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北新地駅(概説) - JR東西線(12)
公開日:2011年01月06日10:40

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■北新地駅 3km520m~3km805m(中心3km620m)
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ
大阪曽根崎地下の三事業の同時施工 曽根崎G・F、梅田共同溝、JR東西線 - トンネルと地下1997年4月号31~40ページ
●概説
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JR東西線の北新地駅は国道2号線(曽根崎通)の曽根崎新地1丁目交差点から桜橋交差点(大阪駅前第1・2ビル前)にかけて存在する4層構造の地下駅である。施工は大部分が関西高速鉄道(株)の担当であるが、尼崎方65mの区間は地下鉄四つ橋線西梅田駅と交差するため、この部分については大阪市交通局に施工が委託された。また、地下1階に相当する部分にはJR東西線と同時並行で建設された曽根崎ジオ・フロント(大規模地下街)の駐車場が合築されており、駅施設は地下2階以深にある。このような構造であることに加え、駅周辺では着工前から地下街のネットワークが密に構築されていたことから(これに加え、北新地駅開業にあわせてディアモール大阪を新設)、北新地駅単独の地上出入口はわずか2箇所(地下1階の駐車場出入口と兼用)となり、残る地上出入口は全て既存のビルの地下階・地下鉄駅に接続することで代替するという異例の構造となった。
なお、北新地駅の建設中の仮称は「桜橋駅」であった。

北新地駅の断面図(南北方向)
前述の通り北新地駅は地下1階が駐車場となっているため、地下2階が改札口コンコース、地下3階が機械室、地下4階がJR東西線と同時平行で建設された建設省の共同溝、地下5階がホームとなっており、軌道は地上から約24mの深さにあり、尼崎方へ向かって2パーミルの上り勾配となっている。開削部分の延長は285mで、ホームは前述の2駅と同様8両編成対応の170m、ホーム幅は利用者数が多くなることを考慮して大阪天満宮駅と同じ8mとなっている。地下2階の改札口と地下5階のホームは階段2箇所、エスカレータ7基、エレベータ1機で接続しており、地上出入口にもエスカレータ・エレベータが併設されていることから(地下1階の駐車場と共用)、地上からホームまで完全なバリアフリーを実現している。換気塔は地上の曽根崎通の路外ではなく中央分離帯に設置されているが、地下1階の駐車場用のものと併設になっているため、どれが駐車場でどれが北新地駅のものかを区別することは難しい。

北新地駅の断面図(東西方向)
北新地駅の建設は一般的な開削工法で行われた。桜橋シールドの項目でも触れたが、この付近一帯はかつての淀川が形成した沖積平野で、大阪駅周辺にはかつて湿地帯が広がっていた。大阪駅周辺の地名である「梅田」はその湿地帯を指す「埋め田」が由来とされている。このため、北新地駅付近では地表面から25mの厚さで「梅田層」と呼ばれる軟弱な沖積層が堆積しており、その下には2.5kgf/cm2の圧力を持つ被圧地下水を持った天満層(Ug1)・粘性土層(Uc2)などが分布していた。しかし、闇雲に地下水を汲み上げて掘削を行うと、かつて大阪市内で深刻な問題となった地盤沈下を再発させることになりかねないため、掘削に当たっては構造物の外側に地下水を遮断する土留め壁(泥水固化壁)をつくり、22本のディープウェル(深井戸)を用いて掘削範囲のみ地下水位を下げることで掘削時の崩壊と地盤沈下の防止を両立することとした。なお、汲み上げた地下水は400m離れた堂島川へ放流した。
また、地下鉄四つ橋線西梅田駅との交差部分については、まず四つ橋線のトンネル両側から矩形シールドやメッセル工法※を用いて導坑5本を掘削し、その中からトンネルを支える杭を打ち込み、トンネル下全体を掘削するという手法がとられた。なお、この北新地駅の尼崎方の部分は後述する出入橋シールドの到達・回転立坑を兼用している。
▼脚注
※メッセル工法:シールド工法と山岳トンネル工法(矢板工法)の中間的なもの。掘削に先立ち、トンネル天井に当たる部分に油圧ジャッキなどを用いてメッセルプレートと呼ばれる板を打ち込み、上部の地盤の重量を支えながらトンネルを掘削する方法。「メッセル(MESSER)」はメス・ナイフの意味。
▼参考
SS-MESSER/SS-メッセル工法・シーテック
●現地写真
→次回解説予定。
(つづく)
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