カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > 《番外編》JR東西線
北新地駅~新福島駅 - JR東西線(14)
公開日:2011年01月20日00:09

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■出入橋シールド 3km805m~4km265m(L=460m)
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ
●概説
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JR東西線北新地~新福島間は前半(京橋方半分)が単線シールド2本、後半(尼崎方半分)が開削工法で建設されている。そのうち前半460mの区間、北新地駅から出入橋交差点までのシールドトンネルが関西高速鉄道(株)が施工を担当した「出入橋シールド」である。トンネルは全区間ともこれまでと同様曽根崎通(国道2号線)の地下を通っており、線形は地上の道路に合わせて北新地駅を出た直後に半径300mのカーブで針路を西から南西に変え、その後は半径10000m前後の非常に緩いカーブが後述する福島変電所・新福島換気所の開削部分の中まで続いている。(このカーブは前述の北新地駅直後のカーブをできるだけ緩くするため設けられたものと思われる。)勾配は阪神高速11号池田線付近までが2パーミルの上りで、その後は開削部分の途中まで25.7パーミルの上りとなっている。
シールドの掘進は福島変電所・新福島換気所の開削部分から開始された。発進立坑となる開削部分は駅ではないため作業スペースが限定されており、泥水加圧式シールドで必要とされる大規模な坑外設備(泥水の処理プラントなど)を設けることは難しかった。そのため、土圧式シールドを採用することに加え、関西では初となるシールドマシンのUターン施工を行うことで上下線のトンネルを1機のシールドマシンで施工することとした。
●現地写真

桜橋交差点から新福島駅方向を見る。
JR東西線が地下を通る曽根崎通は桜橋交差点を過ぎるとすぐに急カーブで西から南西に進路を変えており、地下のトンネルも同様に半径300mのカーブで進行方向を変えている。地上は古いオフィスビルや商業ビルが建ち並んでおり、大阪の中でも比較的昔から商業の中心地となっていたことをうかがわせている。

桜橋西交差点から新福島駅方向を見る。奥に見える二重の高架は阪神高速11号池田線。
桜橋交差点直後の急カーブを抜けると曽根崎通は直線に戻るが、地下のトンネルは急カーブのため北にずれてしまった位置を元に戻すため半径10000mのカーブとなっているはずである。途中、二重高架の阪神高速11号池田線と交差しており、曽根崎通北側の高架下は公園となっている。かつて、この阪神高速の通っている場所には大阪駅前まで続く運河があり、鉄道での貨物輸送と船運を接続する重要なルートとなっていた。「出入橋」の交差点名はこの運河に掛かっていた橋の名称に由来するもので、運河が埋め立てられた現在も曽根崎通から1本南側に行った道路に欄干が残っている。
■福島換気口 4km315m・新福島変電所 4km380m
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 395ページ・断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ
●概説
より大きな地図で JR東西線(片福連絡線)詳細版 を表示
出入橋交差点を過ぎると、その先は新福島駅まで開削トンネルとなる。この開削区間はほとんどが2層構造のトンネルとなっており、軌道階の上部には出入橋シールドの換気設備である福島換気口(京橋起点4km315m)と新福島変電所(京橋起点4km380m)の設備を設置している。この区間は他の工区とは異なり土木構造物を関西高速鉄道(株)、機械設備を鉄建公団がそれぞれ担当するという特殊な施工区分となっている。これはバブル崩壊の不景気により銀行の融資が滞りがちになり(いわゆる貸し渋り)、関西高速鉄道(株)が資金難に陥って工事の継続が難しくなったため、やむを得ず国の特殊法人だった鉄建公団がその一部を肩代わりするという苦肉の策をとった結果※である。
なお、この開削区間の北側には1993(平成5)年に地下化された阪神本線が並行しており、途中には福島駅(片面ホーム2面2線)も設けられている。完成時期から考えると阪神本線の地下化工事はJR東西線の建設工事と完全に競合していたものと思われるが、JR東西線の建設誌や各種文献には詳しい記述は見られない。しかし、他の駅間トンネルが全てシールド工法で建設されている中で当区間のみが開削工法で建設されたという事情を考慮すると、両者のトンネルの間には何らかの関連性(場合によっては構造物の一部を共有している、など)があるようにも感じられる。
▼脚注
※ただし、当区間は駅間であることから建設資金は鉄建公団P線資金で調達されており、施工の分割は会社調達資金が不足した他の工区に優先して費用を振り分けたためであると考えられる。
●現地写真

出入橋交差点の角に建つ福島換気口の換気塔
出入橋交差点を過ぎるとトンネルはシールドから開削へ変化する。福島換気口の換気塔は出入橋交差点南西の角にあり、網目の付いた排気口が交差点側へ向かって開いている。排気口の下には照明付きの広告スペースと思しき板があるが、不況のためかしばらく出稿している企業は無いようで薄汚れた表面を交差点に向かって晒していた。変電所が地下にあるため五角形状の換気塔の裏には地下へ出入りするための階段も設置されている。


左:なにわ筋と交差する浄正橋交差点にある阪神福島駅の出入口。交差点の反対側には新福島駅の1号出入口がある。
右:阪神福島駅ホーム。手前は阪神梅田方面行きホームで、JR東西線は奥の尼崎方面行きホームの壁の裏を通っている。
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出入橋交差点を過ぎると曽根崎通の北側の地下に阪神本線の福島駅がJR東西線に並行する形で設置されている。阪神本線の福島駅は片面ホーム2面2線の構造で、ターミナル駅である阪神梅田駅から近いこともあり利用者数が少ないため区間急行・普通のみが停車している。(かつては急行も停車していた。)JR東西線のトンネルと尼崎方面行きのホームは極めて接近しているため、JR東西線の列車が付近を通過している際はその音・振動がホーム上でも僅かながら感じられた。なお、阪神本線福島駅の改札口は駅の両端にあるが、改札階の構築幅は1フロア下の線路+ホームと同一で、JR東西線のトンネルとの接続をうかがわせるような構造物は特に発見できなかった。
出入橋シールドとこの開削区間は文献での言及数が極端に少なく、あまり詳しいことが判明しなかったことは少々残念である。
(つづく)
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