上の曽根崎通の交通量が極めて多いことから深夜の交通規制すらままならず、この工事に関しては並々ならぬ苦労があったようである。
これらの工夫により桜橋シールドの浮き上がり量は最大でも10mmにとどまり、また交差する地下鉄御堂筋線や梅田新道地下道の沈下量も2~3mmにとどまるなど大きな影響も無く掘削は完了した。
なお、JR東西線桜橋シールドと同時並行で工事が行われた共同溝のシールドトンネルは曽根崎G・Fの一番端に設けられた立坑(梅田新道交差点付近)から発進し、桜橋シールドの上下線間を大阪天満宮駅へ向けて掘進した。こちらは桜橋シールドと異なり作業スペースが小さいため、処理設備が必要な泥水加圧式シールドではなく、掘削土を直搬出できる泥土圧式シールドが採用されている。
●現地写真
→西天満換気所と合わせて次の記事で解説予定。
■西天満換気所 2km645m
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 断面図
大阪曽根崎地下の三事業の同時施工 曽根崎G・F、梅田共同溝、JR東西線 - トンネルと地下1997年4月号31~40ページ
●概説
より大きな地図で JR東西線(片福連絡線)詳細版 を表示
西天満換気所は桜橋シールドで最低地点となる南森町5丁目付近(堀川橋西詰交差点と西天満東交差点のほぼ中央)に設けられている。換気所本体は曽根崎通の地下に埋設されており、参考文献に使用した「トンネルと地下」の記事に掲載されている図によれば地下5層構造となっている模様である。換気塔は地下鉄谷町線のトンネルとの干渉を避けて曽根崎通の南側に設置されている。
この西天満換気所については文献の情報がかなり少なく、これ以上の詳細は不明である。また、次回解説する現地調査においても大した収穫を得ることはできなかったのが残念なところだ。
●現地写真
→次の記事で解説予定。
(つづく)
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