阪神電鉄 - 関西旅行2010(9)

阪神梅田駅

昨年8月の関西旅行、ようやく2日目(8月24日)の内容となります。2・3日目はJR東西線の調査が中心だったため、さほど多くの場所は周れておりませんが、それでも2日目は阪神電鉄・阪急電鉄(今津線・神戸線・甲陽線)、3日目はJR阪和線・和歌山電鉄貴志川線・南海電鉄の乗車・撮影をすることができました。今回は2日目の最初に周りました阪神電鉄(阪神本線・なんば線)についてレポートいたします。

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神戸市のマンホール - 関西旅行2010(8)(2010年12月13日作成)

■阪神電鉄の概要

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阪神電鉄は大阪府大阪市の阪神梅田駅から兵庫県神戸市の元町駅へ至る阪神本線、大阪難波駅から西へ向かい尼崎駅で阪神本線に合流する阪神なんば線(旧称:西大阪線)、兵庫県西宮市の武庫川駅から分岐する支線の武庫川線の3路線を運行する私鉄です。
大阪~神戸間にはこの阪神本線に加えてJR神戸線(東海道・山陽本線)と阪急神戸線の計3路線が並行しており、古くからこの3社間で激しい競争が繰り広げられてきたことで有名です。阪神本線は元々軌道(路面電車)に近い形で誕生したという歴史から、阪神間の鉄道路線では最も駅の間隔が短く、曲線も多いという設備上の欠点を持っていますが、列車種別を細分化することにより近距離と遠距離の利用者の分離を図ることで全体的な所要時間の伸びを可能な限り抑制しているといえます。
近年は山陽電鉄の記事でも触れた阪神梅田~山陽姫路間の直通特急新設などJR神戸線の新快速スピードアップに対抗する施策が行われています。さらに、去る2009(平成21)年3月には阪神なんば線(大阪難波~西九条)の開業と近鉄奈良線との直通運転開始により、奈良方面から大阪市中心部を貫通して神戸方面を直結する新しい役割を担うようになりました。将来的にはこの区間に有料の特急列車を運行するという構想も考えられており、今後の発展が期待できる路線といえるでしょう。

■阪神電鉄の車両(自社のみ)

阪神電鉄は優等列車と普通列車で車両を完全に分けて使用しており、車体の色は前者がオレンジ色、後者が青色というように区別されています。また、後者は日本国内の電車では最高レベルの加速性能を持っており、「ジェットカー」という別名を持つことで有名です。これれは複線という限られた線路容量の中で普通列車が優等列車に追いつかれるのを防止し、優等列車の速度低下を可能な限り防ぐためです。
以下、今回見ることができた各形式について概観したいと思います。

1、優等列車用車両

●2000系
尼崎駅に停車中の2000系
尼崎駅に停車中の2000系

2000系は1970年代に製造された7000系列(7001・7101・7801・7901の各形式)の車体を改造・流用する形で1990年代前半に造られた車両です。この車両では7000系列の欠点であった回生ブレーキが使用できない電機子チョッパ制御や抵抗制御を改造当時の主流だった界磁添加励磁制御に更新することで従来と同じ直流直巻モーターを使用しつつ回生ブレーキの使用を可能としています。
その後は阪神・淡路大震災による一部車両の被災、そして車体は製造から40年近くが経過しており老朽化が進んでいることから廃車が進行し、現在は自社線内のみの運行が大部分となっています。阪神電鉄のホームページの車両紹介の欄にはこの2000系の記述は一切無く、残る車両も数年以内に全車両が廃車、形式消滅する可能性が高いものと思われます。

●8000系
尼崎駅に停車中の8000系(オリジナル車) 阪神梅田駅に停車中の8000系(更新車)
左:尼崎駅に停車中の8000系(オリジナル車)
右:阪神梅田駅に停車中の8000系(更新車)

※クリックで拡大

8000系は高度成長期に導入され老朽化が進んでいた初期の優等列車用車両の置き換え用として1985(昭和60)年から導入された車両です。この8000系では先頭車前面の大型窓(いわゆる「額縁スタイル」)、側面の1段下降窓の採用(一番最初に製造された1編成を除く)など従来の阪神電鉄の車両と比較して車体のデザインの大幅な変更が行われています。また、メカニズム面においても電気指令式ブレーキ、補助電源のインバータ化など当時の最新技術をふんだんに取り入れた車両となっています。
2000系と同様、阪神・淡路大震災により若干の廃車が発生しましたが、その後も100両以上の車両が在籍しており、直通特急などを中心に阪神本線の主力車両として活躍しています。2002(平成14)年からは内装を中心に新車と同レベルへリニューアルされた車両も登場し、今後も長きに渡り活躍が期待できる車両といえます。

●9000系
近鉄奈良線布施駅に停車中の9000系
近鉄奈良線布施駅に停車中の9000系

9000系阪神・淡路大震災で被災し廃車された車両の補充用として1996(平成8)年に導入された車両です。被災車両の補充が目的ということから製造にかかる工期の短縮が求められたため、阪神電鉄では約30年ぶりとなるステンレス車体(川崎重工兵庫工場の製造ラインを使用)を採用しました。また、台車はボルスタレス台車、制御方式はVVVFインバータとなり、優等列車用車両ながら従来よりも加速性能が向上しています。
2007(平成19)年には阪神なんば線・近鉄奈良線の走行に対応させるため近鉄ATSの設置といった改造が行われ、車体のラインも従来の赤色から1000系(後述)にあわせたオレンジ色に変更されました。2009(平成21)年の阪神なんば線開業後は同線に直通する列車に重点的に運用されており、奈良から神戸までの長い区間で見ることができるようになっています。

●1000系
近鉄奈良線布施駅を通過する1000系
近鉄奈良線布施駅を通過する1000系

1000系阪神なんば線開業用として2007(平成19)年から製造された車両です。車体は9000系と同じ軽量ステンレス車体となっており、組み立てにレーザー溶接を用いることでゆがみの少ない滑らかな表面と強度向上を実現しています。また、情報化とバリアフリーに対応させるため運転席へのモニター搭載、行先表示のフルカラーLED化、ドアの開閉予告灯の採用、各車両への車椅子スペースの設置などが行われています。編成は6両と2両の2種類があり、これらの編成を必要に応じて連結・切り離しを行い需要に見合った運行ができるようになっています。この連結部分に入る運転台は締め切りが可能な構造となっており、連結状態では貫通幌をつないで乗客の通り抜けができるようになっています。
2009(平成21)年の阪神なんば線開業後は同線の直通運用に重点的に使用されています。

2、普通列車用車両

●5000系列
尼崎駅に停車中の5001形 三宮駅に停車中の5131形
左:尼崎駅に停車中の5001形
右:三宮駅に停車中の5131形

※クリックで拡大

5000系列(5001・5131・5331の各形式)は1970年代後半~1980年代前半にかけて製造された普通列車用の車両です。いずれの形式も車体は当時の阪神電鉄の標準的なものを採用しており、5001形は抵抗制御、5131・5331形は電機子チョッパ制御を採用し、回生ブレーキの使用が可能となっています。加速性能は4.5km/h/s(=1.25m/s2)、減速性能は5.0km/h/s(=1.39m/s2となっており、これは2011年現在日本国内で最高の加減速性能を誇っています。
阪神・淡路大震災ではやはり数両の車両が被災し廃車となっていますが、現在に至るまで老朽化に伴う廃車は発生していません。

●5500系
尼崎駅に停車中の5500系
尼崎駅に停車中の5500系

5500系は阪神大震災で被災し、廃車となった普通列車用の車両を補充するため1995(平成7)年から製造が開始された車両です。制御方式は9000系と同じVVVFインバータ(ただし高加速に対応するため若干変更されている)、車内にはマップ式のLED表示機やドアの開閉予告ブザーが設置されるなどバリアフリー化も推進されています。加速性能は4.0km/h/s(=1.11m/s2で5000系列と比較して若干低下していますが、VVVF化により中速域以降での加速性能がアップしたため従来と同じ運転時間を維持することが可能となっています。
1998年には当時まだ深夜の放送だった日本テレビ系列のバラエティ番組「鉄腕!DASH!」(当時はまだタイトルに「ザ」が無かった)でTOKIOのメンバー5人がリレーを行い、5500系の発進・加速と競争するという企画も行われました。(1回目は深江駅、2回目は打出駅)
昨年末には11年ぶりに製造が再開され、形式が5550系に改められたほか内装、制御装置などが若干変更されています。

▼参考
日本テレビ - ザ!鉄腕!DASH 過去の放送内容 - 1998年11月1日
日本テレビ - ザ!鉄腕!DASH 過去の放送内容 - 1998年12月20日

最後に5000系列(5131形)と5500系の発車の様子を動画でご覧頂きながらこの記事を締めくることにいたします。5000系列は1日目(8月23日)に三宮駅で、5500系は同日春日野道駅で撮影したものです。

YouTube - 阪神5000・5500系発車シーン音量注意

▼参考
阪神電車(公式Web)

▼関連記事:「関西旅行2010」
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(つづく)
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